こんにちは、ファームノートの細田薫です。
目の前で起きているAI革命。文字通り日進月歩の世界を目の当たりにすると「自分はこのままで良いのか」「新しい時代に求められることはなんなのか」、こういった心配が頭に過ぎると思います。
特にエンジニアという職業、そしてコーディングというスキルの位置付けが大きく変わってきていると言えるでしょう。
そんな変革の時代において「ファームノートはどんな人材を求め、育てていくのか」という観点から、当社社長・小林にインタビューを行いました。
特に、自分はエンジニア職ではないけれど、テクノロジーで社会を変えることに関わりたいと考えている方や、一つのことにじっくり打ち込んできた経験を、現実の現場で活かしたいと考えている方に読んでほしい内容です。
ぜひ最後までご覧ください。

小林 晋也(Shinya Kobayashi)
株式会社ファームノート代表取締役CEO。酪農・畜産の現場とAIを経営の中核に据え、自社で牧場事業も手がける。「テクノロジーで人の可能性を広げる」ことを一貫したテーマに掲げる。
人の可能性を、最大化する。すべては、ここに尽きる
人の可能性を、最大化する。
ファームノートの、そして私のテーマは、本当にこれに尽きます。私がやっていることは、全部ここに辿り着く。事業も、そして会社経営そのものも全てこの言葉が貫きます。
例えば、社内の「新卒のコミュニティづくり」も、今後より力を入れていく農家さんとの「ワンチーム構想」も、根っこは同じ。
その人自身が”本来ありたい姿”でいられるように、テクノロジーでどう支えるか。それに尽きます。
ーーこのフレーズだけ聞くと抽象的にも聞こえますが、具体的なお話も伺えますか。
たとえば、我々に牧場の運営を任せてくれている、佐々木大輔さんと林さん。
先日のファームノートサミットでも話してくれたのですが、二人とも、生まれた瞬間から「農業を継ぐ」ことが当たり前になっていました。
でも、別の選択肢を持てた途端に気づくんです。たとえば大輔さんの場合、本当にやりたかったのはモルトウイスキーづくりだった。縛られていたものから、解放されたわけです。
面白いのは、そうやって自由になった二人が、それでも「生まれ育った酪農に貢献したい」と、今もファームノートと一緒にやってくれていること。これって、すごく新しい可能性じゃないですか。
人を、生まれた場所や肩書から自由にする。それがやりたいことなんです。

AIは仕事を奪わない。むしろ「人らしい仕事」が生まれる
ーー今、目の前でまさにAI革命が起きています。「可能性が広がる」と思う方もいれば、「AIに仕事を奪われる」と思っている人もいます。
確かに100年前、フォードが自動車を作ったことで、馬車を引く仕事はなくなりました。
でも、タクシー運転手という仕事が新しく生まれましたよね。AIも同じです。
奪うんじゃなくて、新しい可能性が生まれるだけ。自分の苦手なことはAIがやってくれる。だから人は、人にしかできないことをやればいい。
ーーなるほど。その先に、ファームノートは何を見ているんでしょう。
僕らは、自分たちのテクノロジーで「農家を変えたい」わけじゃないんですよ。変えたいのは、社会の仕組みそのもの。
AIが進むと、放っておけば富は一部に集中して、小さな生産者から淘汰されていく。その流れに抗える仕組みを作りたい。
大きな話に聞こえるけど、本気でそう思っています。

「FDE」に近いが、ちょっと違う
ーーでは、ここからは「AI時代の人材像」に話を移せればと思いますが、ファームノートはどんな人を求め、どんな人になって欲しいと思っていますか?
今風に言うと「FDE(Forward Deployed Engineer)」という考え方です。
顧客の課題に深く入り込んで、AIで実装し、大きな成果を出す。今、OpenAIやAnthropicのような最前線が、最も力を入れているのがこれです。
ただ我々の場合、その”現場”は顧客先だけじゃない。牧場という自分たちの現場を持っていて、まず自分たち自身の課題をAIで解いています。今まではエンジニアリングを顧客の課題解決に向けていたけれど、そのプロセスごと変わってきているんです。
そして我々は、この言葉が生まれる前から「現場✖️IT/AI人材」の育成を標榜してきました。
そしてこのAI時代、エンンジニアリングそのものが根底から変わってきています。かつては武器だった高度なコードを書く技術はAIで代替されるようになりました。
これから本当に必要とされるのは「コードをどう書くか」に執着する人ではなく、現場に入り込んで、課題を見つけて、それをAIで解いて実装できる人なんです。
現場とAIを掛け合わせる。これを一次産業でここまでやっている会社は、日本ではうちくらいだと思っています。

必要なのは「現場に入り込む力」と「本質を見抜く力」
ーーどんな人がFDEになれるのでしょう。修士・博士の方々にも、強く期待していると伺いました。
これからファームノートで求める人、そして成長できる人は、データや現場に本気で興味を持てる人です。現実を見る力、現実を見たいという意欲。これがすごく重要になる。
そこにAIを使いこなす力が加わると、現場の問題をその場で解決できる。今まではエンジニアに頼まなきゃできなかったことが、自分でAIに頼んで作れてしまう。
そういう人が、これから一番世の中に必要とされるし、給料も一番上がっていくと思います。
ーー入社の時点でAIに詳しい必要は?
入社の時点でAIに詳しい必要はありません。そこを基準に採用をすることはありません。
ただ、勘違いしてほしくないのは、FDEの”E”はエンジニアリングだということ。AIが実装の多くを代替してくれるとはいえ、「そもそもシステムとは何か」「業務プロセスをどう変えていくのか」を考える、かなり高度な視点は欠かせません。
ここを学ぶ姿勢がない人は、正直、FDEにはなれない。
逆に言えば、その姿勢さえあれば、入り口の知識は後からで大丈夫です。世の中にはAIの断片的な情報が溢れていますが、大事なのは、その本質を捉えること。
本質さえ見抜ければ、どんな時代の変化にも対応できる。だからうちは、それを学べる環境を本気で整えています。
現場に入り込む中で「システムとは何か」から実践で学べるようにする——現場への興味と、本質を見抜こうとする意欲さえあれば、あとはこっちで伸ばせます。
すでに、FDEはいる。土壌は、これから本気で整える
ーー育成の仕組みは、もう整っているんですか?
ここは正直に言います。「教室で手取り足取り教える、完成した座学のプログラムがあります」とは言いません。なぜなら、FDEに必要なのは現場での実践だからです。
実際、制度が完成しきる前の今この瞬間にも、現場に入り込んでAIを使い倒すことで、すでに実在のFDEが生まれ、本物の成果を出しています。
ただし、育成は、これから本気で整えていきます。全社で使うAIの技術スタックを統一して底上げをするし、意欲さえあれば、専門チームが徹底的にサポートする体制も作っています。やり方は「現場の課題をAIで解きながら学ぶ」というスタイルです。
我々は口だけじゃないんです。だからこの連載では、これから実在のメンバーを紹介していきます。彼らを見れば、「ああ、本当にいるんだ」と分かってもらえると思います。
ーー最後に。どんな人と働きたいですか。
現実を見たい人。現場に入り込むことを、面白がれる人。エンジニア職かどうかは、本当に関係ない。
むしろ、現場に入り込むことを面白がれる人が、AIを手にして、目の前の問題をどんどん解決していく。そういう景色を、一緒に作りたいです。
編集後記
取材を通して何度も立ち返ったのは、「人の可能性を最大化する」という言葉でした。そして、それと同じくらい印象に残ったのが、「今はAIに詳しくなくていい」という言葉です。
採用の現場では、「自分は文系だから」「エンジニアじゃないから」と、自分の可能性に線を引いてしまう方に、たくさん出会います。
でも小林の話は、その線を静かに引き直すものでした。深く探究してきた力に、AIという武器が加わる。その掛け算の主役は、エンジニアとは限らない。
「育成の仕組みはこれから」と正直に語る一方で、「でも、もうFDEはいる」と言い切る。その等身大の手触りこそ、いちばん信頼できる強さだと感じました。次回からは、その”実在するFDE”を紹介していきます。