2019
11.22

堤 拓朗さん プログラム生紹介 #012 
北海道大学大学院総合化学院 量子化学研究室

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堤 拓朗さん プログラム生紹介 #012 <br />北海道大学大学院総合化学院 量子化学研究室

北海道大学 物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム3期生に採用され、同時に日本学術振興会特別研究員(DC1)にも採用されている堤拓朗さん。現在、量子化学研究室 博士後期課程2年に在籍している堤拓朗さんの4つのアピールポイントを紹介します。

1. 理学院数学専攻の研究室で「異分野ラボビジット」。現在も数理連携研究を進めています。

専門分野外の研究室に赴き、異分野研究を経験する「異分野ラボビジット」で理学院数学専攻の荒井迅教授の元で約3ヶ月にわたってトポロジーに関するゼミを行いました。私の専門分野は量子化学で日頃から数式には触れていましたが、“柔らかい幾何学”と呼ばれるトポロジーは初めて学ぶ概念であったため考え方の違いに戸惑いました。しかしながら異分野ラボビジットの期間中に、荒井先生とゼミ重ねるうちにトポロジーの世界を垣間見ることができました。

荒井先生とは異分野ラボビジット後も交流を続け、私の研究における大きな課題であった多次元データの可視化に関して議論を深めました。そのうち、数理科学的手法を導入することを着想し、現在では荒井先生と数理連携共同研究を行っています。2018年には共同研究の成果が実り、荒井先生と共著論文を投稿することができました(Journal of Chemical Theory and Computation, 2018, 14, 4263-4270.)。

異分野ラボビジットと通じて荒井先生や数理科学的手法と出会い、異分野研究に関する知識が深まっただけではなく、自分自身の専門分野の幅を広げることができました。現在では量子化学だけではなく、数理科学や機械学習の手法を組み合わせた研究テーマを立ち上げ、数理連携研究を進めています。

写真:投稿論文のグラフィカルアブストラクト

 

2. 海外で開催されたワークショップに参加。「海外研究者とのネットワーク」を形成しました。

博士課程1年の夏に、本プログラムの援助を受けて2週間にわたる海外ワークショップ「Geometry of Chemical Reaction Dynamics in Gas and Condensed Phases」に参加しました。このワークショップは化学反応ダイナミクスに関する広範なテーマを扱っていたため、参加者のほとんどが異分野研究に従事していました。また、このワークショップでは参加者同士でロッジをシェアする形式であったため、ワークショップ後も一緒にご飯を食べ、研究に関する議論を続けることで海外研究者と交流を深めることができました。翌年には、このワークショップで知り合ったSrihari Keshavamurthy教授が半年間、量子化学研究室に滞在され、現在では共同研究を行っています。

また、本プログラムのイベントである「海外サマーキャンプ」に参加し、1週間にわたって台湾四大学(国立台湾技科大学、国立台北科技大学、国立中央大学)とのシンポジウムに参加しました。このシンポジウムは主に高分子化学や応用材料開発がテーマであったため、全くの専門外でしたが異分野研究者に理論化学研究の面白さを伝えることの難しさを実感しました。逆に、異分野研究者の発表を聞くことで専門的な表現を言い換えるコツを学ぶことができました。

 

写真:海外ワークショップ(アメリカ)での集合写真

 

3. 「アウトリーチ活動」として実験教室を開催し、科学技術コミュニケーションに磨きをかけました。

本プログラムを通じて学修した「科学技術コミュニケーション」を活用して沖縄科学技術大学院大学(OIST)で開催されたサイエンスフェスタ2018に参加しました。私たちは「色が変わる紙チップを使ってみよう」という実験教室を企画し、OISTの企画担当者などと連携しながら準備を進めました。当日は大盛況で小中学生合わせて125人が参加し、酸塩基の性質や紙デバイスを用いたpH測定を体験してもらいました。

アウトリーチ活動を通じて、安全性確保の重要性や科学的な事象を噛み砕いて伝える難しさ、科学技術コミュニケーションの重要性などを身をもって経験することができました。本アウトリーチ活動の成果は科学技術コミュニケーション専門誌であるJapanese Journal of Science Communication誌に実践報告書として投稿しました。

 

 

4. 大学院生が主体となって「国際シンポジウム」を企画・運営しました。

私は2018年から北海道大学大学院総合化学院の学生代表として国際シンポジウム「Summer School」を運営してきました。2019年からは総合化学院と本プログラムの合同開催となり、他学院のリーディングプログラム生とともに実行委員会を組織し、新たに「International Summer School」を開催することになりました。私は実行委員会の委員長として運営に携わり、海外研究者の招聘や会場の確保、要旨集作成だけではなく、当日の進行や座長、表彰式などを行いました。英語でシンポジウム運営を行うことは大変なことばかりでしたが、非常に貴重な経験になったと感じています。

写真:The 10th CSE-ALP International Summer Schoolで開会宣言をする堤さん

 

論文

沖縄科学技術大学院大学サイエンスフェスタでの実験教室出展報告~紙デバイスを用いたpH測定実験~

愉彦樺, 小松雄士, 文野優華, 堤拓朗, 小川雄大

Japanese Journal of Science Communication, in press.

 

On-the-fly molecular dynamics study of the excited-state branching reaction of α-methyl-cis-stilbene.

Takuro, Tsutsumi; Yu, Harabuchi; Rina, Yamamoto; Satoshi, Maeda; Tetsuya, Taketsugu;

Chemical Physics, 2018, 515, 564-571.

DOI: 10.1016/j.chemphys.2018.08.017

 

Visualization of the Intrinsic Reaction Coordinate and Global Reaction Route Map by Classical Multidimensional Scaling.

Takuro, Tsutsumi; Yuriko, Ono; Zin, Arai; Tetsuya, Taketsugu;

Journal of Chemical Theory and Computation, 2018, 14, 4263-4270.

DOI: 10.1021/acs.jctc.8b00176

 

Analyses of trajectory on-the-fly based on the global reaction route map.

Takuro, Tsutsumi; Yu, Harabuchi; Yuriko, Ono; Satoshi, Maeda; Tetsuya, Taketsugu;

Physical Chemistry Chemical Physics, 2018, 20, 1364-1372.

DOI: 10.1039/C7CP06528K

2018 PCCP HOT Articles

 

受賞歴

2019年6月 理論化学研究会 第22回理論化学研究会 優秀ポスター賞 「多次元データ縮約法による動的反応経路の可視化」

2018年6月 理論化学研究会 第21回理論化学研究会 優秀講演賞 「静的反応経路網に基づくAIMD古典軌道解析」

 

 

※所属・学年等は2019年11月現在のものです。

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