2017
03.13

高橋 陸さん プログラム生紹介 #002 
北海道大学大学院生命科学院 ソフト&ウェットマター研究室

Voice研究海外インターンシップ数理連携プログラム生紹介

高橋 陸さん プログラム生紹介 #002 <br />北海道大学大学院生命科学院 ソフト&ウェットマター研究室

北海道大学 物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム初年度(平成25年度)に採用され、同時に日本学術振興会・特別研究員(DC1)にも採用されている高橋さん。現在博士課程2年に在籍し就職活動を行っている高橋陸さんの5つのアピールポイントを紹介します。


1. 独創的な発想で研究成果を挙げ、Nature姉妹紙に論文掲載! 圧倒的専門力を身につけました。現在続報も執筆中。

私はハイドロゲルと呼ばれるソフトでウェットな生体親和性素材を研究しています。物質透過性・高柔軟性・高含水性など生体組織に類似した機能を有するゲルですが、実際の生体材料として応用するにはさらに複雑な機能を同時に発現させる必要があります。単一の材料では達成困難ですが、異種材料と複合化させることで高い機械強度、異方的な力学物性、刺激応答性等を付与できることが期待され、より高い次元での材料設計が可能となると考えられます。
これまでに剛直性高分子とゲルの複合化・配向制御手法を開発し、研究成果をNature Communications誌に掲載されました。加えて、剛直性高分子同士の相互作用を増強することでゲル自体の力学物性を大きく増加させることに成功しています。現在は続報について執筆している他、ゲルと様々な異種材料(金属・樹脂など)の複合化手法とその材料特性について研究を行っています。
これらの研究が成熟することで、ハイドロゲルがもっと身近で使い易い材料になり、実社会での応用に向けて高い波及効果を発揮できるようになると考えています。

2. 専門のハイドロゲル科学と数理科学を協働させ、実験―理論の両面から新しい現象にアプローチ! 国際論文として成果をまとめ、異分野連携を推進しました。

本プログラムの特色の一つである「異分野連携」を生かし、専門分野であるハイドロゲル科学の現象を数理科学の視点からアプローチすることを試みました。具体的には、ゲルが膨潤していく過程で見せる様々な現象(大きな座屈変形・表面しわ構造の形成など)に対して、幾何学の考え方を当てはめることで新たな数理モデルを作成しました。モデルから算出される結果(座屈の形状・しわのパターンや方向)と実際の実験結果は良く一致し、国際論文として Soft Matter誌に掲載され、表紙(Cover Art)にも採用されました。今回の異分野連携で学んだことは、①自分の研究について異分野の研究者が理解できるように説明すること、②自分一人では無理でも共同研究者とチームで取り組むことで難題を解決できることです。これからますます分野横断的な研究が進むと考えているため、今回の経験はとても力になったと実感しています。

写真:採用されたSoft Matter誌の表紙(Cover Art)

3. 本プログラム活動で培った「フロンティア開拓力」を武器に、海外の企業で2ヶ月間の短期インターン! 異なる環境に適応する術を学びました。

2015年7月から9月の2ヶ月、アメリカ合衆国オハイオ州アクロンにあるBridgestone Americas, Inc.の研究所に、短期のインターンとして渡米しました。普段の研究とは大きく異なるテーマで研究を行いましたが、指導担当の研究者や上司の方のサポートもあり、大変有意義な経験を得ることができました。特に海外、そして企業という普段の環境とは全く異なる研究環境でしたが、チームとして研究を進めること、議論の大切さ、研究とプライベートのメリハリと、これからの自分にとってためになることばかりでした。
また、海外での長期滞在は、本プログラムの語学研修を利用してニュージーランドへ2週間留学していた経験があったので、言語を含めスムーズに馴染むことができました。ただ、会社と滞在先間を車で通勤することになったため、日本とは逆車線ということもあり大変緊張しましたが、無事帰国することができました。他にも未知の体験の連続でしたが、それらを乗り越えられたことでこの先どんな環境に置かれてもうまく適応できるという自信をつけることができました。


写真:(左)米ブリヂストン研究所、(右)左から、上司のMindaugas氏、私、指導員のErin氏

4. 趣味は3Dイラストレーション。プレゼンや研究活動にも役立っています!

私の最近の趣味は、3D描画ソフトを利用したイラスト作成です。特に近年の技術の発達は目覚ましく、自分でデザインした3Dイラストレーションを、そのまま3Dプリンターを利用して出力することができます。こうした技能は、研究発表のプレゼンテーション用のイラストを作成したり、実際の研究で使う実験治具を3Dプリンターで自作できたりと、研究活動で大変役立っています。


図:(左)合成装置の3Dイラストレーション、(右)右上が3Dデザイン、写真が3Dプリンターで出力したもの。

5. 積極的なアウトリーチ活動を通して、科学を分かりやすく伝えるトレーニングをしています。

自身の研究の意義や目的を、様々な分野の人にわかりやすく伝えることは研究者にとって必要な能力の一つだと考えています。そのトレーニングの一環として、多くのアウトリーチ活動に参加してきました。具体的は、2014年2月14日-16日に米国イリノイ州シカゴで行われたアメリカ最大級のサイエンスイベント “AAAS Annual meeting” や2015年11月15-17日に日本国東京未来科学館で行われた日本最大級のサイエンスイベント「サイエンスアゴラ2015」に体験・展示ブースとして参加し、ハイドロゲルの魅力や特性を紹介してきました。
その他、自分が所属している高分子学会のアウトリーチ活動を行う部門である「高分子未来塾」に記事の作成・寄稿を行っており、高分子学会の広報活動を行っています。

■論文
Coupled instabilities of surface crease and bulk bending during fast free swelling of hydrogel
Riku Takahashi, Yumihiko Ikura, Daniel R. King, Takayuki Nonoyama, Tasuku Nakajima, Takayuki Kurokawa, Hirotoshi Kuroda, Yoshihiro Tonegawa
& Jian Ping Gong
Soft Matter, 201612, 5081–5088
DOI: 10.1039/C6SM00578K


Polymer Adsorbed Bilayer Membranes Form Self-Healing Hydrogels with Tunable Superstructure
Xufeng Li, Takayuki Kurokawa, Riku Takahashi, Md. Anamul Haque, Youfeng Yue, Tasuku Nakajima & Jian Ping Gong
Macromolecules, 2015, 7, 2277–2282
DOI: 10.1021/acs.macromol.5b00422

In Situ Observation of Ca 2+ Diffusion-Induced Superstructure Formation of a Rigid Polyanion
Zi Liang Wu, Riku Takahashi, Daisuke Sawada, Md. Arifuzzaman, Tasuku Nakajima, Takayuki Kurokawa, Jian Hu & Jian Ping Gong
Macromolecules, 2014, 47,  72087214
DOI: 10.1021/ma501699d

Control Superstructure of Rigid Polyelectrolytes in Oppositely Charged Hydrogels via Programmed Internal Stress
Riku Takahashi, Zi Liang Wu, Md. Arifuzzaman, Takayuki Nonoyama, Tasuku Nakajima, Takayuki Kurokawa & Jian Ping Gong,
Nature Communications, 2014, 5, 4490
DOI: 10.1038/ncomms5490

Geometric and Edge Effects on Swelling-Induced Ordered Structure Formation in Polyelectrolyte Hydrogels
Md. Arifuzzaman, Zi Liang Wu, Riku Takahashi, Takayuki Kurokawa, Tasuku Nakajima & Jian Ping Gong
macromolecules, 201346, 90839090
DOI: 10.1021/ma401773w

■受賞歴
Excellent Presentation Award in International Life-Science Symposium (ILSS) (2016年11月)
公益社団法人高分子学会 優秀ポスター賞(2015年5月)
北海道大学修士論文発表会 最優秀発表賞(2015年2月)
2014年度北海道高分子若手研究会 最優秀ポスター賞(2014年8月)
The 4th Asian Symposium on Advanced Materials(ASAM-4) The best poster Award in ASAM-4(2013年10月)
北海道大学卒業研究報告会 最優秀発表賞(2013年2月)

※所属・学年等は2017年3月現在のものです。

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