2022年春、中谷医工計測技術振興財団(以下、中谷財団)の助成事業「国際学生交流プログラム」に参加した鈴木世莉奈さん(理学部生物科学科生物学専修4年)のアトランタ研究留学体験記を紹介します。
宝さがしのすゝめ
中谷財団の留学プログラムは、学部生が夏休みや春休みを利用して世界トップレベルのジョージア工科大学の研究室に所属し、1か月半研究体験するものです。アメリカへの渡航費・宿泊費はもちろん、自由に使える20万円など、すべて財団が負担してくれます。この夢の様なプログラム募集情報は理学部5号館4階の壁にひっそりと貼られていました。みなさんは掲示板のポスターをチェックしているでしょうか?あそこは宝の山です。
大都会アトランタとハンモック
申し込み、面接を突破して、いよいよ夏にアメリカ留学!と思った矢先にコロナ禍に見舞われました。ビザ取得に難航し、15人いた同期のうち運と折れない心を持っていた4人のみが予定通り夏にアメリカへ渡りました。一方私はビザ取得が間に合わず半ば諦めかけていましたが、次の春休みに気づけばアメリカのアトランタにいました。
私の中のアメリカのイメージは、小学生の頃1年間住んでいたミシガン州の田舎のような場所でしたが、さすがはアメリカで9番目に人口の多い大都市アトランタ、見渡す限りのビルと車、鳴りやまないサイレン、高速道路は片側8車線…まさに絵にかいたような都会でした。しかし大学の中は緑豊かで、あちらこちらにハンモックがあったことに衝撃を受けました。北大も緑豊かな大学なので、このようなくつろぎスポットがもっとあったらいいなと思います。ハンモックの設置をお勧めします。
ホヤの研究とメンターとの闘い
事前に聞かされていた通り、滞在中はかなりの時間を研究に費やすことができました。私は、ホヤの神経発生を研究しました。写真のように、ホヤの幼生に光タンパク質を組み込んで光らせ、その場所や役割を特定する実験です。メンターには、実験指導だけでなく、食事や買い物などアメリカでの生活もお世話になりましたが、彼の口癖は「もっと遊びなさい」「研究なんて時間の無駄だよ」「It’s interesting(皮肉)」の3つでした。滞在中は日夜研究をやりたい私と、せっかくアメリカに来たのだから遊ぶべきだと主張するメンターとの攻防が続きました。研究室のメンバーは日々の生活を非常に大事にしており、夕方5時には帰って恋人とコンサートに行ったりします。彼らからすると、遊びにも行かず遅くまでラボに引きこもっている日本人がcrazyに見えたのでしょう。
研究だけじゃない留学生活
このプログラムでは、わずか1か月半の研究にもかかわらず期間中に2回の大きな発表をしなくてはならなかったので、成果をあげなくてはと焦った時期もありました。しかし研究だけでなく、アメリカ生活を体験する素晴らしい機会に目を向けるべきだということに気づきました。メンターの助言もあり、滞在中はアメリカのいろいろな文化を体験することに時間を使いました。財団が企画してくれたメルセデスベンツスタジアムでのサッカー観戦や、教授宅でのバーベキュー等、様々なイベントも充実していました。同期は皆仲が良く、毎週のように一緒に観光地巡りをしました。また現地で仲良くなった友だちは、色々なことを教えてくれました。観光だけでなく、授業で聞いた憧れの教授にメールを送って直接訪問したり、アメリカの大学院進学について教授や在校生に聞いたりする機会もありました。一人ではとても叶わなかったことを経験させてもらい、とても楽しく充実した滞在になりました。
研究発表も非常に良い経験でした。発表の直前までかなり緊張しており、発表自体も正直満足のいく出来ではなかったのですが、それでも大衆の前で発表を行い研究者の一人として扱ってもらえた時の喜びを知ることが出来ました。またこのような学部生の拙い発表でもたくさん褒めていただくことができ、みなさんの堂々とした発表はこの温かい風潮があるからこそなのだろうなと感じました。
参加してよかった
今は日々の実験と院試準備に忙殺され、アメリカ留学が遠い過去に感じられます。不思議なもので現地にいた頃は苦しかったことも、今では美しい思い出に変わっています。大勢の前で発表することはもちろん、現地で関わった一人一人が、私に新しい選択肢を与えてくれました。貴重な経験を与えてくれたこの中谷財団の素晴らしいプログラムに感謝しています。これから参加する方は、私とはまた違う感想を抱くはずです。みなさんの体験記を読むのが今から楽しみです。
中谷財団の留学レポートはこちら:
https://www.nakatani-foundation.jp/achievements/ries_achievements_list/
レポート:鈴木世莉奈(理学部生物学科生物学専修4年)