北海道大学理学部生物科学科(高分子機能学)では、キャリアパス教育の一環として、2、3年生を対象にした学科イベント「DCは語る」(DC:Doctoral Course=博士課程)を定期的に開催しています。博士後期課程の学生の研究生活や進学経験を聞くことで、進路の一つとして博士後期課程進学を考えてもらうことが目的です。
生命科学院 生命科学専攻 生命融合科学コース 博士後期課程2年の武井 梓穂(たけい しほ)さんが学部3年生に向けて話した内容を紹介します。
ハダカデバネズミを研究したい!
高校生のとき、生物の教科書に載っていた「ハダカデバネズミ」に興味を持ちました。社会性を持ち、30年以上も長生きするネズミです。長寿の理由は、がんになりにくいから。おもしろい、研究してみたいと思いました。当時はハダカデバネズミの研究で有名な先生が北大にいたので、北大を目指しました。
思い通りにならないときに
浪人して北大に入学したものの、1年次の成績は芳しくなく、生物を勉強したいけれど、学部選択をどうするか迷っていました。そんなとき、高分子機能学に進んだ高校の同級生が「高分子機能学では幅広く勉強ができるからおすすめ」と教えてくれました。高分子機能学に進学しましたが、勉強は難しく、「自分のやりたいことは、こういうことだろうか?」と疑問を持つようになりました。母に相談すると「人生は思い通りにならないこともある。そのときに何をするか、何を学ぶかが大事。」とアドバイスをくれました。
構造生物化学研究室を選び、タンパク質の立体構造解析・相互作用解析を中心に行なっています。この研究室を選んだのは、先生や先輩に魅力を感じたことが実は一番の理由です。もともとがんに興味があったので、タンパク質の研究をしていれば、いずれがん研究に役立つとも考えました。タンパク質の働きを、立体構造を基に理解しようとしています。研究室に所属してからは研究がおもしろくなり、博士前期(修士)課程へ進学しました。初めは研究が思い通りに進まず苦労しましたが、問題を解決してからは、学会で発表賞を受賞するなど評価してもらえるようになりました。頑張ってやり込むほど研究の楽しさが分かりはじめました。
タンパク質の構造からがんを研究
今は、乳がんの悪性化に関係する酵素の研究をしています。酵素もタンパク質の一種です。乳がんの悪性化メカニズムを、酵素の立体構造と機能の関係性から説明することを目指し、乳がんの治療法開発につなげたいです。
自分にしかできないことを
修士課程の時に就職活動も経験しました。その中で「自分の人生の軸は何だろう?」と考えたことが今も役に立っています。私の夢は、「自分にしかできないことで、新たな価値を生み出すこと」だと気づくことができました。さまざまな知識を吸収でき、自由な発想を大切に、プロの研究者から指導してもらえる。そのような博士後期課程での研究生活が非常に魅力的に感じられ、進学を決めました。
過去を振り返ってみて、家族や友人など、いろいろな人に支えられて生きていると改めて感じています。特に、尊敬する尾瀬農之先生をはじめ、構造生物化学研究室の皆様に出会えたことが私の幸運です。
後輩のみなさんにもこのような素敵な出会いが待っているはず!実り多き学生生活を送ってください。