2019
03.25

[1期生対談]
体験!独立ラボTALK

Voice独立ラボ運営

[1期生対談]<br />体験!独立ラボTALK

(写真左)
北海道大学 大学院総合化学院  高分子化学研究室
物質科学リーディングプログラム1期生
吉田 康平 さん

[紹介ページ]

(写真右)
北海道大学 大学院工学院 量子理工学部門 プラズマ材料工学研究室
物質科学リーディングプログラム1期生
榊 祥太 さん

[紹介ページ]

※所属・学年等は2019年3月時点のものです。

2019年3月で各大学院博士後期課程と同時に本リーディングプログラムを修了した1期生の吉田さんと榊さん。QE2で「独立ラボ運営」を選択した二人に、詳しい内容やその醍醐味を聞きました。

――はじめにリーディングプログラムを受講した動機とご自分の専門研究についてご紹介ください。


修士1年のとき、博士後期課程に行くか就職か迷っていたところに先生からリーディングのことを聞いて、関心を持ちました。
一番気になったフレーズは「産業界でも活躍できるリーダーを育成する」というところ。もともと民間志望でしたし、ここなら新しい領域のことも学べると思い、応募しました。

吉田
僕もまったく同じで、先生から聞いて「これに受かったら博士後期課程に進もう」という思いで応募しました。語学研修や海外インターンシップなど海外経験を積めるところにも魅力を感じました。


僕の専門研究は、レーザーを使ったナノ粒子加工です。QE1のとき、受講生は「数理連携」か「異分野融合」のどちらかを選択するんですが、僕は「数理連携」を選び、自分の研究に数式などの数学的手法を取り入れて新しい理論モデルを組み立てるほうへ進みました。

吉田
僕の専門は、高分子材料の合成です。QE1以前の「異分野ラボビジット」でX線を使って金属触媒の構造を解析する朝倉清高先生の研究室に行ったことが刺激となり、QE1では「異分野融合」を選択しました。

※QE(Qualifying Examination)=博士後期(修士)課程2年次の夏(QE1)と博士後期課程 2年次の冬(QE2)に行われる口頭試問。

外部の測定機関を使うチャレンジから学んだこと

――QE2でお二人が選んだ「独立ラボ運営」は専門の博士研究とは別の新たな研究テーマに取り組み、スケジュール管理や150万円という高額な研究費の使い道まで、すべて本人に采配が任されるという非常にチャレンジングなプログラムです。お二人が挑んだテーマとは?


僕がやろうとしていたことは、数理連携で得た理論モデルのアイデアをもとに、レーザーを使った加熱法によって従来にない短時間で材料組織が加工される、そのメカニズムごと明らかにするというものでした。

ポイントは、外部機関である高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光科学研究施設で測定を行うこと。吉田君もKEKを使う研究だったよね。

手つかずの研究テーマを探す力は
企業でも役に立つ。
(吉田)

吉田
そう、二人とも目的も使用頻度も違ったけど、KEKにお世話になったね。僕の場合、合成した高分子が固体状態でどのように並んでいるかを解析するためにKEKに4回行った。

自分は既存の測定装置を使ったからスムーズに進んだけど、榊君の研究は測定法自体が新しい取り組みだから、既存の装置をどう組み合わせるか、KEK側との事前打ち合わせが大変だったんじゃない?


確かに測定も一度だけの申請だったから、チャンスは一度きり。KEKでの測定前にさらに外部の機関で予備実験をしたり、どんな実験プランを提案するかに頭を使ったな。

全く新しいことに挑戦したので、今振り返ると反省点もあった。「うまくいくんじゃないか」という希望的観測に頼らずに、先行研究をしている人に詳しい実験手法を問い合わせたり、もっと厳密に実験の条件設定をリサーチしてKEK側ともすり合わせたり、できることはまだまだあった…と後になってからわかった(笑)。

吉田
それ、すごくよくわかる。外部の機関を使うときは自分の研究のどこがポイントなのか、相手にしっかりと理解してもらう努力が必要だよね。

測定の結果を言うと、僕の研究テーマはこの分野で道筋が見えそうなところまでメドがついたので、あとは研究室の後輩たちが引継いでくれそうです。


僕は予備実験で新しい知見が得られたので、その結果を論文にまとめます。

 

一から研究を立ち上げる企画力と自主性を獲得

――研究費の使い道は?


KEKに行く旅費や測定に必要な試料や消耗品の購入、フランスの国際学会に参加し、国内の関連学会に行くためにも使いました。あと、論文の英文校正にも。

吉田
僕もKEKや学会関連と必要な装置や試料の購入に使っています。英文校正は思いきって高額のサービスに出したら、誤字脱字だけでなく論文の構成を考えたきめ細やかな指摘や修正が戻ってきて、論文の質そのものがブラッシュアップされることを、身を以て知ることができました。

こういうことができたのも、やはり潤沢な研究費をいただけたから。研究費をどう計画的に使っていくかには終始神経を使いました。

新しい領域を学べば、
自分の専門研究にも深みが出る。 (榊)


専門研究との両立で時間的にも体力的にもハードなときはあったけど、でもやっぱり、自分で研究テーマを一から考えることができる独立ラボは楽しかったよね。
一連のプロジェクトを通じて、企画力がついたと思う。

吉田
僕は主体的に取り組む姿勢かな。これから企業に入ってもきっと、今までやったことがない分野の研究やプロジェクトに携わるときに「どこまで先行研究がされていて、どこがされていないか」、未開拓の分野を自主的に探っていく力は必要とされるはず。
そこを一足先に独立ラボで体験できたことは、大きかったと思う。


僕も反省点を含めて、リサーチの深さが結果に直結することがわかって、とてもいい勉強になった。外部機関の方々との協同作業も、自分一人で専門研究だけに没頭していては体験できなかったこと。

それになにより、独立ラボ運営を通して常に新しいことを考えたり、専門外の分野の論文を読むのが本当に楽しかった。
専門外のことを学ぶと自分の専門分野にも深みが出る。これからQE2を受ける皆さんにも、まずは独立ラボに行ったらどんなことができそうか、そこから考えてみてほしいと思います。

吉田
企業やアカデミックを問わず、僕たち研究職に携わる人間が今後、研究費を獲得するためにさまざまな努力が求められることを考えると、受講生にめったにない経験の機会を提供してくれようとしているリーディングの「独立ラボ運営」を見過ごすのは、「もったいない」の一言。
チャレンジングな研究内容だと思っても、まずは挑戦してみることをおすすめします。

――本日は貴重な体験談をありがとうございました。

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