Ph.Discoverプロジェクトを代表してご挨拶申し上げます。
全国の大学の中でも北海道大学の博士後期課程では、高度な専門性を修得した学生が毎年500人以上学位を取得しております。博士課程修了者のキャリアパスとして10年ほど前までは大学や公的研究機関等のアカデミアに職を求めるのが常例となっていましたが、最近では産業界においても新たなイノベーションの担い手となる高度な専門性と創造力を持つ人材が求められるようになり、博士課程修了者のキャリアパスの拡張に、大学も、学生も、企業も期待を高めています。しかし、一方でこれまでの博士課程教育では十分ではないことも指摘されてきています。そのため、従来型の博士課程教育の改革と大学教職員の意識変革が急務となってきました。
本学でも、産業界をはじめとした社会の多様な場面で活躍できるグローバル人材の育成を目指して、博士課程教育リーディングプログラム「物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム」(ALP)を2013年からスタートさせ、多くの企業から多様なご支援をいただいております。既に44名が修了し、産業界を中心に活躍しております。2019年度をもちましてALPへの文部科学省からの補助期間は終了しましたが、これまでの実績を継承、発展させ、その教育成果・社会的意義をさらに明確に社会に目に見える形で示すために、本学の事業として活動を継続しております。
また、ALPでの実績を踏まえ、物質科学、数学、情報分野が連携した新たな大学院教育として「スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム(SMatS)」を2021年度からスタートさせ、データサイエンス人材の育成を目指したD-DRIVE等も実施しております。さらに博士後期課程の学生に経済的支援、研究支援とキャリア開発を提供する「JST:次世代研究者挑戦的研究プログラム」への採択が2021年年9月に決定し、様々な学問分野を異分野と融合させるために必要となるDXを理解できる人材、データやITを駆使して課題を抽出/解決し、地域に貢献できる人材の教育支援「DX博士人材フェローシップ」をスタートさせたばかりです。
このように新たな大学院教育を目指したプロジェクトを支えるプラットフォームとして、高度な専門性を企業人として生かせる博士の育成を目指す「大学院教育改革プロジェクトPh.Discover(ピーエイチディスカバー)」(https://phdiscover.jp/)を2020年2月より運営しております。
このプロジェクトは、大学だけでなく、学生、修了生、社会のみなさまと共に大学院教育の未来を考え、情報交換の場を提供することで博士(Ph.D.)人材の可能性をDiscoverしていく取組みです。大学や分野、専門の枠を超えて同じ課題に取り組んでいる他大学、他分野の皆様とも情報共有できればと考えています。
まずは、このプロジェクトの進展を加速させるために、多様なステークホルダーとの意見交換、学内外の実態調査、本学および国内外の大学における実践的取組みの検証と提案などの活動を支え、かつ、広く社会にアピールするウェブマガジンを企画しました。
本プロジェクトの趣旨並びに意義をご理解いただき、このウェブマガジンが学生、企業、大学を連携させ、博士課程修了者のキャリアパスの拡大とこれからのイノベーションを支える人材の育成に貢献できますように、皆様にはさらなるご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
2022年1月吉日
国立大学法人北海道大学副学長/大学院理学研究院教授
博士課程教育リーディングプログラム「物質科学フロンティアを開拓する
Ambitiousリーダー育成プログラム」コーディネータ
Ph.Discover代表 石森 浩一郎