2022年3月10日(木)、北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(以下、ALP)12名の修了式が、理学部大会議室にて学外への同時配信も含めて執り行われました。ALPとは物質科学を中心に分野横断的に学び、社会人として高い能力を養い、学位取得後には学術・研究機関だけではなく民間企業など社会の広い分野で国際的に活躍する人材を育成するための博士課程大学院教育プログラムです。2020年3月に文部科学省の補助金事業としての補助期間は終了しましたが、北大の事業として継続して活動しています。修了証書授与のあと、山口淳二理事・副学長(プログラム責任者)と石森浩一郎教授(プログラムコーディネーター・副学長)より祝辞がありました。【前編はこちら】
会場となったのは90年以上の歴史がある理学部本館大会議室です。第1期〜4期生として修了した12名は、約5年間のプログラムを振り返り、身につけた能力やスキル、異分野の仲間との絆の大切さについて、一人ずつ答辞を述べました。堂々とした挨拶に会場から大きな拍手が送られました。
修了生の挨拶をダイジェストにまとめて紹介
木山竜二さん:私は3年も留年してしまいましたが、それを温かく見守ってくれたALPの皆さまに心から感謝しております。おかげで、研究も含めて学生生活をとても楽しむことができました。一緒に修了する4期生の皆さんは、コロナ以前は修士として学び、その後博士後期課程からコロナ禍での研究生活を余儀なくされました。だからこそ、コミュニケーションの大事さというものを学んだのだと思います。私も同じです。これから、社会に羽ばたいていく時、コミュニケーションの大切さ、あり方の変化を理解し、仲間とともに励みたいと思います。
小澤友さん: ALPは確かにかなり忙しかったと振り返っていますが、他の大学院では学べられないことが充実していました。例えば、採用されてすぐ参加した企業セミナーは、「楽しかったなぁ。ちょっと不思議なことを学べたかも…」というような感想を持ったくらいでした。しかし、大学の外に目を向けるようになった時に、あの時、企業に行ったことで、他の人が持っていない視点や考え方が、自分の中に刻み込まれていたことを実感しています。ALPで学んだことを生かして、社会人として頑張っていきたいです。
朱浩傑さん:1年留年してしまいましたが、今回の修了式に参加することができました。ALPは様々なイベントがあり、この5~6年間とても忙しかったのですが、普通の大学院生よりも、勉強できたと思います。ありがとうございました。これから新しい研究生活を始めますが、ALPで学んだことをしっかり活用したいです。
栗原拓丸さん:この4年半ALPに参加し、やっと終えることができたと、ちょっとほっとしているところです。ALP に参加していなかったら、経済的理由から博士課程に進むこともなかったと思うと、人生に大きな影響を与えてくれたプログラムだったと思います。異分野ラボビジットでは長谷川先生の研究室に参加しました。そこで丁寧な指導を受けて、異分野のについて学ぶということの楽しさに気づかされました。その後も、数学を学んだり、他大学とのワークショップに参加したり、普通の大学院生だったら経験できないことの連続で、多くのことを学びました。4月から企業に就職するので、ALPで学んだ5つの力を下に、社会に貢献できるよう務めたいと思います。
佐藤優樹さん: この5年間、苦しいことも多かったですが、振り返るとそれだけではありませんでした。また、この5年間で急速に社会や環境が変化し、北海道でも温暖化の影響かとても暑くなりました。新型コロナ感染症の蔓延や、ロシアによるウクライナ侵攻だとか、平常な明日がくるのか分からない状況です。そんな不安の中でも、今、この瞬間を大切に必死に頑張りたいと思います。まさに東北大学の本多光太郎先生がおっしゃっている『いまが大切』と『つとめてやむな』です。エンジニアはよく「社会のお医者さん」と言われますが、より良い社会にしていくために、これからも常に努力を重ね、ALPで培ってきた力を発揮し、社会に貢献したいと思います。
島尻拓哉さん: ALPに入るまでは、ケミストリーに関しては研究室で学んでいましたが、広い意味でのサイエンスに触れたり、社会と交わったりする機会はありませんでした。ですから、ALPは新しい気づきや体験をできる良い土壌だったと、いまは感じます。また、一緒にALPを戦い抜いた同期、仲間との繋がりが財産となりました。このような心の支えとなる仲間を、社会に出たときにもっと作っていきたいと感じております。
杉山佳奈美さん: ALPに入った主な動機は、経済的支援と異分野ラボビジットに魅かれたことでした。実際、異分野ラボビジットで取り組んだ研究がとても印象に残っています。苦労もありましたが、その時の経験は、その後の修士・博士の生活にも活かされましたし、今後の糧にもなると思っています。私は、研究室に同期や近い学年の学生がいなかったので、ALPの授業で笑って話してくれる仲間の存在がありがたかったです。これまでの経験を自信に変えて進むと共に、さらに進化した姿をお見せできるように、今後も頑張っていきます。
高橋里奈さん: 私はALPに採用された当時、文章を書いたり、発表したりするのが、得意ではなく、採用試験の点数を見た伊藤肇先生がびっくりして、私を呼び出し、心配と励ましの言葉をいただくほどでした(笑)。ですが、ALPを通して様々なイベントをクリアして行く中で、苦手意識も薄れ、得意とは言えないまでも落ち着いて発表できるようになったと思います。たくさん鍛えていただいて、ありがとうございました。その他に、私の努力を知っている先生や友人が、学部を超えてたくさんいるということが、研究をする上で心の支えになりました。5年間、様々な場面でご指導・ご支援いただきありがとうございました。
張曄さん: 4月から社会で働きますが、今、自信を持って羽ばたいて行けると自負しております。5年間を振り返ってみると、ずっと順風満帆だったわけではなく、ちょっと難しい局面もあったりしました。その度に同期や先生や事務の皆さまに暖かく支えていただきました。この場を借りて改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。リーダーの素質に関して勉強させてもらいましたが、個人的にスキルやノウハウとは別に、人間的な素質も必要になってくるだろうと実感しています。僕の同期は寛容さとか度量の広さというところでは間違いなく資質を持っていて、たくさん助けられました。僕もそのようなリーダーになれるように、明るく元気に頑張っていきます。
奥村剛士さん:僕は、実は修士過程修了後に何をしたいか分からず、そのまま博士に進みました。しかしALPを通して多くの学びがあり、研究を継続した結果、心の中でワクワクする日々を送ることができました。4月からはアカデミアとは異なる現場で働きます。コロナが収まってから、もう少し考え、見たいものを見て、今後ワクワクしたことを探していこうと思っています。ALPや博士課程で培ってきた力は将来様々な場面で生かされると思います。
鄭成佑さん:僕は、世界の変化をリードする者とは、自身の未来構想の価値を他人に共感してもらい、それをきっかけに同志を集めその人たちを目標へ動かし続けられる、そして社会に新たな価値を生み出し影響力を及ぼす人と考えます。そのために最も大事なものは、自身のVision、すなわち未来構想にあると思い、それがいかに人々の心を動かせ行動させるかどうかであり、それは深い信頼関係のもとに初めてできることであると考えます。このように至った今は、内省的知力の重要性を強く感じています。メタ認知を高め社会との関わり方を工夫しながら自分なりの構想を実現していきたいと思います。また、今後は異分野の研究に挑戦しながら俯瞰力をさらに広げ、博学者の意味をもつ「ポリマス」となり、社会の複合的な様々な問題に取り組んでいきたいと思います。
小原一馬さん:ALPでは、他者との協力、サイエンスコミュニケーションの重要性、視野を広げて思考することを学ぶことができました。とりわけ、研究領域の異なる研究室に移籍する「異分野ラボビジット」では、化学分野出身の私が、数学系のラボでお世話になりました。これにより、異分野の研究の最先端を知ることができたと同時に、自分自身の研究を新たな側面で見つめ直すことができました。非常に良い刺激となりました。また、海外の大学・研究所を訪れたり、学内外の学会やシンポジウムに参加させてもらったりし、自らの研究をアウトリーチすることで、サイエンスコミュニケーションの研鑽を積むこともできました。このコロナ禍においては、数年前までのface to faceの交流が懐かしく思います。特に、サイエンスコミュニケーションをどのように行うか、議論をどのようにファシリテートするかという点は、博士課程の学生時代のみならず、今後の仕事にも大いに活きていくと思います。