2026年10月9日、大学院共通授業科目「半導体の深層を理解する2026」は小森隆行氏(株式会社SUMCO広報・IR 室長)を講師に招き、「現代社会はシリコンウェーハの上に成り立っている ― 半導体市場と技術の現状 ―」と題して、行われました。その様子を紹介します。
私たちが毎日手にするスマートフォン。その小さな端末の中には、世界中の技術と、それを支える人々の仕事が詰まっています。SUMCOの小森さんの授業は、普段は目にすることのないシリコンウェーハを入口に、半導体産業の広がりと、そこで働く面白さに触れる時間となりました。
小森さんにとって、シリコンウェーハは「産業全体を見渡せる展望台」です。日頃から電子機器を分解し、どんな半導体が使われているのかを確かめているというお話には、尽きない好奇心が感じられました。演算、記憶、通信、撮影。端末のさまざまな機能をたどると、その先に、材料から設計、製造までつながる大きな世界が見えてきます。

一方、その世界を支えるのは、地道なものづくりの積み重ねです。結晶を育て、表面を極限まで平らにし、目に見えないほど小さな欠陥を探す。装置をそろえるだけでは届かない精度を、長年の経験と工夫が生み出しています。最先端の技術の足元に、人の知恵があることを実感するお話でした。
技術とともに、市場や経営を見渡す視点も示されました。AI向け半導体の売上が伸びても、材料の需要が同じように増えるとは限りません。また、高度な技術も、求められる機能や価格と結びついてこそ製品になります。華やかなニュースの背後にある生産量や投資判断に目を向けることで、産業の姿がより立体的に見えてきます。
SUMCOでのAI活用も、現場の生産性をどう高めるかという具体的な問いから始まっています。現場を知る人が計算科学を学び、データサイエンティストが現場を経験する。それぞれの専門が出会うところに、課題を見つけ、解決する力が育ちます。半導体の進化に伴う電力や熱の問題も、分野を越えて考える必要があります。
授業を通じて問いかけられたのは、半導体を使ってどのような社会を実現したいのか、ということでした。そして、その問いに向き合うために、学生が今持っている専門を深め、他者の知識とつなぐことの大切さが語られました。

授業の端々では、小森さんご自身のキャリア形成の過程も紹介されました。電子材料への関心から希望する部署への配属を求め、多様な仕事を経験し、事業の厳しい時期にも学びを見いだしてきた歩みです。好奇心を大切にしながら、任された仕事に向き合う姿勢も伝わってきました。これから社会で活躍する学生にとって、働くことや自身のキャリアを考えるうえでも、非常に参考になる授業でした。ありがとうございました。