気候変動対策を始めとする環境政策や先端科学技術をめぐる市民の参加や対話をテーマとした公開授業が、9月9日に行われました。北海道大学大学院教育推進機構オープンエデュケーションセンター科学技術コミュニケーション研究部門(CoSTEP)の講義を拡大し、同大理学研究院及び同大理学院科学技術コミュニケーション研究室との共同で実施しました。
気候市民会議の最新動向や、国内への導入の取り組みについて
公開授業では、高等教育推進機構の三上直之准教授※1が、「ミニ・パブリックスと参加・熟議のデザイン」と題して講義。科学技術コミュニケーションを実践するための「デザイン」の一つの例として、科学技術への市民参加の方法として広く用いられてきた無作為選出型の市民会議(ミニ・パブリックス)について解説しました。
※1:担当大学院は理学院自然史科学専攻科学コミュニケーション講座(開催当時)。現在は名古屋大学大学院環境学研究科教授/専門は科学技術社会論・環境社会学
ミニ・パブリックスは、社会の縮図を作るようにくじ引きで選ばれた十数人〜数百人程度の市民参加者が、テーマについて専門家からバランスの取れた情報提供を受けた上で熟議し、政策提言などをまとめる方法です。北海道でも、2006〜07年に道がCoSTEPなどと協力して遺伝子組換え作物の栽培について開催した「コンセンサス会議」や、2011年にBSE(牛海綿状脳症)対策について、CoSTEPなどが札幌市と北海道新聞社の協力で行った「討論型世論調査」といった実施例があります。近年、このミニ・パブリックスの方法を使って気候変動対策を一般の人びとが議論する「気候市民会議」が、欧州の国々や自治体などで相次いで開かれるようになっています。講義では気候市民会議の最新動向や、三上准教授らによる国内への導入の取り組みについても紹介されました。
ミニ・パブリックスの活用と民主主義のあり方について議論を展開
講義後は、科学コミュニケーターの大澤康太郎氏(北大理学部地球惑星科学科卒業)や、東京大学の江守正多教授※2、株式会社スペースタイム代表取締役の中村景子氏、大阪大学の八木絵香教授※3が加わって、ディスカッションが行われました。参加者の質問やコメントも受けつつ、対話の場を企画運営するファシリテーターに求められる資質や、ミニ・パブリックスの活用と民主主義のあり方などをめぐって活発に議論が展開されました。
※2:東京大学未来ビジョン研究センター/専門は気候科学
※3:大阪大学COデザインセンター/専門は科学技術社会論