2014
05.01

企業でのシミュレーション(数学)の役割
〜旭化成ケミカルズ企業セミナー〜

企業交流

企業でのシミュレーション(数学)の役割<br>〜旭化成ケミカルズ企業セミナー〜

平成26年3月4日、千葉県木更津市にて旭化成ケミカルズ株式会社の方にお話をうかがう企業セミナーが開催されました。リーディングプログラムとして初めての企業セミナーということもあり少し張りつめた雰囲気もありましたが、企業の研究職について興味がある私にとっては楽しさのほうが勝っていたように思います。今回のセミナーはパイロット生全員が参加する初の機会ということもあり、他の方々の研究に対する熱い思いや、いろいろな意見交換もできた場でありました。

はじめに所長の七澤さんから、旭化成で行われている様々な仕事や技術などの説明をいただきました。たとえば、車のパーツや緩衝材の構造などは、シミュレーションでその強度や耐熱性、衝撃吸収度などを測定し、効率の良い形を考えてから実際に形成するそうです。シミュレーションによりしっかり安全な製品化になる理由の一つに、「過去の研究による膨大なデータの蓄積」があるそうです。製品化するために必要な様々なパラメータを決定するには、シミュレーション技術だけではなくそれらの信頼できるデータが大いに役に立つとのこと。また、旭化成は車のパーツや緩衝材だけではなく、塗装にかかる費用を軽減するために塗装の必要ないパーツを作ったり(車のバンパーやWiiのケースなど)、海に流れ出たリンを回収するための装置を開発したりなど、多岐にわたって活躍している会社だということもお聞きしました。はじめはアンモニアの開発から始まった旭化成がいろいろな分野に挑戦し続けられる理由は、技術を継承していけるように事業展開をおこなっているからだそうです。たとえば海をきれいにするフィルターを作る研究は、人間の血液をきれいにするのも使えると考えて人工透析の技術に発展させるなど、技術を他分野に応用することで環境問題から医療の現場にまで研究を広げることができたそうです。

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七澤さんのご講演のあとには、社員の方数名にもご参加いただき座談会が開催されました。机を円形に並べ、プログラム生と旭化成ケミカルズの方々が向かい合い、いろいろな意見を交換しました。その中でも、本セミナーのメインテーマでもあった企業が求めるドクター像に関して、大きく時間をさいて議論しました。様々なことに挑戦している旭化成ですが、新たな挑戦では対象について勉強しなければなりません。学位をとった人にはそれを勉強する能力があるのはもちろん、自分の学んできたことが新たな研究においても役に立つことがあり、勉強してきたものが違うからこそ新しいアイディアが生まれたりするそうです。企業での研究においては、一つのことでもよいので突き詰めて専門性を養うことが重要だと教えられました。また、修士卒と博士卒の決定的な違いは、対外関係の事業時での絶対的な信頼感だとうかがいました。外国の研究員は博士課程を終えることがほとんど当り前のようです。最後に、研究で大切なことは、①よいテーマを設定する、②研究プランをしっかり立てる、とのお話がありました。大学でも同じかもしれませんが、特に利益を出さなければならない企業にとっては、しっかりと利益を見込めるテーマで研究を進めることと、いつまでにどこまで研究を進めるかのビジョンを最初から考えてことが大変重要であるということでした。

今回の企業セミナーは、一般的な企業説明会という感じで始まりましたが、研究についての具体的で深いお話が聞け、さらに座談会でざっくばらんにいろいろな質問ができました。数学専攻の私にはやや難しいところもありましたが、なにが問題で、どんな対策をして、どう解決していくかというプロセスは数学的な思考が必要なこと、また、あらかじめシミュレーションをするうえでパラメータ幅を制限し、シミュレーション回数を減少するなどに数学が使われていると知りました。この企業セミナーで、企業間の差や共通点をを知れば、企業が求めるドクター像がより見えてくると思います。もっといろいろな企業を見たい気持ちが強くなる有意義なセミナーとなりました。

報告: N.F.(リーディングプログラムパイロット生)
編集:リーディングプログラム事務局

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