2023年9月22日(金)、2023年度北海道大学スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム(以下、SMatS)第4期生と5期生の採用式が理学部本館大会議室にて執り行われました。このプログラムは、広義の物質科学分野を専門とする大学院生に対して、専門分野の研究にとどまらず、スマート物質科学力ならびに社会実装実現力を養成するものです。武次徹也コーディネーターが7名のプログラム生に認定証を授与しました。
武次徹也コーディネーターの挨拶
SMatSへの採用、おめでとうございます。プログラム担当教員を代表し、心よりお祝い申し上げます。
この機会に「スマート物質科学プログラム」が目指しているところについて説明したいと思います。現在、サイエンスはますます細分化されていますが、その中で数学は共通した基盤となる学問です。今から10年前の2013年、私たちは5年一貫の大学院プログラムとして「物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(ALP)」を立ち上げました。ALPでは物質科学分野に数理科学を導入することで異分野を俯瞰的に観る発想力の養成を図りました。また、近年では計算機が発展して、物質の性質や化学反応をコンピューターで調べる計算化学という分野が台頭しています。さらに最近では、コンピューターに格納されたビッグデータを活用するデータ科学が目覚ましい発展を遂げ、サイエンスのあらゆる分野に導入されてきました。
2018年、私たちは計算科学とデータ科学を実験科学と融合させた新たな学問分野として化学反応創成学を提唱し、その研究を推進する研究所として化学反応創成研究拠点(ICReDD)を立ち上げました。つまり「スマート物質科学プログラム」は、冒頭で紹介したALPおよびICReDDが深く連携しながら、計算科学、数理科学、データ科学を融合して従来のTrial & Errorによる実験のみの研究⼿法から脱却し、物質科学研究のスピードを加速してイノベーションを引き起こすことのできる「スマート物質科学力」を⾝に付けた⼈材を育成するための教育プログラムです。
昨年度まで、このプログラムは博士後期課程の学生を対象としていましたが、今年度から対象を修士課程に拡張しました。そこで選抜されたみなさんが、この会場にいるわけです。ですから、修士1年生からこのプログラムに取り組むのはみなさんが初めてです。長くコロナで対面の議論が難しい期間が続きましたが、最近、オンサイトで、対面での国際会議、あるいは海外渡航も可能になってきました。そういう生きた議論の場で多いに学んでください。そして様々な分野の人と交流することを心がけてください。みなさんの活躍を期待しております。
5期プログラム生の感想を一部、紹介します
杉本采音さん(総合化学院・総合化学専攻/構造化学研究室)は「私の研究室では計算化学はあまり活用されてないので、SMatSで学んで、もっと自分の研究力の幅を広げて、高い専門性を身につけたいと思います。」津江大雅さん(総合化学院・総合化学専攻/有機化学第一研究室)は「研究室だけに所属していると、研究力は鍛えられても、トランスファラブルスキルとか、人的ネットワーク形成、国際的発信力を身につける機会は少ないと思います。SMatSを活かして、こういった三つのスキルも身につけた上で将来、自身の研究活動を発展させて社会に貢献できるようになりたいです。」と期待の言葉を寄せてくれました。採用されたみなさん、おめでとうございます。