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No Data, No Life, No Maps 伊藤博之氏と和田陽一郎氏のミライ創造計画(前編)

伊藤 博之氏

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 代表取締役/NoMaps実行委員長/北海道オープンデータ推進協議会理事長/北海道情報大学客員教授

北海道大学に勤務の後、1995年7月札幌市内にてクリプトン・フューチャー・メディア株式会社を設立。世界各国に100社以上の提携先を持ち、3000万件以上のサウンドコンテンツは世界で最大級。DTMソフトウエア、音楽配信アグリゲーター、3DCG技術など、音を発想源としたサービス構築・技術開発を日々進めている。ボーカル音源ソフト「初音ミク」の生みの親としても知られている。2013年に藍綬褒章を受章。

和田 陽一郎氏

株式会社D4cアカデミー 取締役社長兼学長/株式会社データフォーシーズ 執行役員/北海道大学理学研究院客員教授/九州大学大学院システム情報科学研究院客員准教授

東京工業大学大学院にて博士号を取得後、2008年株式会社データフォーシーズ入社。以後、10年以上に渡りデータサイエンティストとして活躍、マーケティングや金融の分野を中心に、多数のプロジェクトに参画。データ解析のみならず、システム開発、データ解析チーム構築のコンサルティング等も行い、プロジェクトリーダーとして数々のプロジェクトを成功に導く。2009年には、経営科学系研究部会連合協議会の主催するデータ分析コンペティションにて優秀賞を受賞。

※プロフィールは対談を行った2019年12月当時のものです。 

GAFA Killerを育てる

和田:

世の中ってGAFAに代表されるデータを使っていますが、日本人が発生させるデータが全部GAFAに取られてしまっている現状に危機感がなさ過ぎですよ。そのデータを取り戻しに行かなきゃならないし、日本が主導権を握っていかないといけない。私が今やりたいことを一言で言えばGAFA Killerを育てて一緒にデータを奪還する!です。

北海道ってほんとに多様なデータの宝庫でしょ。取り始めたばかりで、まだ誰にも食われていない領域を海外に吸われてしまう前にやったほうがいいです。

※GAFA(ガーファ)とは、米国のGoogle、Amazon、Facebook、Appleの4社を指す用語。

伊藤:

実際に海外に吸われています。酪農系のデータのほとんどをヨーロッパ圏に吸い取られていて。最近の農協ってスマートになっていて、昔だったら牛の乳搾りって腰を屈めて手でギュ、ギュって搾っていたのですが、今は搾乳機の中に牛が自分から入って行って、牛の乳にバシッと搾乳機械が自動で装着されて、搾乳が始まります。牛もそこに入ると餌が出てくるもんだから、自発的に入るんです。搾乳が終わるとゲートが開いて出ていくっていうことを繰り返している。

そんな酪農を楽にしてくれた搾乳機はヨーロッパ製のものがほとんどです。うちの田舎の高校もそれを導入し始めて見に行ったことがありますけど、パソコンとつながっていてデータが残るらしいのですが、解析できません。クラウドにつながっていて全部オランダかどっかに行ってしまうのです。ああ、ここでも吸い取られているなって。乳だけじゃなくてデータも吸い取られている。

私は2、3年ほど前からオープンデータに関わり始めて、札幌とか北海道ってデータだらけで、農協や水産加工業者のところにデータがたくさんあります。そういったデータをどう活用していけばいいことが起きるかっていうことを知らしめるために、いくつかのデータをオープンデータとして公開しました。それを活用したシビックテック的なものが世の中に出て、それがどう市民の生活に役立つか考えています。

和田:

私はデータサイエンスっていうのをとにかく全国に展開して行きたくて、今日本でもSociety5.0とか超スマート社会みたいな話があるけれど、それって東京のお金持ちの会社がただただ発展していくっていうシナリオであって、中長期のことを考えると結局東京一強になる予想がもう見えています。

本当の超スマート社会みたいなのを考えたら、データサイエンスの大きな対象のひとつは「社会」なわけで、日本の中で大阪もしかり、名古屋もしかりだけど、札幌とか福岡とかそういう地方都市でこそデータサイエンスが使われなきゃ本当の意味で超スマート社会になんてなりません。

超スマート社会に向かって行くのなら、データを扱える我々なんてすごく儲かるわけで、もっとデータサイエンスをやりたいって考えたのに、実際は、札幌にまだデータサイエンティストもいないし、無理でしょとなってしまった。だったら、データサイエンティストを育てる教育ビジネスから始めてようかと考えて、その調査のため2019年にNoMapsに来ました。果たしてここにビジネスがあるのか、やってみないとわからないから、まずはスクールを開いてみようとした時に出会ったのが伊藤社長だったんです。

伊藤:

そう、それでうちの会議室使ってやればいいじゃん、別にお金とかいらないから。その代わりうちのエンジニアとか受けさせてってなったんだよね。なんか軽いノリっていうか。

和田:

そう、軽いノリで2020年の1月からデータサイエンティスト育成の教室を開くことになりました。続けさせてもらってわかったことは、札幌にまだデータサイエンスのビジネスがないから受けに来る人がいないんですよね。札幌で学んだ技術を別の場所で生かせばいいし、ビジネスが無いならつくってしまおうっていう発想がないんでしょうね。やっぱり札幌で少しでもデータ分析の仕事をつくってみせないとダメなのでしょう。

そこで、札幌、北海道の企業からデータをお預かりして分析するサービスを実践授業と交えてやっていこうというのを、伊藤社長と考えているそういう状況になったんです。

伊藤:

僕の方はデータサイエンティストとは別ですけど、オープンデータの活用アイデアを競うハッカソンみたいなことをやるために、いろんな自治体さんに行って、それが結構うまくはまったので、じゃあオープンデータの枠組みを作っちゃうとやりやすいかなと考えてオープンデータ推進協会を始めました。

そして、オープンデータを扱う中で最初に取り組んだのは「教育」です。ハッカソンでIT人材を育成する。データをビジュアル化してみせることでデザインの教育もできる。教育にすごいメリットがありますと説明しやすかった。もっと広げてデータサイエンス分野は、企業も自治体もどう役立てていいのかわからないというので、だったら人材を育成しましょうって説明しつつ、オープンデータの提供をしてもらう流れを作り今に至っています。

オープンデータとかデータサイエンスってすごく結びつきが強いですよね。データは公開されないと見えないし、公開されたとしても分析できるエンジニアの工夫がないと、価値が生まれないし、データを加工できなきゃダメだし、この2つはすごく親和性が高い。

和田:

確かにそうですよね。データっていうものをまず溜めて、それを加工して価値を作っていくという世界的なビジネスがもう成立していて、世の中の状況がその方向に向かっているときに、実は北海道はデータがいっぱい生まれているのに、活用が進んでないし、そのデータも溜めてもいないっていうのが現状であって、そこを何とかしていかなきゃいけないとなったんですよね。

Data is new oil

和田:

Society5.0とか超スマート社会に向かっていこう、オープンデータを利用できるようにしようってときに、日本で生まれたデータを日本で確保していない。食料自給率っていうけど、データ自給率が低くて、なんでもGAFAにアメリカに吸い取られているわけです。ヨーロッパだったらGDPRみたいのがあって、絶対データを外に吸い取られないように守っているし、中国だったらGreat gatewayみたいのがあって、Firewallでバシッと絶対Googleなんて寄せ付けないでデータを守っている。データを守って、バイドゥとかアリババとか自国企業を育てて、自国の頭脳を育てています。

伊藤:

保護貿易っていうか産業保護していますよね。韓国も多分そう。

和田:

韓国もそうですね。韓国でGoogleは多分使えますけど決済システムは割と厳しくて、Amazonは入れなかったんですよ。

伊藤:

そして、同じようなのを自国で作っちゃったりとか。

和田:

Gmarketっていうのが韓国だと普及していて、韓国も自国のデータを守っているんですよね。

Data is new oilっていうことを言い出したのは2011年のダボス会議です。Data is new oil、つまりデータっていうのは新しいオイルなんだからこれを守っていかなきゃいけないんだと。石油だったら産油国は必死に資源を守るし、自分たちが生み出した石油を他に持っていかれるなんてことは絶対にしないはずなのに、データってなった瞬間にみんな持っていかれてることに気づいていないんですよね。そこはすごくまずい。

私は一緒に事業をやらせてもらう中で、北海道から生まれるデータを北海道に残して北海道でそのデータを使った産業を興したい。原油みたいなデータがあるだけで、加工して価値を見出すにためには、北海道にやっぱり頭脳が必要なのです。

伊藤:

実際、研究対象もそこです。人材づくりを促進して、スタートアップを活発化して、その循環に地元のデータをうまく活用して、産業化していくことを考える。

和田:

そこですよね。私もそこを考えています。

ムーブメントを先読みする

伊藤:

僕が北大で30年くらい前に職員をしていた時、精密機器学第一講座というところでCADというコンピュータの設計支援システムに携わっていました。実際に動かすための開発をしていた研究室で、80年代の真ん中以降に人工知能を始めました。人工知能の第2次ブームでちょうどニューラルネットワークみたいのが出てきた時代で、うちの先生もそういった本を書いていたりして、卒業生はAIの方面を勉強して大学や企業に就職していました。

AIの第3次ブームが来たときに、そういう技術がわかる人はあそこの大学のあの先生のところだろうと思って訪ねると、その先生たちはもうAIから撤退していました。下地はあるのだからもう一回AIをやったらいいのにと思って、5年くらい前にそういった先生方の研究と、自治体のデータを組み合わせて何かやりましょうよっていうのを、公立はこだて未来大学の松原先生や札幌市、北海道などに提案書をつくって話に行きましたが、その当時はまだ人工知能って言ってもみんなピンとこなかったようで……

和田:

あー、ギリギリピンとこないくらいですよね。

伊藤:

その一年後くらいにブームが来る感じで、僕が提案したときは全然でした。何を言っているんだ、おかしいことを言い始めたみたいなことを言われました。農業を高度化したいし、街づくりを高度化したい、だけどどうやったらいいかわからない。逆にAIのエンジニアや研究者は、研究したいけれどもデータがなくて何もできないって言う。そこの凸凹をつなぎ合わせたら何かできるでしょう。それで産業化して、街の効率化みたいなことに貢献できればいいと思って、まずはオープンデータ活用という話になったんです。

和田:

そうですね。それをやらないと日本は勝ち目がないと思うんですよね。

伊藤:

完全に負けてますからね。

和田:

ボロッボロに負けている時に、思いっきりデータまで取られていたらもう勝つ手段がない。東京はもう完全にアメリカナイズというか、侵食を受けすぎちゃっていて、あそこでスタートアップが生まれても世界で戦える気がしません。

多分いまポテンシャルがあるのは、そういう侵食を受けていない札幌だったり、九州だったり。地方都市、東京の次くらいにいる都市が、むしろポテンシャルがあると思っています。実際大企業と呼ばれている企業って別に東京出身ばかりじゃなくて、北海道だったらニトリだったり、クリプトンみたいに世界に羽ばたく初音ミクとか飛ばしているわけじゃないですか。そんな企業が地方にはいっぱいあるわけで、東京で別に戦わなくたって、実際に戦える材料がある地域から直接世界に挑んでいけばいい。もう東京を目指さなくていい。

伊藤:

東京とか大阪に認めてもらうより、直接アメリカでも中国でも契約すればいい。

和田:

私はデータ分析の専門家なので、戦えるだけのデータが生まれてくるところで解析して新しいサービスを作るのが仕事です。北海道発、札幌発で世界と戦うスタートアップをバンバンつくる状況を、あと5年10年のうちに生み出さないと多分もう戦えなくなるという危機感があります。

伊藤:

もうギリギリダメかもしれない。

和田:

もうギリギリダメかもしれないくらいの、それくらいの危機感です。

北海道のポテンシャルと戦略を

和田:

日本の経済の中で奪い合いをするんだったら、北海道の人に東京へ来てもらうことになるけど、そうではなくて、今戦場って北海道とか博多だと思います。未知のものを使って、未知のサービスを生み出すポテンシャルがあるのに、頭脳が確保できていません。北海道の大学が育てた貴重な頭脳を、もうすでにビジネス化して食うや食われるかみたいな状況になっている東京に持っていくのではなく、この北海道にキープしてここで産業を作って、ここから世界と戦う。それが北海道のためのみならず、日本のためになると思っています。

伊藤:

世界のためにもなる。

和田:

北海道の企業をアシストするには、まずデータ分析者の教育っていうところから僕らもやるし、僕も勉強しながら北海道初の何かをつくっていきたい。そうやって北海道モデルをつくって日本全国がそうなってくれたらいいと思っています。変な話、ここが日本としての分岐点だと思っていて、北海道か福岡がブレイクしなかったら負けですよ。

僕も子どもがいる身なので、自分の子どものために明るい未来を残したいし、日本という国は可能性のある国であってほしい。僕の子どもが成人になった時に、希望を持って生きていてほしい。ボロボロに負けた国では僕の子どもが楽しい生活を送れないと思うんですよね。だから、先祖代々受け継いできた日本という国に希望を残していくことは大人である僕らの責任だと思っているし、それが今できるのは北海道と福岡だと思っています。東京、大阪、名古屋、京都、神戸と並んで、都市圏別のGDPの上位に札幌と福岡が入っているからです。ここが成功しないんだったらもう他では成功しないと思っているくらいです。そこが伊藤さんのビジョンと共鳴していますよね。

伊藤:

北海道ってしがらみに縛られない人が多いせいか、目的を共有できればすんなりと一致団結できる。そこは1つ大きな価値だと思います。農業系の団体とか観光系の団体とか話をちゃんと聞いてくれるし、乗ってもくれると思います。

ただ、自分たちで経済を生み出す経験が少なくて、ビジネスの話にピンとこないみたいで、こういうことするとこういうビジネスになって儲かりますよと言っても、そっちにアンテナが立たず、補助金とどっちがいいだろうみたいな、補助金をもらうことに毒されちゃっている。

和田:

私も北海道でビジネスをさせてもらおうと、さっき言ったようなビジョンを掲げて2019年のNoMapsでも発表しましたが、北海道の人たちはおっしゃる通りチームワーキングとか仲間をちゃんとつくってやろうというところで足並みを揃えるし、ジェントルだし優しい人が多くて、開拓者精神というか寒くて不毛だった大地と戦わないといけなかった精神が根付いているのか、すごくいい文化を持っている一方、ビジネスの力が弱いところがあるなあと思いました。

自分たちで稼いで自分たちで社会を回さなかったら、その次のステップなんかこないし、永続的な社会につながらないぞと言いたい。助成金もらって回るのは解決にはなっていなくて、税金を使っているだけで、本当は自分たちで実施しないといけない時にビジネス化することに対してキョトンとされることが多いなって思っています。

伊藤:

なんか相手に言われた条件でそのまま、ああそれでいいですってなって、もうちょっとこういう風にしたらもう少しお金とれますよと言っても、いやなんか悪いしって遠慮しちゃうっていうか、優しいところがあって、そこが北海道の良さでもあるんですけど。

大学生、大学院生のうちに気付いてほしいこと

和田:

もう少しだけ、みんな自分に得なことを考えた方がいいと思うって話をNoMapsでも言いました。そうすることが動機になると思うんです。仲良くやることだけを目的にしては世界で戦えない。私はリクルーティングとかで全国の大学をまわりますが、地方の学生ってまさにその文化をそのまま引き継いでいる傾向があって、ビジネスに関してキョトンとしていて、もったいねーなって思っています。

ちゃんとその社会問題を見るべきだし、本当にとがっていれば、北大のドクター(Ph.D.)とかが大手の会社見て東京行きまーすじゃなくて、北海道にいながら世界と戦ってほしい。大企業の歯車になって戦おうなんて、まともな教育受けた人間がやることじゃない(笑)。北海道で世界と戦う何かを始められなかったら、子どもたちに何残すの?っていうのが私自身の自然な感覚です。でも、みんなのんびりしていて、そういうビジョンが見えていない。

伊藤:

クラーク像の前で写真撮って、そこが一つの観光スポットになっていますけど、そういうスピリッツが最初のころにはあったはずです。でも、今は野心みたいなものがなくなって、とりあえずどっかいいところに就職できればいいか、みたいな。そこには、サイエンスだけじゃダメで、例えて言えば、どれだけ包丁をきれいに使えるかじゃなくて、どういう料理を作ってどうやってそれで人を喜ばせてお金をいただけるかというような価値づけを考える視点が必要で、ただ器用だねっていうことで終わらせてはいけない。

和田:

そうですね、それは確かに。大学で研究しているだけだとそうなりがちです。私はデータサイエンスの授業をずっとやっていますが、データサイエンスって社会実装を目指すわけですが、最初にデータサイエンスの問題があるわけじゃなくて、まず問題があるわけです。問題といっても世の中って別に問題が問題としてあるわけじゃなくて、今のas isがあって、それに対して誰かがこれは問題だって思うところから始まるわけです。

例えばGoogleに当たり前にデータを取られているっていう現状as isを、別にGoogle便利だからいいじゃんっていうところを問題だと認識して、本当は理想to beはこうだよねっていう差が実は問題であり、そこに対して課題を設定してから実はサイエンスの登場なんです。この課題を解くためにデータサイエンスを使おうよと言いたい。大学では問題を誰かが提起してくれて、それに対して課題もゴールも決めてくれました。じゃあそこをどうやったらうまくできますかって。これはただ包丁をうまく使うだけの訓練でしかないと学生に分かってほしい。

伊藤:

問題を解くことはできても、問題を作る方が難しい。課題を設定できる能力はAIにはできない部分だし。

和田:

そうですね、できないですね。

それは人間らしい仕事だし、そういうことこそ本来大学院で研究する意義だし、一人ひとりの分野では北大の学生もやっているのだと思いますが、それが結局社会に出てこない。社会の中での問題設定をするっていう方向に興味を持ってもらわないと。

伊藤:

実践なり現場でどれだけ揉まれるかっていうか、汗かいてしごかれて頭を掻きむしってそれで出てくるものが自分の実力になっていきます。今それがなくて学問は学問の枠の中で完結させてしまっている。そこからビジネスに持っていく経験が必要で、まずは課題を解決するためには課題に自分で気付かなきゃならない。課題は与えられるものじゃない。

和田:

課題に気付くってすごく大事ですよね。

(後編はこちら)

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2020.05.27

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