2014
03.23

社会が必要とする問題発見力が自分のものに

インタビュー

社会が必要とする問題発見力が自分のものに

ヤマハ発動機株式会社 技術本部 研究開発統括部 先進技術研究部 知的システムグループ

松本 和宏 さん

北海道大学大学院理学研究科 数学専攻 博士後期課程修了

●現在の仕事内容とやりがい

二輪車のライダーに 快適な「音」を届けたい

弊社の主力製品である二輪車の開発には、走行性能や燃費性能だけでなく、ライダーが楽しく快適に乗車するためにヒトの状態も考慮することが重要になってきます。このライダーの感性を定量化する業務の中でも「音」の評価業務が私の仕事です。 現在はインドネシアのお客様に心地好い二輪車の音を届けるべく現地に行って利用状況を確認し、音の市場調査を実施しています。海外拠点との仕事はこれが初めてだったので言語や文化の違いで意思疎通に悩む場面もありましたが、逆にそこが面白いところでもありました。自分の価値観を広げる良いチャンスになりました。

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市場調査の結果を分析・比較しながら、ユーザーの嗜好性を見出す作業が続く。

●大学院での研究テーマ

エンジン燃焼圧データの カオス性を利用した制御法

理学研究科数学専攻の津田一郎先生の下で複雑系科学・カオス理論を学びました。研究内容はエンジンの燃焼圧データに見られる不規則な挙動の解析です。解析の結果、その不規則挙動はカオス性(力学的規則性)によるものであることが分かったので、逆にそのカオス性を利用した制御法を考案し、当時津田先生と共同研究を行っていたヤマハ発動機でインターンシップ生としてその制御法の実験を行いました。北大数学教室では、純粋数学から応用数学まで幅広い分野にわたって多くの友人・先生方と議論することができました。私が研究した分野は応用数学の中でも計算機を用いた数学だったので、純粋数学者との会話は貴重な経験になりました。

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大学院時代の一枚。ドイツ・フランクフルトの研究滞在先INM(Institute for New Media)にて。

●博士取得のメリット

論理的思考と柔軟な視点で 問題の本質を見抜く

修士・博士の5年間を通して大学院で研究を行うメリットは、問題の 本質を見抜く能力を培うことにあると考えています。大学院の研究で もそうですが、企業の研究開発においても何が問題であり(問題発 見)、どうしたらそれを解決できるか(問題解決)を常に考え続けなけ ればなりません。問題解決と同等もしくはそれ以上に難しいのが、問 題発見であり、このとき役に立つのが問題の本質を見抜く能力です。 数学研究で鍛えられた論理的思考と、複雑系科学やカオス理論から 学んだ「ものの見方」を変えて捉える姿勢は、今の仕事でおおいに活 かされていると感じています。

●理想のリーダー像

リーダーシップの真意を チーム全員で共有

社会に出る前は、リーダーシップとはリーダーだけが発揮するもの だと考えていましたが、現在はチームメンバー全員がリーダーシップ を発揮してよいと考えられるようになりました。なぜならば、リー ダーシップとは「目的意識を持って行動しチームに貢献すること」だ と捉えるようになったからです。このように捉えると、メンバー全員が リーダーになる資格があります。リーダーは特別な存在なのではな く、メンバーの中の一つの役割に過ぎません。重要なのは、如何に自 分がチームに対して貢献できるかを常に考えることだと思います。各 自がリーダーシップを発揮することでチーム内に信頼関係が生ま れ、より良い解決策が生まれやすくなると感じています。

※所属・役職等は2014年3月現在のものです。

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