2021年8月11日、富良野市のスマートシティ推進支援に関するオンライン記者説明会を開催しました。発表内容はこちら(PDF)
北海道大学、富良野市と日本オラクルは、富良野市特有の産業の発展、住みよいまちづくりに向け、同市のスマートシティ推進施策の共同立案で連携し、北海道大学博士課程DX教育プログラムにおいて、オラクルのクラウドを活用したワークショップを実施し富良野市の社会課題解決を支援する取り組みを行うこととなりました。
発表者:
北 猛俊 富良野市長
石森浩一郎 北海道大学副学長/大学院理学研究院教授
本多 充 日本オラクル株式会社執行役員/公共営業統括クラウド営業本部
北海道大学では、2013年採択の博士課程教育リーディングプログラム「物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム」を基盤として、2020年には、アカデミアや産業界を問わず高度な専門性を社会の様々な分野で生かせる博士の育成を推進し、その大学院教育改革を支えるプラットフォームとなる「理工系大学院教育改革プロジェクトPh.Discover(ピーエイチディスカバー)」を発足させ、2021年開始の「スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム」につながりました。
このPh.Discoverでは日本オラクルをはじめとする複数の企業や、学生、修了生、他大学などが連携し、博士課程修了者のキャリアパスの拡大とこれからのイノベーションを支える人材の育成に取り組んでいます。富良野市は、2020年4月にスマートシティ戦略室を新設し、デジタル技術を活用した住みよいまちづくりに取り組んでおり、2020年度はオラクルのクラウド・サービスを活用し、TIS北海道株式会社と共同で、データを活用した除排雪作業の見える化および効率化を目的とした「IoT除排雪効率化実証実験」を実施しました。
今回、3つの機関が連携して実施する「博士課程DX教育プログラム:北海道富良野市のスマートシティ推進支援」プロジェクトにおいて、北海道大学はその博士課程学生が「Oracle for Research」を利用することで、セキュアに手軽にデータ分析を行える「Oracle Autonomous Data Warehouse」や「Oracle Analytics Cloud」などの「Oracle Cloud Infrastructure」のクラウド・サービスを活用し、富良野市から提示された2つの課題に対する施策の提案に取り組みます。
【記者説明会に参加された記者様から質問があった内容について一部紹介します。】
スマートシティの実現に向けて最も実現して欲しいことは何でしょうか?
北 猛俊 富良野市長:
人口減少が続き、コロナの影響で経済にも生活環境にも閉塞感が生まれてきています。それを打開したいという強い思いがあります。そこでスマートシティ戦略室を立ち上げた次第です。
DXによる新しい社会を構築していく過程において、産官学連携の中から新しい方向性が生まれてくるのではないかと期待しております。富良野市が直売している「ふらのワイン」は先ほども申し上げたように観光客の減少により、厳しい経営状況となっております。本プロジェクトにより新たな販売促進の施策が提案されることを期待しております。また富良野市は「燃やさない」「埋めない」を基本理念に市民の皆さまに協力いただき、ゴミのリサイクル率を90%まで高めて参りました。この取り組みは小学校の授業でも取り入れられ、ゴミの分別とリサイクル率は富良野市民の誇りとなっております。さらに4月に「2050年ゼロカーボンシティ」の表明を行いました。ゴミのリサイクル率90%からカーボンニュートラルの実現に向けた施策の実現を期待しております。2つのテーマともに本市にとって重要な課題です。日本オラクル様と北海道大学様とのワークショップにより、導き出される提案に対して富良野市は、スマートシティ推進を実現させたいと考えております。
博士課程DX教育プログラムに最も期待していることを教えてください。
石森浩一郎 北海道大学副学長/大学院理学研究院教授:
このプロジェクトで一番強調したいのは本学の博士課程の大学院生が参加することです。参加する8名の大学院生はITを専門としているわけではなく、4つの大学院で多様な研究をしています。つまり、DXとは異分野のテーマを専門としているわけですが、ここが大きなカギだと考えています。もしも効率的な解決を目指すならば、IT、情報科学を専門とした大学院生が参加した方がいいかもしれません。ただ、多様なバックグラウンドと考え方を持ったチームだからこその強みがあると思います。
地域の課題を解決するためには様々な角度から物事を見極める必要があります。地域の社会課題に対しては素人の大学院生です。しかし、大学院生らは、研究を通して課題発見、課題解決といったトレーニングを日常的に行っており、これは一種のジェネリックスキルだと考えております。ぜひ富良野市様固有の地域課題を解決するために、このスキルを役立てて欲しいと期待しています。それは彼ら彼女らにとって大切な経験となるでしょう。これから先、様々な問題に直面するでしょうから、研究室に閉じこもるのではなく、世の中、社会を知るという経験は教育上大切なことです。このように本学博士課程の大学院生の参加には、大きな意義があると考えております。
プロジェクトとしてユニークな点を教えてください。
本多 充 日本オラクル株式会社執行役員/公共営業統括クラウド営業本部:
ユニーク性という観点ですか…難しい質問ですね。地場の方たちの問題は、地場の方たちが解決することが基本だと思うのですが、先ほど石森副学長がおっしゃったように、大学院生や異分野の方たちも一緒に考えて、地域の方たちが自分たちにとって一番いい解決策は何かを見つけることに意義があると思います。我々は学生のみなさんにDXの可能性、データ分析、活用の方法を指導するわけですが、このワークショップの最後には北大生によるプレゼンテーションが用意されています。富良野で暮らしている方たちに対して、学生の皆さんが考えたことを伝えることになります。施策を実践していただけるように理解してもらう、つまりコミュニケーション、伝える力を養うことはこのような取り組みで大変重要ですし、貴重な機会になると考えています。
今回の記者会見を受けて、プロジェクトの概要が様々なメディアで紹介されました。ありがとうございました。