2017
09.11

鈴木 拓郎さん プログラム生紹介 #005 
北海道大学大学院生命科学院 薬品製造化学研究室

Voice研究一般公開キャラバンプログラム生紹介

鈴木 拓郎さん プログラム生紹介 #005 <br />北海道大学大学院生命科学院 薬品製造化学研究室

北海道大学 物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム1期編入生(平成27年度)に採用され、同時に日本学術振興会・特別研究員(DC1)にも採用されている鈴木拓郎さん。現在博士後期課程2年に在籍し就職活動を行っている鈴木拓郎さんの4つのアピールポイントを紹介します。

1. これまでに積み重ねてきた専門性を駆使し、生物活性天然物の全合成を達成!現在論文を執筆中。

私は有機合成化学を専攻しており、研究室に配属されてからこれまでに”海洋産生物活性天然物の全合成研究”を行なってきました。天然物の全合成研究は、複雑な有機分子を市販品の小さな単位から複数工程かけて化学合成する分野であり、1)単離報告された天然物の化学構造の確定、2)有用な微量天然物の安定供給、3)合成中間体の医薬品等への応用、といった観点から非常に有用な研究分野です。
私がターゲットとした天然物のマクロライドは、他のマクロライドには類を見ない特異な構造を有し、それをいかに構築するかという点で関心が持たれており、先行研究が数例報告されていました。全合成に取り組むにあたっては、これら先行研究とは異なるアプローチで、かつ、より有用な全合成を指向して様々な有機反応を行なってきました。多くの困難にぶつかり、研究テーマとしてからおよそ4年かかりましたが、全合成を達成することができました。現在、研究成果を論文にまとめているところです。

2. 本プログラムで獲得した「フロンティア開拓力」を発揮して新たな研究テーマを立案。研究成果をあげるべく日々奮闘中。

全合成を達成するために様々な有機反応を駆使しました。この経験から”有機反応を開発すること”の重要性を実感し、次に私は有機反応開発に取り組むことにしました。先の天然物の全合成研究において、私が鍵反応として用いた有機反応に焦点をあてて文献調査を行なったところ、困難さゆえにほとんど未開拓の領域があることが判明しました。この領域に挑戦し成果を出すことができれば大きなブレイクスルーとなると考えた私は、現在、新たな遷移金属錯体の創製とともに研究を行なっています。


写真:第4回国際シンポジウム ポスタープレビューで英語で研究内容を紹介する鈴木さん

3. アウトリーチ活動を通じて科学を伝えることの重要性を実感。自身の研究をどのようにしてわかりやすく伝えるかを考える契機に。

私たち科学者にとって、専門性の有無を問わず様々な人々に対して自身の研究をわかりやすく伝える力は必要不可欠だと考えています。本プログラムの必修における「アウトリーチ演習」では、グループメンバーの専門分野である光化学に関する出展を、2016年8月21日に静岡科学館る・く・るにて行ないました。この経験を通して、自身の専門分野とは異なる内容を理解すること、そしてそれを老若男女問わず一般の方々に説明できるようにすることの2つの力を身につけることができました。そのうえで自身の専門分野である有機合成化学を振り返ったときに、誰にでもわかりやすく伝えることは難しいと改めて実感しました。どのように表現すればよりわかりやすく伝わるだろうかと日々考えています。


写真:静岡科学館る・く・るでのアウトリーチ活動の様子

4. “新しいことへの挑戦”という姿勢のもと、人生初のフルマラソンへ参加。見事完走を成し遂げる!

研究テーマを立案する際に未開拓の分野へ挑むという意思を持ったように、私生活においても何か新しいことに挑戦したいと考えていました。そこで、北海道で毎年8月末に開催される北海道マラソンへ参加し、初のフルマラソンに挑戦することを決意しました。運動することからしばらく離れていたことと、練習時間がほとんどとれなかったことなど困難は多々ありましたが、持ち前の最後まで諦めない粘り強さを発揮し無事完走することができました。この新しいことへ挑戦する姿勢とそれを完遂する力は、現在の研究生活においても大きな自信となっています。


写真:北海道マラソン2017で完走した鈴木さん

■論文
2-Hydroxyindoline-3-triethylammonium Bromide: A Reagent for Formal C3-Electrophilic Reactions of Indoles
Abe, T.; Suzuki, T.; Anada, M.; Matsunaga, S.; Yamada, K.
Org. Lett. 2017, 19, 4275.
DOI: 10.1021/acs.orglett.7b01940

■受賞歴
2012年11月 北海道大学 薬学部成績優秀賞
2016年11月 第6回CSJ化学フェスタ2016 優秀ポスター発表賞
2017年5月  第15回次世代を担う有機化学シンポジウム 優秀発表賞

※所属・学年等は2017年9月現在のものです。

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