大学院生によるレポートシリーズ「Ph. Dreams」連載の8回目を担当したのは北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(以下ALP)に2020度採用された8期生の神田幸輝さん(北海道大学大学院生命科学院)です。ALPとは物質科学を中心に分野横断的に学び、社会人として高い能力を養い、学位取得後には学術・研究機関だけではなく民間企業など社会の広い分野で国際的に活躍する人材を育成するための教育プログラムです。2020年3月に文部科学省の補助金事業としての期間は終了しましたが、北大の事業として継続して活動しています。
生命科学院に在籍している神田幸輝です。私は生物の行動の起因に興味を持って研究していす。また、剣道を小4から続けており、剣道漬けの青春を送っています。学部時代には体育会剣道部に所属し、全日本剣道連盟から四段を頂戴しました。
さて、研究生活を続けていると、ふと剣道の教えとの共通点を感じる時があります。剣道には「打って反省、打たれて感謝」という言葉があります。プロトコル通りに進めたにも関わらず失敗を繰り返したり、試しに行った実験で良い結果が出たりした時にはこの言葉を思い出します。つい目の前の実験結果に一喜一憂しがちです。しかし、上手くできた時には、次回も再現できるように「上手くできた要因」を考えることが大切です。また、失敗した時には実験操作や実験条件を省みることで、次の実験に繋げることを心がけています。
修練に終わりがない剣道と、仮説を明らかにした後により深い仮説が生まれ、終わりのない研究の道は似通っていると感じています。剣道の修練を続けることができたのは、剣道という軸「人間形成の道」というものがあったからです。研究においても、いち早く自身の軸を作り上げたいと思っています。
私たちのような研究者の卵は、一生懸命に取り組む姿勢が求められますが、実はこの研究に必要不可欠な「一生懸命」という言葉にも剣道のルーツである武士の考え方が語源となっています。元々は中世の武士が命を懸けて自らの領地を守り抜く様子を表した「一所懸命」という言葉が基となっています。自らの専門とする研究をとことん突き詰め、未知の世界を解き明かそうとする研究者の姿はさながら武士のようであると感じています。
このように、剣道も研究も同じです。生涯スポーツである剣道を今後も継続するとともに、「生涯研究」を目標に日々研究スキルの向上という名の鍛錬も続けていきたいと思います。まだまだ未熟ですが、一「所」懸命に精進してまいります。