理学部では、博士後期課程の学生が研究や進路などについて語る「キャリアカフェ」を開催しています。近年、高度な専門性と柔軟な発想をあわせ持つ博士人材への関心は高まっています。一方で「博士後期課程って実際どうなの?」と疑問を持つ学部生や修士課程の学生も少なくありません。
2026年6月17日(水)は、柄澤 匠さん(生物科学科(生物学専修)卒、現在、大学院環境科学院生物圏科学専攻博士後期課程3年)が登壇しました。博士後期課程での研究生活や進路選択、そして研究の魅力について語りました。
博士課程とはどんな場所か
私なりに説明すると、学部は「研究体験コース」、修士課程は「自主的に研究を進めるコース」、そして博士後期課程は「それでもまだ研究がしたい人が進む場所」です。博士後期課程では、自分で研究計画を立て、実験や解析を行い、論文を書くところまで主体的に取り組みます。自分の手で、科学や研究分野を少しでも前に進める研究をする期間だと思っています。授業はあまりなく、生活の中心は研究。朝から研究をして、帰宅後も研究のことを考えているぐらい研究に没頭できる期間です。
博士後期課程の経済事情
経済面については、北海道大学EXEX博士人材フェローシップや、日本学術振興会特別研究員(学振)など、大学院生を支援する制度があります。選ばれるにはもちろん競争がありますが、生活費に加えて研究費も支給されるため、必ずしもアルバイトをする必要はありません。

博士号取得後の進路
博士後期課程修了後の進路は大きく分けて二つ、一つは大学や研究機関で研究を続けるアカデミアの道、もう一つは企業への就職です。私はアカデミアで研究を続けたいので、ポスドクのポジションを探しています。「博士後期課程に進むと就職できない」というイメージを持つ人もいますが、実際には企業へ就職する人も多くいます。就活のためにいろいろと活動をするのもいいのですが、研究をすごく頑張れば、それも「ガクチカ」なのではないかと思います。また海外では博士号(Ph.D)の価値が日本以上に高く評価されると聞きます。どんな進路があるのかは、研究室の先輩や卒業生などに話を聞くことをお勧めします。
ハエの翅の模様を研究と、AIを使った寄生虫研究

私はハエの翅の模様の進化を研究しています。生物の設計図であるゲノムには、ショウジョウバエの場合、約1億8千万文字もの情報があり、その中のわずか数文字の変化でも翅の模様が変わることがあります。膨大なゲノムのうち、どこがどう変わったら模様が進化するのかを調べています。

最近はそれとは別に、カメムシの体内に入り込んだ寄生虫の有無をAIを使って推測する研究にも挑戦しています。画像認識AIを構築することで、人間の目では難しい高い精度で寄生個体を判別できることが分かってきました。自分の興味次第でさまざまなことに挑戦できるのも博士後期課程の魅力です。


これから博士後期課程を考える人へ
私は博士後期課程への進学を一度も迷いませんでした。小学生の頃、北大祭でクワガタの研究を見て、「人生を研究にかけてもいい」と思うほど面白いと思ったからです。実は研究を頑張りすぎた結果、昆虫アレルギーになってしまい、実験には薬と防塵マスクが欠かせませんが、昆虫研究は本当におもしろいと思って続けています。

私のように「研究がしたい」人にはぜひ進学をおすすめします。ただ、誰もが同じように考える必要はありません。就職するか、博士後期課程に進学するか、たくさん悩んでよいと思います。その上で、博士後期課程に進みたい人には二つおすすめしたいことがあります。一つは「早いうちから友人を作ること」、もう一つは「研究以外の趣味を持つこと」です。研究が思い通り進まないことも当然あります。そんなときに仲間や趣味が支えてくれます。
研究はとても楽しいです。アイディアと行動力(と少しのお金)があれば、自分次第でいろいろな楽しい研究にチャレンジできます。ぜひ常識や現実にとらわれすぎず、自由な心で研究を楽しんでほしいと思います。
※肩書、所属は、2026年取材当時のものです。
キャリアカフェ2026 「学部の学びのソノサキ」
理学部が開催するランチタイムセミナー形式の企画。博士後期課程の学生が自身の研究や進路について語り、学部生がお昼を食べながら気軽に参加できる場です。
https://www2.sci.hokudai.ac.jp/event/24538