2015年1月16日(金)、北海道大学理学部6号館204-2
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講演では一次元鎖Pd錯体の構造や物性を中心にお話がありました。擬一次元ハロゲン架橋Pt、PdまたはNi錯体は、大きなストークスシフトを持つ発光や高次の共鳴ラマンスペクトル、ソリトンやポーラロンといった興味深い物性を示すことから注目を集めています。Pd錯体は電子・光子相互作用が強いことから混合原子価状態しか取り得ないのが一般的でしたが、山下先生の研究では化学的圧力効果や配位子場制御によって従来の常識をうち破る、さまざまな成果が得られ、強相関電子系一次元鎖Pd(III)錯体の合成に世界で初めて成功しました。とくに、ある条件では室温でPd(II)-Pd(IV)とPd(III)-Pd(III)がスイッチングしたりする現象は非常に興味深いものでした。
ご講演の最後には野球選手の野茂選手とイチロー選手を比較したとき、どちらが偉いかを科学研究と比較しながら述べられました。野茂選手は日本人で初めてメジャーに進出したのに対し、イチローはメジャーで多くの実績を残してきました。言わば前者は「Only 1」であり,後者は「No. 1」の関係になります。「No. 1」ではいずれは他の人に記録を塗り替えられてしまうが、「Only 1」では記録が破られることはない。科学では新しいコンセプトを創出することが大事であり、そういう意味では科学者のあるべき姿は「No. 1」ではなく、野茂選手のように「Only 1」を目指すところにあると山下先生はおっしゃっていました。
今回の講演では、山下先生の行っている研究を分かりやすく紹介して頂くとともに科学者のあり方について教わりました。錯体は純粋な無機化合物や有機化合物とは違う性質を持ち、それをどのように活かしていくかが重要であると改めて考えさせられました。私も現段階では指導教員の先生の下で研究を行っているが、いずれは独自の研究を展開していかなければなりません。そのためにも専門分野のみならずリーディングプログラムが主催する講演に参加して異分野の研究を積極的に聴講し、様々な考え方や捉え方を養って行きたいとおもいます。
執筆者: M. E. (リーディングプログラム1期生)