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大学院生によるレポートシリーズ「Ph. Dreams」連載の2回を担当したのは北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(以下ALP)に2020度採用された7期生の野口真司さん(北海道大学大学院総合化学院)です。ALPとは物質科学を中心に分野横断的に学び、社会人として高い能力を養い、学位取得後には学術・研究機関だけではなく民間企業など社会の広い分野で国際的に活躍する人材を育成するための教育プログラムです。2020年3月に文部科学省の補助金事業としての補助期間は終了しましたが、北大の事業として継続して活動しています。
環境に負荷をかけない理想の材料を得るために
私の研究分野は無機材料化学で、放射光を用いて無機材料の合成反応がどのように進行するか解析をしています。無機材料とは、セラミックスに代表されるような無機非金属物質を主成分とする材料で、すべての元素が無機材料の構成成分になるため、無限に近い種類の組成、および構造があります。その中でも伝導性や超伝導性、耐熱性、硬度、誘電性、透光性、圧電性などに優れた材料が近代のテクノロジーを支える主要材料として利用されています。実際に利用されている材料は、コンデンサや各種センサー、レーザー材料、発光素子、太陽電池などの電子・光学デバイスや、人口骨、人工関節などの生体材料、光触媒、吸着材料、浸水・撥水材料などの環境材料、セメントやガラスなどの建設材料、そして燃料電池用固体電解質、太陽電池、ガスタービン部材です。
数多くの利用例があることからわかるように、私たちの生活の中で無機材料は幅広く利用されています。私は、原料が材料として合成される過程を研究し、理想の材料を得るために重要な要因を探ろうとしています。さらに、材料合成を体系的に説明できれば、より効率的な材料探索や、環境に負荷をかけない合成が可能になると考えています。ですから、この分野を極め圧倒的な専門力を身につけたいです。
専門とは異なるスキルと能力の習得を目指して
同時に、産業的な視点や、自身の専門分野外の人たちと協力して物事に取り組む力をつけるためにALPを履修することにしました。少子化、過疎化、経済格差、地球温暖化、エネルギー問題など世界規模の課題に私たちは直面しています。これらの問題を解決するには、高度な専門力が求められますが、その力を解決に向けて発揮する別の力も重要です。そこで必要なるのが経済・産業的な視点を持つことや、多様な人と協力して物事に取り組み、それぞれの強みを最大に発揮する力であると考えています。そのためには、常に情報を集め、判断し、どう生かすのかを考える必要があります。私はALPを通して、それらの能力を高めようと考えています。
また、ボランティアなどの社会貢献活動や、民間でのインターンシップを実践したいと考えています。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の格差がさらに拡大していることを知りました。世界中が混乱している中、富める者はますます富み、貧し人はさらに貧しくなっている現状に心が痛みます。世界基準で見れば、大半の日本人は、日本に生まれたというだけで、教育の機会を得ることができ、安全に暮らせる環境で生活を送れます。世界をよりよくするために、貴重な教育環境によって得た学びを未来に還元する義務があると最近感じるようになりました。将来は、自身が学んだことをもとに発展途上国などで研究指導を行い、教育水準の格差を是正したいです。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉の本当の意味を知る
研究以外の時間には、バドミントンや、トレーニングによって肉体を鍛えています。私は、何かを達成するうえで最も重要なことは、心身の健康だと考えています。「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉があります。この言葉は、健全な精神は、健康的な肉体に宿る、だから体を健康にすることが健全な精神を保つうえで重要であるという意味で誤用されます。しかし、本来の意味は、健全な精神と肉体を兼ね備えることはとても難しいことで、神様に何かを願うならば、心身ともに健康であることを願う程度にしなさい、という意味です。この言葉のように、健全な精神と肉体を兼ね備えることは非常に難しく、その一方で心身が健康であることは活動のすべての礎になると考えています。だから体を鍛え、自分に打ち勝てる強さを得るために日々努力をしています。また、「無事之名馬」という言葉もあります。能力が多少劣っていても、怪我無く無事に走り続ける馬は名馬である、という考え方です。もちろん能力を伸ばそうと努力することも重要ですが、力を発揮し続けられることが何よりも大切であるということはすべてに通ずる考え方だと思います。
私のモットーを紹介します
Press on.
Nothing in the world can take place of persistence.
Talent will not; nothing in the world is more common than unsuccessful men with talent.
Genius will not; unrewarded genius is almost a proverb.
Education will not; the world is full of educated derelicts.
Persistence and determination alone are omnipotent.
Calvin Coolidge (30th U.S. president, 1872-1933)
ひたすら突き進むことだ。
この世に不屈の精神に代わるものなど何一つ無い。
素質があってもだめだ。素質があるのに成功しない人などざらにいる。
天才であってもだめだ。報われない天才という言葉があるくらいだ。
教育を受けていてもだめだ。世の中には教育のある落伍者でいっぱいだ。
不屈の精神と決断力が全てである。
カルビン・クーリッジ(第30代アメリカ合衆国大統領)