2018
02.27

研究者とメディアのほどよい距離感をつかむために
~アウトリーチ演習II~

研究者とメディアのほどよい距離感をつかむために <BR>~アウトリーチ演習II~

昨今、第一線の研究者は、積極的に研究広報をすることが求められています。しかし、情報の取り扱い方や組織の理念は、メディアとアカデミアでは大きく異なります。そのため、必ずしも従来の大学院教育だけでは、メディアを介したアウトリーチに関する知識と態度、スキルを身につけることはできません。

そこで、北海道大学物質科学リーディングプログラム(以下ALP)と科学技術コミュニケーション教育研究部門(以下CoSTEP)は、プレスリリースの作成と模擬記者会見を行うアウトリーチ演習IIを、平成28年度から協働で実施しています。講師は元新聞記者でフリー科学ジャーナリスト・CoSTEP客員教授の内村直之先生、研究広報の第一人者である本学国際連携機構の南波直樹先生、そして元カメラマンでALP教員の藤吉隆雄先生、CoSTEPの西尾直樹先生と私です。研究広報をとりまく異なる立場の講師陣を配しているのがこの演習のポイントです。

前半のプレスリリース作成は、20171111日(土)と12日(日)に実施しました。ALP2名とCoSTEP9名が、自分の研究に関するプレスリリースをそれぞれ持ち寄りました。初稿はかなり情報過多で難解な文章でしたが、講師からの指摘や受講生同士のピアレビューで改稿を繰り返すうちに、見違えるように分かりやすくなりました。とはいえ、そのまま記事になるような「分かりやすい」プレスリリースが本当にメディアと研究者双方にとって良いものなのか?という問いが内村先生から提示されました。

後半の記者会見は20171216日(土)・17日(日)に実施しました。ALP1名とCoSTEP6名が2チームに分かれて模擬記者会見(正確には記者レク)に挑みます。発表のためには、役割分担(研究担当、研究責任者、組織の長、広報担当者)の決定、レク用資料や想定質問集の作成などを行わなければなりません。準備の合間にはメディアにおける写真の役割と、写真撮影の基礎を学ぶためのミニレクチャーも、藤吉先生によって実施されました。南波先生からは、言ってかまわないことと、言ってはいけないことを事前に明確に整理すること、プレスリリース資料に基づくこと、メディアの観点を理解することなどの指摘がありました。メディアと研究者の間に一種の緊張関係があることが、受講生にも理解できたようです。

そして17日の午後に模擬記者会見が開かれました。バックボードやモニター、マイク、複数のカメラやビデオが並ぶ中、講師や受講生がメディア役として発表側の発表を注意深く聞きます。Aチームのリーダー、キムヨンジュンさん(ALP3期生)は、記者達からの詳細を確認する質問や、変化球の質問にも、必要十分なことのみを答え、適切に対応していました。一般的な記者レクにおいては研究以外の質問が飛び交うことはまずありませんが、場合によっては研究者はそのような事態にも相対しなければなりません。研究だけではなく、組織全体の広報を関係者と共に担う可能性もあるのです。

今回の演習では、プレスリリースを書く側と読む側、記者会見をする側と聞く側、と二つの異なる立場を両方経験することができました。研究広報の問題においては、ともすると素朴なメディア批判に陥りがちです。しかし、双方を模擬的に経験することで、そのような批判を超え、研究者とメディアのほどよい距離感を実感を持って考える、よい契機になったのではないかと思います。


写真:研究広報の基本的流れと注意点について講義する南波先生(右)


写真:お互いのプレスリリースをピアレビューする。右は藤森俊和さん


写真:模擬記者会見で不明瞭な点を質問する内村先生


写真:質問に答えるキムさん

報告:川本 思心(理学研究院/CoSTEP 准教授)

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