第1部のキートーク、第2部のディスカッションを終えて、最後はディスカッション後の熱気のままコミュニケーションタイムに突入しました。北海道千歳市で立ち上がろうとしている次世代半導体プロジェクトと、半導体人材育成の拠点として期待を集める北海道大学。両者が交差するこの場から、未知なるSociety 5.0に挑む学生たちに向けてどんなメッセージが発信されたのでしょうか。
北海道の新たな構成要素「半導体」
日本経済新聞社の太田泰彦氏の進行のもと、会場の参加者も議論に加わりました。冒頭、太田氏から「北大生に何を期待するのか」という問いかけに石森浩一郎副学長が答えます。
「今、千歳にRapidus社が来て、北海道で壮大な実験が始まるような気がしています。ここにいる学生のみなさんはその目撃者になろうとしているわけです。このときただの目撃者となるのではなく一緒に参加する人になってほしい。最先端を切り拓くフロンティア精神をもって臨んでほしいと思います」
北海道経済部の青山氏からは北大への期待として「北海道愛」という言葉が飛び出します。
「北大関係者の皆さんが北海道に抱いているさまざまな愛着の中に今後、デジタルあるいは半導体という新たな要素が加わるのだと思っていただきたいです。そして北海道内にいなくとも、北大卒の方々は最も強力な関係人口となるはずです。それは太田さんも体現しています。北海道の付加価値を高めるため、あるいは激励するために引き続き、力を貸してください。」
当事者意識を育むマインドチェンジのとき
巨額の予算が投入される次世代半導体プロジェクトは、国策という側面も持っています。中央主導で動き出したこのビッグプロジェクトに、学生から「これまでの歴史を踏まえて、北海道民が当事者意識を持って産業を育てていけるのか」という真摯な質問が寄せられました。
これに対して3人は次のように回答します。
「上から降ってきたような認識があるかもしれないが、これをどう使いこなすかの利用開拓は自分たち次第」(山本氏)
「これまで“自分たち(道民)にどんないいことがあるのか”という質問を様々な場面で聞かれてきました。もちろん行政も真剣に考えます。同時にみなさんにも考えていただきたい」(青山氏)
「改革のとっかかりは“外”からでもいいと思う。むしろこの機会を、自分事として考えるマインドチェンジのチャンスにする、それが我々に課せられた使命です。今日お越しの学生さんも含め、たくさんの方にこのプロジェクトの輪に入る未来にしたいです。フロンティアは開拓とういう意味の他に“最先端”という意味もあります。北海道が世界の最先端になることを期待します」(石森氏)
最後は進行役の太田氏が「利用開拓、チャンス、フロンティア…いっぱいキーワードが出てきました」と総括し、コミュニケーションタイムを終えました。
半導体で築く未来社会の開拓者に
会の終わりに熊本大学清水聖幸副学長がオンラインで登壇。清水氏は2023年10月から北海道大学副学長と半導体拠点形成推進本部副本部長も兼任する、国内半導体人材育成のキーパーソンの一人です。この日は熊本から参加し、現地の盛り上がりを伝えてくれました。
「なぜ九州が半導体産業で活発になったのか、その理由は “人”にあります。これは実際に企業の方もおっしゃっていますが、九州の人は非常に真面目で負けん気も強く、一つのことに一徹に頑張ってくれる。この九州人気質が半導体産業には非常に有効だったと思われます。
一方、これからRapidus社が動き出す北海道は、日本企業が自分たちで最先端の技術に取り組んでいく。そんな意欲的な環境に北海道の方が置かれているというのは大変うらやましいことだと思っております。先ほど半導体の利用開拓について話が出ていましたが、北大生に求められるのはそこだと思っています。半導体産業に入るにあたり、電子工学を専門に学んでいることはもちろん強みになりますが、化学や生物も十分強みになりえます。幅広い分野の方々に興味を持ってもらえたらと願っています」
最後に北海道大学山本文彦副学長から「北大は博士人材の育成にあたり“未来社会の開拓者”という言葉を掲げています。今日まさに半導体を使って未来社会を作り上げていく博士人材の必要性を実感できました」と挨拶があり、約2時間にわたる刺激的な会が幕を下ろしました。
Part 3以上
主催:北海道大学大学院教育推進機構・Ph.Discover
共催:北海道・北海道大学半導体拠点形成推進本部・北海道大学大学院理学研究院・北海道大学創成研究機構データ駆動型融合研究創発拠点
協力:えぞ財団