半導体業界での振る舞い方や挑戦を語った後、話題は“失敗談”へ。緊張感ある体験から学んだ教訓、そしてその先にあるやりがい。最後には、未来を考える学生に向けて、力強いメッセージが贈られました。
緊張感に満ちた失敗談 ― 次の改善につなげる学び
セッション後半では、登壇者が入社後に経験した失敗談とそこから学んだことについて語られました。
松本氏は、製造工程の確認を一つ飛ばしてしまい、「製造ラインを止めかねない」と冷や汗をかいた経験を紹介。榊氏は、試作品を落として価値を失わせてしまった体験を披露し、「たくさんの工程を経て作られた成果を台無しにしたときは、本当にやらかしたと思った」と話しました。水野氏もまた「優先的に対処しなかったことで原因追及に手間取った経験」を語りました。
登壇者に共通していたのは「失敗は次に活かすべき経験」と捉える姿勢です。学生生活における実験の失敗や研究のやり直しと同じく、現場でも失敗は避けられません。大切なのは、その過程で学んだことを次は失敗しないように経験として活かしていくこと。こうした言葉は、企業での振る舞いに不安を持っていた学生に響いたのではないでしょうか。

やりがいを語る ― 社会につながる瞬間
失敗談の後に語られたのは、それを乗り越えた先にある「やりがい」です。
松本氏は「自分の提案がきっかけで測定方法が改善されたとき、やりがいを得た」と話しました。榊氏は「開発したイメージセンサーがスマートフォンに搭載され、メーカーからその先のお客様に届いたときに、社会貢献を実感した」と語り、部品としての半導体が私達の生活の中で息づき、つながっているという感覚を大切にしていました。工藤氏や水野氏も「原因を突き止めて改善できたとき、まるで推理が当たったようで面白い」と達成感を語りました。
さらに安田氏は「特許として成果が評価されることも、会社と個人の利益につながりモチベーションになる」と述べ、学生にとっても「自分の研究が社会と結びつく」という未来像を具体的に描けるエピソードを届けました。多くの登壇者の言葉から、挑戦の先にある「社会貢献」というやりがいが感じられました。

学生へのメッセージ ― 未来へ続く言葉
最後に、登壇者たちから学生たちへ、自身の経験に基づいたメッセージが贈られました。
「半導体に夢が持てるのか?」は心が決めること。心に生きがいを持って。(塩沢氏)
「興味こそ最大の成長の源」何事にも興味を持って取り組んで。(工藤氏)
「一緒に半導体ドリームをつかみましょう」(安田氏)
「メリハリをつける」頑張らなければいけないタイミングを意識して挑戦して。(松本氏)
「納得した選択ができるように」学生生活を充実させて。(榊氏)
「周りと協力して前に進もう」協力者と一緒に問題解決に進んでいくことが大切。(水野氏)
カンファレンス終盤には、会場からも登壇者に向けて質問が寄せられました。
ひとつは「半導体に直接関係しない博士号の価値」について。塩沢氏は、「いろいろな分野があり無駄にならない。特に海外では“Dr.”という肩書きが大きな信頼につながる。経験を活かしていってほしい」と博士号を目指す学生たちに応援メッセージを贈りました。

閉会にあたり、北海道大学理事・副学長であり半導体フロンティア教育研究機構長の山口淳二氏が挨拶に立ちました。学生が企業に入った時の具体的なイメージを掴めるような本音の話を聞くことができ、有意義だったと感謝を述べました。また、北大は半導体を「つくる人材」だけでなく、「つかう人材」も育成していきたいと強調し、会を締めくくりました。



主催:北海道大学半導体フロンティア教育研究機構
共催:北海道大学大学院教育推進機構・北海道大学大学院理学研究院
※肩書、所属は、カンファレンス開催時のものです。