本プログラムでは、企業で活躍するリーダーへと導くことを目的に国内企業の連携のもと、初年度に「企業セミナー」を実施しています。プログラム生は、企業研究者・人事関係者との座談会、研究発表交流会、研究所・工場見学等を通じて、早い段階から企業が求める博士人材像を理解します。27年度は、短期国内研修支援を利用して業界屈指の8社にて企業セミナーを実施し、延べ30名のプログラム生が参加しました。今回の活動報告では、平成27年度企業セミナーに参加したプログラム2期生と帯同した教員のレポートを掲載します。
●住友化学株式会社 企業セミナーを終えて●
報告:リーディングプログラム2期生 K.M.
平成27年9月28日、住友化学株式会社 石油化学品研究所において開催された企業セミナーに参加しました。石油化学品研究所のある千葉工場では、エチレン・プロピレンなどをポリエチレン・ポリプロピレンなどの重合した材料へ変換し、フィルム、タイヤ、合成樹脂などの製品の原材料を生産しています。今回の企業セミナーでは、会社概要・千葉工場の概要説明や工場見学、座談会を通して、企業が必要としているリーダー像およびドクター像について理解を深めることができました。
企業セミナーは、事業内容の紹介から始まりました。住友化学株式会社は「創造的ハイブリッド・ケミストリー」を目指しており、6つのコア技術(触媒設計、精密加工、有機・高分子材料機能設計、無機材料機能設計、デバイス設計、生体メカニズム解析)の異分野融合を行い、それぞれの長所を伸ばすだけでなく新規事業の開拓にも取り組んでいます 。このような異分野連携を追求する住友化学株式会社の取組みは、本プログラムのカリキュラムの中で提言されている「異分野交流」の必要性を理解するための良い実例となりました。
写真:北山威夫氏による「化学産業の動向とイノベーション創出のための取組み」と題した講話を聴く様子
次に、リーダーになるために必要な事柄や、企業が求めるリーダー像についてディスカッションを行いました。この座談会の中で、ドクターにはもう満足だと思うまで知識を突き詰めていき、その知識を活用して国内・海外および異分野間におけるネットワークの形成、およびテーマの設定や諸問題の解明など多様な活動を行うことが大切だというお話が印象的でした。さらに、自らが有する強みについて自らが深く認識し、他にどのようなことができるかを考えながら行動すること、語学力の他にも円滑なディスカッションを進めるための会話力が重要であることも教えていただきました。また、リーダーおよびドクターに必要な資質として、自ら問題設定をして解決できる能力、対人的インパクト、専門性の高さを挙げられていました。
その後、姉崎地区、袖ケ浦第I地区、袖ケ浦第II地区の工場を見学しました。東京ドーム約47個分(ちなみに北海道大学の札幌キャンパスは約38個分)にも及ぶスケールのプラントは迫力のあるものでした。
住友化学株式会社 企業セミナーでは、企業の求めるドクター像として高い専門性を持ち、自ら考え実践する人材が必要とされていることについて学びました。また化学プラントを間近で見学することで、実際の工場の操業の様子を見ることができました。企業セミナーを通して、化学工場で働くこと、企業が必要としているドクター像およびリーダー像について見識を深めることができました。
写真:千葉県袖ヶ浦市にある住友化学株式会社 石油化学品研究所前での記念撮影
■スケジュール
13:00~13:15|挨拶、会社概要と千葉工場・千葉地区研究所紹介
13:15~16:00|相互交流
・リーディングプログラムの概要説明
・プログラム生の自己紹介・研究内容説明
・話題提供(住友化学株式会社 北山 威夫 氏)
「化学産業の動向とイノベーション創出のための取組み」
15:10~16:00|座談会
・リーダーになるために必要な事項について
・企業が求めるドクター像について
16:05~17:20|工場・研究所見学
・千葉工場見学(車窓から)
・石油化学品研究所見学(大型成形機、CAE 等)
18:00~20:15|懇親会
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●株式会社旭化成ケミカルズ 企業セミナーを終えて●
報告:リーディングプログラム助教 磯野拓也
平成27年10月13日、神奈川県川崎市の臨海石油コンビナート内にある株式会社旭化成ケミカルズ 樹脂総合研究所にて企業セミナーを開催しました。企業セミナーにはプログラム生6名と帯同教員2名の計8名が参加しました。株式会社旭化成ケミカルズからは、本プログラムの客員教授を兼任する七澤淳氏をはじめ、ベテラン社員と若手社員の方々に参加していただきました。
最初に、七澤氏より「企業の研究、大学の研究」と題した講義をしていただきました。株式会社旭化成ケミカルズで行っている事業内容をはじめ、実際に企業で研究開発を行っていく際に持ち上がってくる問題やその解決策、さらには研究開発と収益の関係などについてお話いただきました。学位取得後に企業の研究開発職として働くということはどういうことなのか、また大学で培ってきた経験をどのように活かしていけばよいのかなど、漠然と疑問に思っていたことの答えが七澤氏の講演に凝縮されていたように思います。プログラム生のみならず大学教員の私にとっても非常に示唆に富む内容でした。
企業と大学の研究の違いを実感した後、研究所内の研究設備と旭化成ケミカルズ製品の展示場を見学させていただきました。数多くの研究設備が並ぶなか、超高性能の電子顕微鏡が最も興味深く感じられました。樹脂材料のミクロな構造を詳細に調べることができ、材料特性との関係を理解するためには必須のアイテムとのことです。また、展示場には私たちが普段何気なく使っている製品が紹介されており、いかに旭化成ケミカルズの材料が身の回りに溢れているかを実感することができました。この他にも、コンビナート一体を見渡すことが出来る研究所の屋上にも案内していただきました。
写真:株式会社旭化成ケミカルズ樹脂総合研究所内にある展示場での記念撮影
展示場見学に続いて、プログラム生による自己紹介と研究概要の発表がありました。プログラム生にとっては、各々どのような研究に取り組んでいるのかを知る良い機会であったと同時に、企業の研究者に発表内容を聞いてもらえる貴重な経験となったことと思います。最後に、旭化成ケミカルズ若手研究者3名によるプレゼンテーションがあり、実際に業務として行っている内容について、バックグラウンドから研究のプロセスや成果まで丁寧に紹介していただきました。研究開発現場でのエピソードなども聞かせていただき、企業に就職した際に自分がどのような仕事をしていくのか、具体的なイメージが掴めたものと思います。
今回の企業セミナーでは、大学の研究開発とは異なる企業での研究開発の一端について知ることができ、プログラム生にとって今後のキャリアパスを考えるうえで大変有意義な機会となりました。
■スケジュール
13:00~13:15|セミナー開始 名刺交換
13:15~13:20|開講のご挨拶
13:20~14:00|講義(株式会社旭化成ケミカルズ/本プログラム客員教授 七澤淳氏)
「企業の研究、大学の研究」
14:00~14:45|展示場見学
14:45~15:45|学生からのプレゼンテーション
15:45~16:30|会社若手研究者からのプレゼンテーション
16:30~17:00|質疑応答
17:00~17:05|終了のご挨拶
川崎市内へ移動し、懇親会
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●27年度の企業セミナー実績●
DIC 株式会社 :2015年9月14日
旭硝子 株式会社 :2015年9月16日
帝人 株式会社 :2015年9月18日
株式会社 東芝 :2015年9月24日
住友化学 株式会社: 2015年9月28日
株式会社 日本触媒 :2015年10月2日
旭化成ケミカルズ 株式会社: 2015年10月13日
株式会社 ADEKA :2015年10月23日
報告:K.M.(リーディングプログラム2期生)、磯野拓也(リーディングプログラム助教)
構成:リーディングプログラム事務局