平成29年2月20日から25日にかけて、オーストリアのヨハネス・ケプラー大学(注)で海外サマーキャンプを開催しました。海外サマーキャンプとは、本プログラムの必修イベントの一つで、学生が海外の大学や研究機関と共同でシンポジウム等の学術集会や交流イベントを企画・運営するものです。今回で5回目の海外サマーキャンプ開催となりました。北大からの参加者は、学生13名(1期生 10名、2期生 1名、3期生 2名)、教員4名でした。
写真上:シンポジウムの冒頭でプログラムの紹介を行う幅﨑浩樹教授。
20日の夜、ドイツのフランクフルト経由でリンツに到着し、21日の朝からメインイベントであるHU-JKU Joint Symposium on Chemical Sciences and Engineeringと名付けられたシンポジウムが始まりました。シンポジウム1日目は、北大とヨハネス・ケプラー大学双方の教員4名ずつによる講演に加え、夕方からは、今回ヨハネス・ケプラー大学側でホストを務めていただいたHassel教授の研究室の見学を行いました。Hassel教授は電気化学が専門であり、北大でポスドクをした経験をお持ちです。Hassel教授のラボには、最先端の実験装置が所狭しと並べられており、2時間以上かけてすべての設備を案内していただきました。
写真上:講演を行うMardare教授(ヨハネス・ケプラー大学)。
写真下:1日目夕方のラボ見学の様子。左がHassel教授(ヨハネス・ケプラー大学)。
シンポジウム2日目は、北大とヨハネス・ケプラー大学の学生参加者全員によるショートプレゼンテーションとポスター発表を行いました。ポスター会場では、両大学の学生と教員による熱のこもった討論が行われました。今回の参加者は博士課程の学生が主体であったこともあり、今すぐにでも論文になりそうな発表が続出し、研究集会として非常にハイレベルなものとなりました。ヨハネス・ケプラー大学のある学生は、「このシンポジウムが対象とする研究分野の幅広さとレベルの高さが両方とも印象的だった」と話していました。ポスター発表終了後は、隣町まで足を延ばしオーストリアで有名な大手食品会社の工場などを見学しました。
写真上:口頭発表を行う1期生のファティマさん。
写真下:口頭発表を行う1期生の今野さん。
3日目は、ヨハネス・ケプラー大学の化学系の様々なラボの見学ツアーが行われました。ヨハネス・ケプラー大学は、オーストリアでも屈指の設備を誇るということで、さまざまな測定装置や加工装置を見せてもらうことができました。印象に残ったのは、実験装置や部品を受託制作してくれる技術室があったところです。モーターや電子部品を組み立て、実験に合わせた装置を作成してもらうことができるそうです。そこには各種3Dプリンタも完備していました。
今回は、サマーキャンプと名乗りながらも冬季の開催となりましたが、意外にもリンツでは雪は全く積もっておらず、気温も昼には15℃以上にまで上昇しました。最終日は、行きと逆の経路でリンツの空港から吹雪の札幌へと向かい無事到着しました。
写真:リンツのダウンタウン。Hassel教授が案内してくれました。
参加したプログラム生の多くは語学研修や海外渡航支援制度などを利用して、海外での経験をすでに積んでいたため、コミュニケーションの問題はほとんどありませんでした。シンポジウムでのプレゼンテーション(口頭+ポスター)も事前に入念に準備をしたため、非常にスムーズに進行されていました。その意味では、今回の海外サマーキャンプは、これまでに培った力がフルに発揮されたイベントであったといえるでしょう。海外サマーキャンプの大きな目的である、異なる国で、多様な分野の学生同士が密に交流するという点も完璧に達成されました。過密なスケジュールで体力的には大変でしたが、本プログラムの存在感を国際的に示すことができたよいイベントになりました。最後に、今回のサマーキャンプはプログラム生が企画立案を行ったものではありますが、ヨハネス・ケプラー大学のHassel教授をはじめ、多くの協力者から多大なご支援とご協力をいただきましたことに感謝します。
(注)サマーキャンプ開催地となったヨハネス・ケプラー大学は、オーストリア第三の都市であるリンツ郊外に位置する公立大学であり、大学名は当地で教鞭をとっていた天文学者、ヨハネス・ケプラーにちなんで名づけられたものです。
報告:北原圭(リーディングプログラム特任助教)