2015
08.10

社会と対話し研究を伝える技法を学ぶ
~北大での科学技術コミュニケーション教育の蓄積を吸収する必修科目~

リーディングセルフプロモーション

社会と対話し研究を伝える技法を学ぶ<br>~北大での科学技術コミュニケーション教育の蓄積を吸収する必修科目~

リーディングプログラムでは、科学技術コミュニケーションの科目群が設けられています。科学者や技術者には、社会と対話し研究の意義と魅力を伝える能力が必須だとの考えにもとづくもので、プログラム生は「リーディングセルフプロモーション講義」(2単位)と「アウトリーチ演習」(1単位)を履修します。「リーディングセルフプロモーション講義」では、本学で科学技術コミュニケーション教育に取り組んで10年を誇る高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(通称CoSTEP)のコースに参加しています。年間27回にわたる北大内外からの多彩な講師によるCoSTEPのオムニバス講義のうち、プログラム生は12回分の講義を受講します。今回は、そのなかから平成27年7月4日と7月11日に行われたCoSTEP専任教員による2つの講義をレポートします。

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     写真:7月4日(土)の石村源生准教授による講義「プレゼンテーションの考え方」

7月4日(土)の石村源生准教授による「プレゼンテーションの考え方」では、プレゼンの考え方の基本からスタート。「伝える相手」に対する想像力を働かせることが最も大事であり、そのために分かりやすい説明を心がけ、さらに相手の状況を理解することが重要であると指摘されました。そして、情報量の最小化、情報の時間的・空間的構造化、出席者のモチベーションの測り方などの具体的なプレゼン技術をていねいに説明してくれました。この回のレクチャーは、石村先生みずから実践する「プレゼン」そのものであり、質問を投げかけると受講者からの積極的な応答があるなど、教室内のモチベーションが高まっていくのが感じられました。系統だったプレゼン技術を研究室の中で学ぶ機会は少ないため、このような貴重な機会を持てるのもリーディングプログラムの利点です。

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写真:7月11日(土)の大津珠子特任准教授による講義「デザインというプロセスを通した科学コミュニケーションの可能性」

7月11日(土)は、「デザインというプロセスを通した科学コミュニケーションの可能性」と題して、大津珠子特任准教授が講義されました。グラフィックデザインとは、情報の質の視覚的なコントロールです。講義では、大津先生が今までに作成されたポスター等を通じてそのエッセンスを学ぶ形で進行。多く示された具体例からは、文字では伝えきれない情報を、見た瞬間に感じさせ伝えるデザインの力強さを体感できました。また、情報伝達のハレ性(記号主義)とケ性(機能主義)による分類も解説。学術的な発表はケ性での構成が多い一方で、一般市民が科学技術の情報を受けとる時にはハレ性が求められるという考え方で、デザインでは重要な視点です。大津先生の示した具体例は、このハレ性の記号主義的な方法で人々の関心を引くための5つの要素、Simplicity, Sympathy, Surprise, Sensibility, Styleの重要性が良く理解できるもので、論文発表とは異なる研究成果の発信方法を深める非常に有意義な内容だったと感じます。

多彩な講師がリレー形式でレクチャーするCoSTEPの講義では、さまざまな視点から見た科学技術コミュニケーションの意義が理解でき、それを支える様々な基礎技能の考え方が吸収できます。この講義で得たものをベースに、プログラム生は次の年度にはサイエンスイベント実践(アウトリーチ演習)に取り組みます。社会との対話をうまく立案できるように、CoSTEPによる科学技術コミュニケーション10年の蓄積の吸収を続けていきます。

報告:A.K.、R.K.(リーディングプログラム1期生)
構成:藤吉隆雄(リーディングプログラム特任准教授)

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