ご挨拶
プログラムコーディネーター
北海道大学大学院理学研究院 教授
武次 徹也
いよいよ「スマート物質科学」を掲げた北海道大学大学院教育プログラムがスタートします。「スマート物質科学」とは、広い意味での物質科学に数理科学・計算科学・データ科学を融合させることで実験のみの研究手法から脱却し、研究のスピードを格段に向上させイノベーションを引き起こすことが期待される新しい研究分野です。北海道大学ではこれまで、ノーベル化学賞受賞者の鈴木章先生をはじめとして、先人たちが物質科学の分野で世界に誇る研究実績を積み上げてきました。このような研究実績を背景に、2013年には博士課程教育リーディングプログラム「物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(ALP)」が始動し、物質科学に数理科学の視点を導入した異分野融合教育に加え科学技術コミュニケーション能力を涵養することで産業界でも活躍するリーダーの育成を実現してきました。2018年には世界トップレベル研究拠点プログラム「化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)」が始動し、計算科学・情報科学・実験科学の融合により人類社会を一変する重要な化学反応を発見するのに要する時間を格段に短縮させる融合研究に取り組んでいます。本プログラム「スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム」では、総合化学院、理学院、工学院、環境科学院、生命科学院、情報科学院の修士2年の学生から博士後期課程進学を決めている人を対象に参加者を募り、選抜されたプログラム生は、自身の専門分野の研究だけにとどまらず、互いに切磋琢磨しながらスマート物質科学力ならびに社会実装実現力の獲得にむけ精進します。
プログラム生の皆さんには、スマート物質科学を涵養するカリキュラムやイベントに積極的に参加して「化学反応創成学」の基盤となるスマート物質科学力を磨き、次世代のアカデミック・産業界において活躍できる人材として育ってほしいと心から願っています。
プログラム概要
北海道⼤学スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム(SMatS)では、化学・⽣命・材料・環境・物理学・宇宙を対象とする広範な「物質科学」に、現象を抽象化して理解する「数理科学」、コンピュータシミュレーションに基づいた「計算科学」、ビッグデータから有⽤な情報を抽出する「データ科学」を融合させ、従来のTrial & Errorによる研究⼿法から脱却し、物質科学研究を⾼速化しイノベーションを引き起こす新たな研究分野「スマート物質科学」を⾝に付けた⼈材を育成します。スマート物質科学を先導する⼈材を養成するために、従来の物質科学の枠組みにとらわれない高い専門性である「スマート物質科学的デザイン⼒」に加えて、社会実装を実現する⼒(トランスファラブルスキル)としての「俯瞰⼒」、「⼈的ネットワーク形成⼒」、「国際的発信⼒」を養成するカリキュラムを提供します。優秀で意欲のある博⼠後期課程進学者をプログラム⽣として採⽤し、支援します。
養成する⼈材像と養成する⼒
養成する⼈材像
⾃⾝の専⾨分野と異分野や社会との関係性を国際的な観点から⾒通す能⼒を習得させ、「専⾨分野のブレイクスルー」に留まらず「社会構造を⾰新しうるイノベーション」を⽣み出す⼈材
スマート物質科学⼈材
新たな物質(薬や素材など)やその機能(環境適合性や合成コストなど)を、社会実装まで⾒通してデザインし創出できる⼈材、⾃然を包括的に理解し、その多様性が⽣じる原因やプロセスを予測し、新たな物性・法則を発⾒できる⼈材を養成する
養成する⼒「SMatS駆動⼒」
スマート物質科学力
「物質」を対象とする広範な物質科学研究において、数理的思考、コンピュータシミュレーション、データ解析技術を推進力として研究の速度を加速し、研究の質を格段に向上させる力を身に付ける
スマート物質科学を構成する4つの分野
物質科学
化学・材料科学・⽣命科学など物質を対象とする⾃然科学分野に幅広くまたがる
数理科学
多様な個々の現象を抽象的に理解し、数学的に記述する強⼒な⽅法論を持つ
計算科学
高速計算機を用いたシミュレーションに基づき、
データ科学
ビッグデータから有⽤な情報を抽出することで、膨⼤なデータを利活⽤する
社会実装実現力
自身の専門的な研究成果や課題を社会の中に位置づける俯瞰的な視点や、様々な立場の人とチームを組み上げるネットワーク力、国内外問わず広く自分の考えを発信する力を身に付ける
専⾨を⽀えるトランスファラブルスキル
俯瞰⼒
広い視野を持ち⾃分の研究分野を社会の中に位置づけることを可能にする⼒
人的ネットワーク形成力
異分野の研究者とも円滑に連携し、互いの領域に⼊りこんで協働する⼒
国際的発信⼒
卓越した国際感覚を持ち、グローバルに共有可能な価値を発信する⼒
新たな学修評価システムの導⼊(アチーブメント・ポイント制)
「主体的な学び」を重視し、プログラム⽣の学内外における様々な取組(アクティビティ※)で⾝に付けた能⼒(コンピテンス)をもれなく評価する「アチーブメント・ポイント制」を導⼊
学⽣が修得するコンピテンスに基づく学修評価システム
- 単位制度から脱却しポイント形式の評価システムを導⼊
- 多⾓的なコンピテンスを評価対象としたQEを実施
※アクティビティ
授業科⽬
- 1科目を1アチーブメント・ポイントとして読み替え
プラクティス(留学、インターンシップ、TAなど授業の枠に収まらない取り組み)
- 時間や難易度に応じてアチーブメント・ポイントを設定
- 事前計画と事後の⾃⼰評価のプロセスを総合的に評価
Qualifying Examination (QE)
プログラム⽣が所属する専攻の専⾨⼒に加え、「コンピテンス(主体的な学び)」を、⾃⼰評価、プレゼンテーション、およびWebポートフォリオシステムの記録を⽤いて評価