気候変動対策を始めとする環境政策や先端科学技術をめぐる市民の参加や対話をテーマとした公開授業が、9月9日に行われました。北海道大学大学院教育推進機構オープンエデュケーションセンター科学技術コミュニケーション研究部門(CoSTEP)の講義を拡大し、同大理学研究院及び同大理学院科学技術コミュニケーション研究室との共同で実施しました。
会場では「北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム」(ALP)や「北海道大学DX博士人材フェローシップ(DXフェローシップ)」の大学院生も聴講し、現場のリアルな題材から科学技術コミュニケーションを学ぶ機会となりました。
参加した大学院生の感想
生命科学院の碓井拓哉さんは、「大学院入学後、コロナ禍で久しく対面での大人数の講義を受ける機会がありませんでした。CoSTEPを受講している高校の先生など、色々な人が参加して積極的に質問をしていて熱量を感じました」と、公開授業に刺激を受けた様子でした。さらにミニ・パブリックスの話を初めて聞いて、興味が湧いたという碓井さんは、「メディアから入ってくる情報だけで判断すると誘導されやすく、表層部分だけを見て批判したり、偏った思考に陥ったりしやすい。一般市民がミニ・パブリックスで議論することで、そんな傾向を少し変えることができるのではないか」と話していました。
総合化学院の黒須大樹さんは、来年度ALPの必修科目として履修する予定の「リーディングアウトリーチ演習」に備えて、科学技術コミュニケーションについて情報収集して理解を深めたいと考え、公開授業に参加しました。「市民会議のような場を作る時に(企画運営に携わる)チームをどのように動かさなければならないのか」をイメージしながら講義を聞いたそうです。
「欧州で広がっている気候市民会議が、文化や人々の考え方の違う日本で、同じやり方をして本当にうまくいくのか、社会の縮図を作って議論すると言っても、この人数(数十人から百数十人)で足りるのか、話の上手な専門家の情報提供に参加者が引っぱられてしまうのではないか、といった疑問も持ちながら講義を聞いていました」。自らコミュニケーションの場を企画する立場になることを思い描きつつ、考えることができたようです。
公開授業は、2005年に本学に着任しCoSTEP教員も務めた三上准教授が9月末に名古屋大学大学院環境学研究科に転出するのに合わせて行われました。CoSTEP受講生や大学院生、教職員、修了生や元教員を含む学外からの一般参加者など85人が集まったほか、授業の一部はオンラインでも配信され、約40人が視聴しました。
この講義を含めたイベント一連のタイトルは「三上直之と100人の市民カイギ」。午後1時から始まった講義は午後4時30分過ぎまで続き、三上准教授と参加者一体となってこれからの民主主義のあり方や気候変動対策について関心を深める絶好の機会となりました。まさに「100人の市民カイギ」にふさわしい対話の場となりました。
参考:イベント案内(終了)のページ