2015
06.29

講演会「数学は世界を変えられるか? 忘れられた科学」へ参加して

イベント

講演会「数学は世界を変えられるか? 忘れられた科学」へ参加して

平成27年4月16日、文部科学省科学技術・学術政策研究所にて開催された講演会「数学は世界を変えられるか? 忘れられた科学-数学から10年 数学イノベーションの現状と未来」(科学技術・学術政策研究所/研究振興局数学イノベーションユニット共催)に参加しました。講演会では、文部科学省の数学イノベーションに関する取り組みの紹介、数学と他分野・産業との協働による研究の紹介、今後の課題や必要な方策についての意見交換が行われました。

数学と他分野・産業との協働による研究の紹介では、(1)「材料・生命・情報通信と応用トポロジー」と題して東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の平岡裕章准教授が、(2)「高齢化と医師不足の社会における日本の臨床医療とそれを支える数理科学の役割」と題して岡山大学大学院環境生命科学研究科水藤寛教授が、(3)「数学が製造現場・研究現場を変える~数学イノベーションの可能性」と題して新日鐵住金(株)先端技術研究所数理科学研究部の中川淳一上席主幹研究員が講演されました。
平岡先生のご講演では、本リーディングプログラムの目指す物質科学分野への数理連携に近い取り組みをご紹介していただきました。生命科学においては、タンパク質やDNAなどの形・構造を正確に理解することが機能の理解や制御のためには重要です。もし対象が結晶のように周期的な構造をもつならば、幾何学モデリングにより形を記述し群論やフーリエ解析などの数学を用いることで、その構造を把握して機能を予測することができます。実際、タンパク質はその結晶の周期性から構造の高度な予測が可能となっています。しかしながら、非周期的な構造予測、例えばタンパク質の立体構造の変化による機能制御やガラスのアモルファス状態などは、構造の適切な特徴づけや予測に必要となる膨大な情報量を処理することが難しいとされてきました。今世紀に入って位相的データ解析(Topological Data Analysis、以下TDA)が開発され、解析が可能になってきました。これはトポロジーと呼ばれる分野を利用したもので、ホモロジーの概念を発展させたパーシステントホモロジーによって、ヘモグロビンのような構造変化を伴うタンパク質の機能制御に対して新たな知見を得ることができる非常に有用なツールになります。また、数学の普遍性という性質上、TDAはセンサーネットワークなど様々な分野で応用が可能であり、数学分野の発展とともに、諸科学の発展が期待されているそうです。


数学協働プログラムphoto2

写真:東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)西浦教授がモデレーターを務めた意見交換会

最後の意見交換では、数学と連携した研究のシーズは山のようにあるとしたうえで、これらのシーズもしくは実用に即したニーズの中から、どのように研究対象を絞っていくのかということや、数学イノベーションに関わる数学者、特に純粋数学の研究者との数理の連携不足が課題として挙げられていました。

今回の講演会への参加を通じて、今後も数学的な視点を取り入れて研究に励んでいきたいと感じました。同時に数学の連携先である物質科学や生命科学の研究者からの課題抽出の重要性を認識する大変良い機会となりました。

報告:Y. T.(リーディングプログラムパイロット生)

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