北海道大学理学部生物科学科(高分子機能学)では、学部生を対象にしたキャリアパス教育イベント「先輩は語る」を定期的に開催しています。卒業生が、学生時代の経験や現在の仕事について語ることで、学生に進路を考えてもらうことが目的です。2024年2月2日と20日は第一三共株式会社の佐藤 優次(さとう ゆうじ)さんが講演しました。
佐藤さんは理学部生物科学科(高分子機能学)を卒業し、2014年に生命科学院の修士課程を修了しました。製薬会社に就職してから社会人ドクターとなり、2022年に博士号を取得しています。
大学では抗菌ペプチドを研究
学生時代は、蛋白質科学研究室(相沢研究室)で抗菌ペプチドについて研究しました。抗菌ペプチドは、私たち生物を微生物の感染から守ってくれる物質です。もともと興味があった免疫系と微生物の両方を扱うことができ、楽しく研究させてもらいました。
就職活動は苦戦
修士を修了して行った就職活動は、順調に進みませんでした。特に、業界の事前調査が不十分だったことが反省点です。製薬業界の研究職を志望しましたが、博士修了者の求人が多いなど自分のバックグラウンドと募集要件が一致しないことが多くありました。
企業でも研究を続けたい
それでも幸いなことに製薬会社に就職でき、仕事にはやりがいを感じていました。しかし、次第にデスクワークが増え、研究が思うように進まないこともありました。そこで、研究を続けていきたいという思いから、働きながら出身の蛋白質科学研究室で博士号を取ることにしました。
遺伝子治療製品の研究開発
現在は第一三共株式会社で遺伝子治療製品の研究開発に携わっています。特定の遺伝子が機能しない疾患に対して、正常な遺伝子を補充し治療するのが遺伝子治療です。代表的な疾患は血友病や筋ジストロフィー等です。
正常な遺伝子を患者さんに直接投与する方法では、ウイルスベクターと呼ばれるウイルスを使って遺伝子を細胞まで運びます。現在、最も使われているウイルスベクターであるアデノ随伴ウイルス(AAV)について、私は製造方法や分析方法の研究開発を担当しています。
仕事の幸福度は高い
小さいころから病院にかかることが多く、私にとって医療は身近な存在でした。医療に関わる仕事がしたくて製薬業界に進みました。その願いを叶え、今は希望する遺伝子治療に関われているので、仕事に対する幸福度は高いです。