2019
03.19

海外共同研究を終えて
第1期生 半田 悟さん

海外共同研究

海外共同研究を終えて<br />第1期生 半田 悟さん

報告:リーディングプログラム第1期生 半田 悟さん

1.海外共同研究を始めるきっかけ
私はこれまでに海外サマーキャンプや海外インターンシップなど、海外に出て多くを学ぶ機会に恵まれました。それらを通じて培ってきた国際力や海外ネットワークを活かし、集大成としての研究を行いたいと思い、QE2として海外共同研究を選択しました。特に海外インターンシップで、バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学で行われた2017 PIMS-CRM Summer School in Probabilityに参加した際に、サンパウロ大学の博士学生のEric Ossami Endo氏(現在ニューヨーク大学上海校の研究員)とその指導教官のRordrigo Bissacot教授に出会ったことをきっかけとし、今回の共同研究に至りました。共通してイジング模型(強磁性体の統計力学模型)を研究対象としていましたが、彼らの場合は相転移現象の有無について解析しており、1次元長距離相関型、不均一磁場型、ツリー上のイジング模型などの自分が扱ったことの無い系を研究していました。それらの系に対する未解決問題を互いの知識を活かして解決したいと意気投合し、研究提案を行いました。

2一年間の共同研究(北海道大学 ⇆ サンパウロ大学の相互訪問)
この一年間で三度、直接会うことができました。まず3月中旬から4月中旬までの約一ヶ月、サンパウロ大学からEndo氏を招聘しました。平日は一緒に昼食をとり、午後から議論を行いました。関連する論文を紹介し合い、課題解決に向けた応用可能性を深く検討しました。養ってきた英語力と数式の力で、しっかりと意思疎通ができました。週末は、研究室の学生らと共に札幌市内や小樽を案内して交流しました。7月中旬になり、今度は私がEndo氏、Bissacot教授を訪ね、サンパウロ大学に一ヶ月間滞在しました。ブラジルまでは30時間を超える長旅となりました。このとき、Bissacot教授の博士学生であるLucas Affonso氏も新たに共同研究に加わりました。平日は昼に集まり、昼食、コーヒーブレイク、そして夕食を挟みながら、夜遅くまで活発に議論を重ねました。また、Bissacot研究室の学生たちのセミナーに参加して交流したり、ICM 2018 Satellite Conferenceで「The lace expansion for the nearest-neighbor models on the body-centered cubic lattice」という別の内容の口頭発表もさせて頂きました。さらに、Endo氏の博士論文公聴会にも参加し、一緒に博士号取得をお祝いできました。一ヶ月の滞在で、課題解決に対する具体的な戦略が決まり、予測される必要十分条件を発見することができました。年が明け、2月中旬に1週間ほど、再びEric氏を招聘することができました。今度はSkypeを使ってサンパウロ大学にいるAffonso氏も含めて3人で議論を行いました。残りの解析が上手くいかない原因を究明し、それに対する代替案を見つけることができました。まだ完全解決には至っていませんが、残りの部分を解決した際には論文にまとめ、投稿する予定です。

3おわりに
海外インターンシップでの出会いを含めると、1年以上に渡って議論を重ねてきました。直接会えない期間はメールやSkypeでやりとりを行い、計算結果や証明をTexデータに起こし、論文にできるようにPDFノートとして共有しました。一方で、間接的なやりとりでは大きな進捗を出すことは難しいことを痛感し、実際にface-to-faceで議論を重ねることの重要性を感じました。日系ブラジル人であるEndo氏を日本に招聘できたことや、同年代の研究者たちとの交流を持てたこと、自身の関連分野の動向や知見、多くの未解決問題を知ることができたことは、とても意義のあることでした。これから研究者として社会に出ていく中で、これらの経験は貴重な財産となっただけでなく、国際的に研究を行っていく大きな自信となりました。今後もこの共同研究を継続し、更に新しい問題にも一緒に取り組みたいと強く思っています。共同研究を行なってくださったEndo氏、Affonso氏、Bissacot教授にはとても感謝しています。

 

写真1  Endo氏の北海道来訪の送別会(一番右が坂井哲准教授,右から二番目かつ前から二番目がEndo氏,右手前が半田,坂井研究室のメンバー)

 

写真2  北海道大学でのEndo氏とのディスカッション

 

写真3 サンパウロのカフェでの議論(左上がAffonso氏,右上がEndo氏,左下が半田)

 

写真4 サンパウロ大学で開かれたICM 2018 Satellite Conferenceでの口頭発表の様子

 

写真5 Bissacot教授の学生たちとのサンパウロ市内の見学

 

写真6 議論の後の夕食の様子(左手前から順にAffanso氏,Endo氏,半田,Bissacot教授)

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