2024年3月12日(火)、2023年度北海道大学スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム(以下、SMatS)の第1期生(博士後期課程3年次9名)の修了式がオープンイノベーションハブ エンレイソウ大一会議室にて執り行われました。このプログラムは、広義の物質科学分野を専門とする大学院生に対して、専門分野の研究にとどまることなく、スマート物質科学力並びに社会実装実現力を養成するものです。
修了証書授与のあと、修了した9名がこれまでの活動を振り返って挨拶を述べ、会場から大きな拍手が送られました。続いて、武次徹也プログラムコーディネーター(理学研究院教授)が挨拶を述べ、1期生にエールを送りました。
武次徹也プログラムコーディネーターの挨拶
皆さんに「スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム」の修了証をお渡しすることができ、大変嬉しく思っております。SMatS1期生、最初の修了生ですので、運営する我々にとっても、感慨深いものがあります。担当教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。
皆さんは、自身の専門課程の修了要件を満たして学位を取得されると同時に、SmatS の修了証も授与されました。すなわち、専門分野での博士号を認められただけではなく、物質科学研究を、より効率的に、俯瞰的視点から進めることのできる、数理科学、計算科学、データ科学の実践力を磨くカリキュラムを学び、修了要件をクリアされました。昨今の時代状況を鑑みますと、学位取得にあたり、スマート物質科学というアプローチに触れ、それを意識したことは、今後大きな意味を持ってくることは確かです。SMatSの修了証を得たことに誇りをもって、これからの道を邁進して頂ければと思います。
ここ数年は、コロナ禍の制約があり、プログラム生同士が交流する機会をとることが難しかったと思います。しかし、SMatS を始めるタイミングで、経済支援を担うDXおよびアンビシャスフェローシップ支援事業が始まりました。さらに、日本オラクル、富良野市、そして北海道大学の産官学が連携して社会課題に挑戦する DX提案実習の取り組みがスタートしたことは幸運なことでした。DXフェローシップ事業にとっても、最初の年に皆さんが北大を代表する大学院生とし大きな成果を上げてくれたことは非常に意義のあることだったはずです。皆さんの頑張りによって、この産官学連携の試みは高い評価を得て、定着し、北大の DX 事業の目玉の一つとして続いております。
さて、先日、理学研究院で「スマート物質科学人材育成コンソーシアム」の総会が開催されました。「スマート物質科学」の名称が入っていますが、SMatS のコンソーシアムではなく、「理学分野において活躍可能な実践力・デザイン力のある高度データ関連人材を育成すること」「高度データ活用に関する最先端研究の社会実装、応用、実用化の推進を支援すること」を目的としています。理学系大学院の人材育成に協力いただいている企業とのコンソーシアムとして、令和 4 年度に理学研究院に設置されました。先の総会で、日本オラクルの方から、皆さんの富良野市での取り組みが紹介され、その成果を実用化しようとしていることが紹介され、理学研究院長をはじめ参加者一同感銘を受けました。私も大変誇らしく感じました。
今日、皆さんは輝かしい門出に立っています。企業、アカデミア、または他の分野でキャリアを積む‘大きな一歩です。皆さんが本プログラムで身に着けた、スマート物質科学力、社会実装実現力が、これからの道のりを照らす灯火となることを心から願っています。未来に向けて、大胆不敵に、そして情熱を持って歩んでください。
1期生 挨拶
川口 貴大さん(工学院 材料科学専攻)
SMatSを修了し、安堵しております。私はこれまで実験系の研究をしており、SMatSが掲げる数理科学やデータ科学、計算科学といった分野に疎かったからです。しかし、それらの領域がどんなものなのかイメージできるようになり、私にとっての成長の一歩だと感じています。今後は自身の分野とSMatSで学んだ領域を組み合わせてさらに面白い研究ができればと思います。
川向 ほの香さん(総合化学院 総合化学専攻)
SMatSの活動を通して、研究で養う能力をアカデミック内だけではなく社会で生かすことを考えるきっかけになりました。また、博士課程の同期が少ない中で、他の専攻の同期と関わる機会を得られたことは貴重な経験でした。3年間ありがとうございました。
久語 佑希さん(総合化学院 総合化学専攻)
SMatSの活動の中で印象に残っているのは、富良野市とオラクルの皆様と取り組んだワークショップです。データ科学という取り組んだことのない分野にプログラム生のみんなと協力して知恵を絞りあいながら取り組んだことはとても良い思い出です。また、研究においても、プログラムを通してこれまで取り組んでこなかった計算化学にトライしました。4月から民間企業で働きますが、これからも新しいことにトライしていけるように頑張ります。
坂口 周弥さん(総合化学院 総合化学専攻)
無事にSMatSを修了することができ嬉しく思います。私たちがSMatS一期生になってから3年が経とうとしていますが、データ科学や数理科学の重要性は一層増しています。そんな中、このプログラムでこれらの領域について学ぶ機会を得ることができました。今後は本プログラムで得られたスマート物質科学力と社会実装実現力を活かしたいと思います。
棚橋 慧太さん(工学院 材料科学専攻)
SMatSの創設、そして我々のためにご尽力いただいた先生に感謝申し上げます。ICTの普及、コロナ禍、そしてコストの見直しという環境的観点から、計算科学の重要性がますます高まっていることを実感しました。実験系の研究を行ってきた私にとって、SMatSは計算科学を学ぶ第一歩となり、その導入のハードルを下げる非常に役立つものとなりました。また、多様な分野で活躍する同期と共に活動でき、よい刺激となりました。この経験を活かし、これからの活動を展開してまいります。
椿 啓司さん(情報科学院 情報科学専攻)
SMatSでは自身の専攻だけでは学びにくい分野に触れることができ、研究への視野が広がったように感じます。特に理論計算に関する物理化学の知識や、実験結果に対してメカニズムを裏付けるための数値シミュレーションの手法は大いに役立ちました。本プログラムを修了できたことを嬉しく思います。ありがとうございました。
董 凱悦さん(工学院 量子理工学専攻)
I’m Dong, a student in the Division of quantum science and engineering of Graduate school of Engineering. I’m also part of the Institute for Catalysis(ICAT). SMatS program broadened my academic horizons across various disciplines like computer science, life science, material science and fundamental mathematic research. In addition, I participated in a lot of international conferences, communication and cooperation improved my communication skills a lot, making me realize the role of my current research in a wider horizon. I want to express my sincere gratitude to the professors in the SMatS program for their support, and to the program members for the kindness and effective communications.
藤江 克徳さん(理学院 数学専攻)
SMatSを受講する前までは大学院で数学だけを研究していました。ですから、受講を始めて様々な経験をすることができ、勉強になりました。どうもありがとうございました。
和田 諒さん(総合化学院 総合化学専攻)
計算化学という分野に身を置き、以前から興味関心のあったデータ科学や数理科学をSMatSの活動を通じて学び得たことは大変意義深いものでした。この経験が、今後の研究の幅を広げるための第一歩になったと考えています。また、コロナ禍の影響で機会が限られていましたが、優秀な方々とこのプログラムを通して交流できたことも今後の研究生活を支える重要な経験の一部であると考えています。