2026年10月16日、大学院共通授業科目「半導体の深層を理解する2026」は釘宮敏洋氏(神戸製鋼所 理事/北大客員教授)を講師に招き、「半導体技術の変化点を捉える ― 材料・プロセスの視点から読み解く技術革新 ―」と題して、行われました。その様子を紹介します。
釘宮さんは半導体の仕事がしたいという思いで、神戸製鋼所に入社しました。しかし、思い描いた道が、そのまま続いたわけではありません。携わっていたメモリ事業から会社が撤退し、その後は液晶ディスプレイの研究に取り組みました。そこで開発に関わった酸化物半導体は、iPad Proに採用されます。今回の授業は、研究開発の厳しさと喜びの両方を経験してきた、一人の技術者の歩みから始まりました。
「半導体技術の変化点を捉える」をテーマに、授業では、技術の進化に伴って生まれる課題が紹介されました。AIの普及を背景に、半導体にはより高い性能が求められています。より小さくしたり、縦に積んだり、立体的につないだりするためには、つくり方や材料も変えていく必要があります。釘宮さんが見つめているのは、その変化の先で、今までの技術では解けなくなる問題です。そこで力を発揮するのが、神戸製鋼所が長年培ってきた、素材、加工、表面処理、接合などの技術です。半導体は遠く見える技術も、組み合わせや使いどころが変われば、新しい解決策になります。授業で紹介された事例からは、目の前の課題を掘り下げ、自分たちの強みを見つめ直すことで、事業の可能性を開いていく過程が伝わってきました。

釘宮さん自身も、研究者として歩むなかで学位やMBAを取得し、学びの幅を広げてきました。現在は、部門を越えて技術をつなぎ、新しい半導体事業を生み出そうとしています。かつて離れた半導体の世界に、今度は材料と事業づくりの立場から挑む姿には、経験を重ねたからこその思いが感じられました。

学生に向けて語られたのも、自分の専門と世の中の課題をつなぐことの大切さです。研究を深めながら、ときには視点を上げ、その技術が誰の、どんな問題を解けるのかを考えてほしいというメッセージがありました。質疑でも、変化をどう見つけるかという問いから、材料の調達やAIによる研究の変化まで、対話が広がりました。
自分の研究の先には、まだ出会っていない誰かの困りごとがあるのかもしれません。いつもの研究室に戻ったとき、自分の専門を少し違う角度から捉え直してみたくなる授業でした。ありがとうございました。