2017
09.11

和田 智志さん プログラム生紹介 #003 
北海道大学大学院総合化学院 先端材料化学研究室

和田 智志さん プログラム生紹介 #003 <br />北海道大学大学院総合化学院 先端材料化学研究室

北海道大学 物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラムに平成26年度に採用され、同時に日本学術振興会・特別研究員(DC1)にも採用されている和田智志さん。現在博士後期課程2年に在籍し就職活動を行っている和田智志さんの4つのアピールポイントを紹介します。

1. 新分野開拓に日々チャレンジ!理論的かつ実験的に検討を重ね、Nature姉妹紙に論文掲載。

私は希土類錯体と呼ばれる希土類金属イオンと有機分子が相互に結合した無機―有機ハイブリッド材料の研究をしています。この希土類という元素は光や磁場に対する応答性が非常に高く、様々な色の発光材料や、磁場と光が相互作用した磁気光学特性を利用した光情報通信材料として広く普及しています。希土類錯体における光・磁気光学機能は、用いる有機分子によって大きく変化しますが、私は特に、実像と鏡像が重ね合わない有機分子(キラル分子)を結合させたキラル希土類錯体が示す光応答性に関して研究を行っています。
これまでに、有機分子のキラリティーに依存してキラル希土類錯体の磁場中の光応答性が変化する現象を初めて見出し、その研究成果がNature姉妹紙である ”NPG Asia Materials” 誌に掲載されました。この現象は希土類錯体のキラリティーが磁場によって制御可能であることを示唆しており、磁気とキラリティーが融合した新分野を切り拓く可能性を秘めています。現在は、この現象の要因であるキラルと光の関係性、磁気と光の関係性を理論的・実験的に検討し、磁気とキラリティーが相互作用する最適な設計指針を確立するために研究を進めています。

2. オーストラリア3か月インターンシップ! 文化の違いを感じながら、研究・生活面など自分にはなかった考え方をたくさん学ぶことができました。

2016年9月から3か月間、西オーストラリア・パースにある Curtin University に短期留学を行いました。博士研究と直接関係するテーマではありませんでしたが、研究分野は近いもので有機合成のノウハウやデータ解釈の仕方など、研究面で多くの技術・知識を習得することができました。また、研究とプライベートの区別がはっきりしており、決められた時間内に集中して行い、休むときは休む、というメリハリを意識できるようになりました。英語によるコミュニケーションはあまり自信がなかったので、留学期間中は頭の中で考えるときもできるだけ英語を使うことを意識していました。語学研修としてニュージーランドやカナダへ2週間の短期留学を経験していたこともあり、言語の壁も徐々に克服していると実感できました。初めて経験することばかりでしたが、たくさんの刺激を受け、それらを1つ1つ感じることで大きく成長できた良い機会となりました。

写真:(左) Curtin University、(右) 研究室の同僚と私

3. 身近にある科学現象や最先端研究を世の中に発信!子どもたちや一般の方々に科学の面白さをわかりやすく伝えました。

2016年8月に静岡科学館る・く・るにおいて開催された「夏のサイエンス屋台村」にて、光をテーマにした企画を一般市民向けに出展しました。子ども連れの家族での参加が多かったため、体験型のブースを用意して一緒に創作活動をすることで、身近にある科学現象から最先端の研究まで科学の面白さを直接感じてもらうことができました。専門的な言葉を使わずに科学現象をどれだけわかりやすく説明できるかという点に注意しなければならず、伝えるということの難しさを実感しました。この経験を生かして、普段の学会でも相手の立場に合わせた説明をすることを心がけています。


写真:(左) 企画グループ集合写真、(右) 創作体験の様子

4. 小学生から続けてきたバドミントン。何事も最後までやり抜く力を身に付け、全国大会にも出場しました!

私は小学4年生から大学学部時代までバドミントン部に所属し、日々練習してきました。バドミントンは体力的にハードでありながら、非常に繊細で頭を使うスポーツです。負けず嫌いな性格もあり、ほぼ毎日練習に励むことで、妥協しない強い意志と、最後までやり抜く力をつけることができました。中学では個人戦で全国大会にも出場することができ、努力した分だけ結果が得られるという自分の自信にもなりました。高校・大学では主将として教える立場となり、部全体を俯瞰してまとめることや、自分の意志や要点を簡潔に伝えることの大切さと難しさを学ぶことができました。大学院生になってからも定期的に練習を行い、2016年には全国院生大会において3位となることができました。これらの経験を通して、肉体的・精神的にも強くなり、また、たくさんの人との繋がりができたことで色々な考え方を学び、自分も成長することができました。


写真:大学時代の試合の様子

■論文
Chiroptical Properties of Nonanuclear Tb(III) Clusters with Chiral Champhor Derivative Ligands
S. Wada, Y. Kitagawa, T. Nakanishi, K. Fushimi, Y. Hasegawa
e-J. Surf. Sci. Nanotech., 2015, 13, 31-34.
DOI: 10.1380/ejssnt.2015.31

Luminescent silicon nanoparticles covered with ionic liquid
M. Miyano, S. Wada, T. Nakanishi, Y. Hasegawa
Mater. Lett., 2015, 141, 359-361.
DOI: 10.1016/j.matlet.2014.11.131

Luminescent Silicon Nanoparticles Surface-Modified with Chiral Molecules
M. Miyano, T. Nakanishi, S. Wada, Y. Kitagawa, K. Fushimi, Y. Morisaki, Y. Chujo, Y. Hasegawa
 J. Photopolym. Sci. Technol., 2015, 28, 255-260.
DOI: 10.2494/photopolymer.28.255

Photophysical properties of luminescent silicon nanoparticles surface-modified with organic molecules via hydrosilylation
M. Miyano, Y. Kitagawa, S. Wada, A. Kawashima, A. Nakajima, T. Nakanishi, J. Ishioka, T. Shibayama, S. Watanabe, Y. Hasegawa
Photochem. Photobiol. Sci., 2016, 15, 99-104.
DOI: 10.1039/c5pp00364d

Molecular design guidelines for large magnetic circular dichroism intensities in lanthanide complexes
Y. Kitagawa, S. Wada, K. Yanigisawa, T. Nakanishi, K. Fushimi, Y. Hasegawa
ChemPhysChem, 2016, 17, 845-849.
DOI: 10.1002/cphc.201501124

The relationship between magneto-optical properties and molecular chirality
S. Wada, Y. Kitagawa, T. Nakanishi, K. Fushimi, Y. Morisaki, K. Fujita, K. Konishi, K. Tanaka, Y. Chujo, Y. Hasegawa
NPG Asia Mater., 2016, 8, e251.
DOI: 10.1038/am.2016.17

■受賞
The First International Workshop in a Hokkaido Branch of Japan Society of Coordination Chemistry, July, 2014 (Oral) Best presentation award
15th Chitose International Forum on Photonics Science & Technology, October, 2014 (Poster) Poster Award
第26回配位化合物の光化学討論会、2014年8月 (ポスター) 優秀ポスター発表賞
2014年光化学討論会、2014年10月 (ポスター) 優秀ポスター発表賞
第4回CSJ化学フェスタ2014、2014年10月 (ポスター) 優秀ポスター発表賞
日本化学会北海道支部、2015年7月 (口頭) 優秀講演賞
錯体化学会第65回討論会、2015年9月 (口頭) 学生講演賞
第5回CSJ化学フェスタ2015、2015年10月 (ポスター) 優秀ポスター発表賞

※所属・学年等は2017年9月現在のものです。

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