2017
09.04

科学技術の倫理を考える特別シンポジウム「科学者は産業活動にどうコメントすべきか?~化学者がみずから決めた規範と実際」を開催

公開行事

科学技術の倫理を考える特別シンポジウム「科学者は産業活動にどうコメントすべきか?~化学者がみずから決めた規範と実際」を開催

平成29年7月7日(金)、科学技術の倫理を考える特別シンポジウム「科学者は産業活動にどうコメントすべきか?~化学者がみずから決めた規範と実際」が本プログラムの主催で開催されました。フロンティア応用科学研究棟 鈴木章ホールで開催された本シンポジウムでは、科学者と産業活動との間に生じる諸問題について、産学およびマスコミ経験者による講演とパネルディスカッションが行われました。
シンポジウムでは、石森浩一郎コーディネーターによる主催者挨拶ののち、内村直之氏(CoSTEP 客員教授/元朝日新聞科学部記者/元メディカルアサヒ編集長)が科学と社会との関わりと、時として両者の間に生まれるさまざまなコンフリクトに関する論点提示講演を行いました。そして、本シンポジウムのテーマである、「科学者は産業活動にどうコメントすべきか?」という問いを投げかけました。これを受け、科学史家の菊地重秋氏(中央大学・埼玉学園大学 非常勤講師)が、「化学者の社会への誓い~日本化学会の会員行動規範制定プロセス~」と題した講演を行い、日本化学会が会員行動規範を策定した経緯とプロセスを紹介し、倫理規定の制定は科学に対する信頼の源泉となり得ることを指摘しました。続いて、日本分子状水素医学生物学会理事長の太田成男氏(International Molecular Hydrogen Association President/順天堂大学大学院 医学研究科 客員教授)が、昨今の水素水商品をめぐる一連の騒動を研究者の立場から振り返りました。太田氏は、基礎研究により得られた客観的な知見が、一部の業者の宣伝活動に利用されることがあると指摘しました。公益財団法人 食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏は、「科学的な情報へのコメント~メディアとの関係~」と題した講演を行い、科学者が情報をメディアに発信することの重要性を強調しました。続いて、沖縄科学技術大学院大学(OIST) 広報担当准副学長の森田洋平氏が、研究により明らかにされた情報を誤解なく社会に伝えることの難しさを、組織広報に携わる自らの体験を交えて語りました。


写真:内村直之氏(CoSTEP 客員教授/元朝日新聞科学部記者/元メディカルアサヒ編集長)


写真:菊地重秋氏(科学史家/中央大学・埼玉学園大学 非常勤講師)


写真:太田成男氏(日本分子状水素医学生物学会理事長/International Molecular Hydrogen Association President/順天堂大学大学院 医学研究科 客員教授)


写真:唐木英明氏(公益財団法人 食の安全・安心財団理事長/食品安全委員会専門参考人/日本学術会議元副会長)


写真:森田洋平氏(沖縄科学技術大学院大学(OIST) 広報担当准副学長)

後半は、内村氏をファシリテーターとして、講演を行った他の4名に、化学系企業出身者であり本プログラム客員教授の七澤淳氏を加えた5名のパネリストによるパネルディスカッションが行われました。そこでは、どうすれば科学者が社会に対して効果的に情報発信をできるのかについて議論を深めました。最後に、本学国際連携機構国際オフィサーで、科学技術広報研究会(JACST)副会長でもある南波直樹氏が本シンポジウムを締めくくる総括コメントを述べました。


写真:「科学者への市民社会の期待と実際」と題した総合パネルディスカッションの様子。


写真:本プログラム客員教授の七澤淳氏(右)


写真:参加者からの質問に応答する森田洋平氏(右)


写真:総括コメントを述べる南波直樹氏(国際連携機構国際オフィサー/科学技術広報研究会(JACST)副会長)

本シンポジウムは、共催のCoSTEP、JACSTの協力もあり、科学と社会との関係性について多面的な議論が行われました。本シンポジウムにはプログラム生のみならず、教員や一般の方も多く参加し、来場者は合計96名に上りました。社会的な話題であったため、それぞれの参加者にとって得るものが多い有意義なシンポジウムとなったと思われます。

 

報告:北原 圭(リーディングプログラム特任助教)

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