北海道大学 物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム1期生(平成26年度)に採用され、同時に日本学術振興会・特別研究員(DC1)にも採用されている角田圭さん。現在博士後期課程2年に在籍し就職活動を行っている角田圭さんの3つのアピールポイントを紹介します。
1. 異分野の研究室へ3ヵ月間移籍。現在も分野横断的な研究を進めています。
専門性を審査するQE(Qualifying Examination)という関門が本プログラムでは2回あり、博士前期課程2年の夏に実施されるQE1では、異分野融合的な研究提案または数理連携の研究提案が求められます。私の専門は有機金属化学で、金属触媒を使った分子変換を研究しています。有機金属化学は、有機化学・無機化学・触媒化学にまたがる分野であるため、QE1で求められる”全く異なる分野の“移籍先研究室を選ぶのに苦労しましたが、博士前期課程1年の冬、「グラフェン修飾酸化チタンの光整流特性の評価」を研究課題として理学研究院物理化学研究室に3ヶ月間移籍しました。有機化学とは全く異なる実験操作や実験装置に初めのうちは戸惑いましたが、様々な機械や複雑な装置を使って測定するのが楽しく、昼夜を問わず研究に励みました。この移籍期間の研究成果は、日本化学会第95春季年会で口頭発表させて頂きました。私の移籍を終えた後の現在も研究課題は続けられており、論文投稿へ向けて後輩たちが研究を続けているそうです。さらに、QE1で提案した研究課題は、日本学術振興会特別研究員(DC1)でも採択され、同時に博士後期課程における研究課題としても認められました。現在は物理化学系の研究室に加え、他の研究室との共同研究も行い、様々な分野の方々と協働的に研究を進めています。
写真:理学研究院物理化学研究室に移籍中の様子。左からCVDによるグラフェン合成の様子、グラフェン転写の様子、光電流測定の様子。
2. 5日間で海外3大学訪問の高密度なブートキャンプ!「国際的実践力」に磨きをかけることができました。
博士前期課程2年の冬、本プログラムの海外サマーキャンプという必修イベントに参加し、ETH Zürich・ポツダム大学・ベルリン工科大学を訪問しました。研究生活において初めての海外経験で、5日間で3つの大学を訪問し各大学において約15分間の口頭発表に加えポスターセッションを行うというタイトなスケジュールでしたが、おかげで英語という言語に対する障壁が取り払われました。ETH Zürichに到着し、初めての英語での口頭発表を行った瞬間、準備していた原稿が頭から消えて真っ白になったことも良い経験でした。英語の巧拙ではなく、伝えたいという気持ちがあれば相手は理解しようと真剣に聞いてくれるということを実感しました。さらに、ベルリン工科大の Oestreich グループとの交流の際、私の研究とは直接関係ありませんでしたが、ルテニウム触媒の触媒設計指針などが非常に参考になり、自身の有機分子触媒の研究を進める上で非常に大きな収穫となりました。
写真:(左)英語で口頭発表する角田さん、(右)ベルリン工科大学でのセミナー後の記念撮影
3. 東北大学リーディングプログラムとの交流イベントで、プログラムの垣根を越えた活動の推進役を担いました。
2015年より東北大学のマルチディメンジョン物質理工学リーダー養成プログラムと本プログラムとの合同シンポジウムを開催しています。第1回の合同シンポジウムへの参加を機に、第2回と第3回では運営側として企画提案などに携わりました。どのような企画であれば参加者に満足して貰えるか、来年度も参加したいと思ってもらえるかを考え、単なる交流会で済ませたくないという思いで取り組みました。第2回合同シンポジウムで両プログラム生混合チームによる通年の活動を行うなど積極的な活動の甲斐もあり、現在ではプログラム間の留学制度も整備されています。北大と東北大のプログラム生同士の交流の機会となるだけでなく、プログラムの垣根を越えた活動の推進役を担うことができました。
写真:第2回 北大×東北大学合同シンポジウム「物質・材料科学を拓く異分野融合」の様子
■論文
Synthesis and Structures of a Chiral Phosphine-Phosphoric Acid Ligand and Its Rhodium(I) Complexes.
Tomohiro Iwai, Yuki Akiyama, Kiyoshi Tsunoda, Masaya Sawamura
Tetrahedron: Asymmetry, 2015, 26, 1245–1250.
DOI: 10.1016/j.tetasy.2015.09.016
Stereoselective C–H Borylations of Cyclopropanes and Cyclobutanes with Silica-supported Monophosphane-Ir Catalysts.
Ryo Murakami, Kiyoshi Tsunoda, Tomohiro Iwai, Masaya Sawamura
Chem. Eur. J. 2014, 13127-13131.
DOI: 10.1002/chem.201404362
※所属・学年等は2017年9月現在のものです。