平成28年1月12日、リーディングプログラム新春特別企画として、パネルディスカッションが行われました。議論のテーマは「科学技術イノベーションを駆動する人」。特別ゲストとして、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議の常勤議員である原山優子先生にお越しいただきました。
原山先生は科学技術イノベーション政策と産学連携、大学改革の専門家であり、これまでに国内外の大学、政府機関、研究所、国際機関、多国籍企業など様々な組織で活躍された経歴をお持ちです。会場の理学部7号館大講義室には61名の参加者が集まりました。前半では、本プログラムの石森浩一郎コーディネーターからの冒頭挨拶に続き、原山先生が論点提示の講演を行いました。そこでは、原山先生自身が策定に携わり、昨年末にとりまとめを行ったばかりの第5期科学技術基本計画の内容と、そのねらいに関するお話がありました。本計画は、2016年度から2020年度までの日本の科学技術政策の指針となる重要なものであり、ICT技術の発達により地球規模で行われるようになったイノベーションを国として推進するための様々な仕掛けが盛り込まれています。原山先生は、「大事なのはこれらの仕掛けを実行する人」であることを指摘しました。特に、知的プロフェッショナルの育成や多様な価値観をもった人材の確保、流動性の促進が重要課題であるとの認識を示しました。
写真:論点提示の講演を行う原山先生。
後半では原山先生に加え、プログラム生4名と石森コーディネーターが参加し、「イノベーション」と「人」をテーマとしたパネルディスカッションを行いました。そこでは、将来のイノベーション人材となる大学院生の多様性(年齢や性別など)のあるべき姿や、日本の大学院の教育システムの問題点などについての踏み込んだ議論が行われ、参加者も含めてこれらの問題について深く考えるよいきっかけとなりました。プログラム生からは、リーディングプログラムでの様々な活動経験(海外研修や異分野ラボビジット、科学技術コミュニケーション活動など)が、将来イノベーションを起こすときにどう活きてくるのか、といった内容の質問が原山先生に出される場面もありました。原山先生は、リーディングプログラムはイノベーションを起こすために必須である多様な価値観をもった人材を育成できるという点において特に大きな価値があると答えました。その上で、自身が世界各国を渡り歩いてきた実体験を元に、組織を動かすコツや社会に出るために心構えを持っておくことの重要性に関する具体的なアドバイスを学生に送りました。
写真:パネルディスカッションの様子。司会者は黒田紘敏特任准教授。
翌日の1月13日には、原山先生によるリーディングプログラム生向けの講演会がフロンティア応用科学研究棟5階の講義室で開催されました。演題は「地球規模課題に向き合う:大学のリーダーシップ」。大学には、環境問題や貧困・感染症などの地球規模の課題に対してイニシアチブをとる人を育て、新たな価値観を生み出す役割が強く期待されると指摘しました。ここでも先生が強調したのは人の役割、特に組織の様々な階層にリーダーシップを発揮する人が存在することの重要性についてです。日本の大学組織には改善すべき様々な課題があるので、リーディングプログラムで多角的な視野を培ったフレッシュな学生がボトムアップ型のリーダーシップを発揮し、大学をより良いものにしていってほしい、とプログラム生に対してエールを送る印象的な一幕もありました。
写真:リーディングプログラム生向けの講演会の様子。
写真:本企画の広報用ポスター
報告:北原圭(リーディングプログラム特任助教)