2017
09.29

山本 昌紀さん プログラム生紹介 #009 
北海道大学大学院総合化学院 先端材料化学研究室

研究アウトリーチ演習数理連携プログラム生紹介Voice

山本 昌紀さん プログラム生紹介 #009 <br />北海道大学大学院総合化学院 先端材料化学研究室

北海道大学 物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラムに平成26年度に採用され、日本学術振興会・特別研究員(DC2)にも採用されている山本昌紀さん。現在博士後期課程2年に在籍し就職活動を行っている山本昌紀さんの4つのアピールポイントを紹介します。

1.博士課程前期・後期一貫したカリキュラムで圧倒的な専門力を身につけました。これまでにない光機能材料の創成を試みています。

私は希土類元素を用いた発光体の研究を行っています。希土類はレアアースと呼ばれ、希少なイメージを持つかと思いますが、地球上での埋蔵量は白金や金などの貴金属よりも多いことが知られています。特に、この希土類元素たちは、蛍光灯やディスプレイの照明やレーザー材料、モーターには欠かせない永久磁石など身の回りの製品にかならずといっていいほど利用されており、少量の添加で現代社会の縁の下を支えています。なかでも私の研究では、Eu(ユウロピウム)や Tb(テルビウム)に代表される発光性の希土類元素に着目しており、その特性として大変ピュアな発光色を示すことが知られています。特に、希土類元素を有機分子と組み合わせた「希土類錯体」は希土類元素よりも約100倍効率的に光らせることが可能になります。私はより効率的に光らせる希土類錯体の分子設計と希土類錯体の新しい機能化についての研究を行っています。具体的には、さまざまな有機分子を合成し、希土類元素を組み合わせることで、形成する希土類錯体の配位構造の制御を試みて、理想的な希土類錯体の強発光設計を探索したり、有機分子がもつ特性と希土類元素とマッチングさせて新しい機能を付与させた、これまでにない光機能材料の創成を試みています。


図・写真:(左)希土類錯体の発光メカニズム、(右)ポリマーに分散させた希土類錯体の発光写真

2. 研究活動や人脈を構築する上で欠かせない基盤となったアウトリーチ活動。他者にわかりやすく、正しく伝えるスキルを磨きました。

研究内容を他者にわかりやすく、そして正しく伝えることは研究者として身につけるべきスキルの一つであると考えます。本プログラムの必修科目のひとつ「科学技術コミュニケーション」という科目では、科学技術と社会の関係性や研究倫理を学び考えます。私は博士後期課程1年次の夏に、一般市民に向けた最先端科学技術のアウトリーチ活動を行いました。静岡科学館る・く・るにおいて開催された「夏のサイエンス屋台村」に「☆ヒカリノフシギ☆」というブースを出展し、来場者に発光や光吸収など光科学に関する簡単なデモ実験をしていただました。この演習を通じて学んだ知識や実践経験は、今後の私の研究活動や人脈を構築する上で欠かせない基盤になったと実感しています。


写真:静岡科学館る・く・るにおいて開催された「夏のサイエンス屋台村」に出展したときの様子

3. 化学現象を式から理解する視点が得られた数理連携。数式のもつ背景や数学を扱う意義・姿勢を身につけることができました。

自然科学と数学の異分野融合を目指した「数理連携」が本プログラムの特徴として挙げられます。北大理学研究院数学部門の教員による高等数学の講義では、純粋数学を学ぶだけでなく、数式のもつ背景や数学を扱う意義・姿勢を身につけることができます。なかでも私は、博士前期課程2年次に行われる Qualifying Examination 1で、自身の専攻する光科学に関する数理融合の提案を行いました。この時の経験は、自身の研究において現象を式から理解する際に大変役に立っています。


写真:異分野ラボビジットの際に使用した教科書とゼミ原稿

4. 独創的な視点を養うこと、コミュニケーション能力を高めることに役立っている趣味の写真撮影。広大で美しい北海道の自然を切り取っています

私の趣味は写真撮影です。主な撮影対象は風景で、広大で美しい北海道の自然を切り取っています。特に私は、誰も見たことない景色や写真でしか表現できない世界を写すことを意識しています。また、身近な喜びや幸せの瞬間をできる限り記録することも試みており、結婚式のカメラマンなどを通じて、私が撮影した写真で多くの人に喜んでいただいています。写真を趣味として扱うようになって、独創的な視点を養うことができるようになったこと、そして人と自然にコミュニケーションする力を身につけることができるようになったと感じています。


写真:山本さんが撮影した写真。右は利尻富士と海岸


写真:撮影する山本さん

■論文
Effect of Cylinder Height on Directional Photoluminescence from Highly Luminous Thin Films on Periodic Plasmonic Arrays
M. Saito, S. Murai, H. Sakamoto, M. Yamamoto, R. Kamakura, T. Nakanishi, K. Fujita, Y. Hasegawa and K. Tanaka
MRS Advances, 2017, 1-6. 
DIO: 10.1557/adv.2017.149

Effective Photo- and Triboluminescent Eu(III) Coordination Polymers with Rigid Triangular Spacer Ligands
Y. Hasegawa, S. Tateno, M. Yamamoto, T. Nakanishi, Y. Kitagawa, T. Seki, H. Ito and K. Fushimi
Chemistry A European Journal, 2017, 23(11), 2666-2672.
DIO: 10.1002/chem.201605054

Directional outcoupling of photoluminescence from Eu(III)-complex thin films by plasmonic array
S. Murai, M. Saito, H. Sakamoto, M. Yamamoto, R. Kamakura, T. Nakanishi, K. Fujita, M. A. Verschuuren, Y. Hasegawa and K. Tanaka
APL Photonics, 2017, 2(2), 026104.
DIO: 10.1063/1.4973757

Luminescent Eu(III) coordination polymer cross-linked with Zn(II) complexes
M. Yamamoto, T. Nakanishi, Y. Kitagawa, K. Fushimi, Y. Hasegawa
Materials Letters, 2016, 167(2016), 183-187.
DIO: 10.1016/j.matlet.2015.12.154

Three-photon-induced Luminescence of Europium Acetylacetonate-type Complexes
Y. Suzuki, H. Moritomo, A. Fuji, K. Satomi, J. Kawamata, M. Yamamoto and Y. Hasegawa
Chemistry Lerrers, 2016, 45(5), 538-540. 
DIO: 10.1246/cl.160126

■受賞
第5回CSJ化学フェスタ2015、 2015年10月、優秀ポスター発表賞

※所属・学年等は2017年9月現在のものです。

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