2026年10月23日、大学院共通授業科目「半導体の深層を理解する2026」は久世直洋氏(元旭化成執行役員/北大客員教授)を講師に招き、「革新技術で切り拓く半導体の未来 ― センサからソリューション製品まで ―」と題して、行われました。その様子を紹介します。
スマートフォンのカメラの手ぶれを抑えたり、地図上で自分の向きを確かめたりする場面にも、半導体の技術が働いています。元旭化成の久世直洋さんの授業では、普段は意識することのない小さな部品から、私たちの暮らしに届く製品が生まれるまでの道のりが語られました。
久世さんが長年向き合ってきたのは、化合物半導体です。材料の特性を引き出し、磁気や光を捉えるセンサーをつくり、回路やソフトウェアと組み合わせて、使う人に役立つ機能へと仕上げていきます。電子コンパスをはじめとする製品の話からは、材料を深く知ることと、製品全体を考えることの両方が欠かせないと伝わってきました。例えば、携帯電話の中で地磁気を測ろうとすると、周囲の部品が発する磁気が妨げになります。その課題に、センサーの技術と計算の工夫を組み合わせて挑んだのが、電子コンパスの開発でした。小さな部品の中には、異なる専門を持つ人々の知恵と、使える形にするまでの試行錯誤が詰まっています。

その技術の原点には、米国への留学がありました。新しいことに挑みたいと自ら手を挙げ、専門の異なる分野で苦労しながら身につけた技術が、その後の研究開発を長く支えてきたといいます。一方で、新しい材料を使った挑戦では、研究の成果がそのまま事業の継続につながるとは限らない厳しさも語られました。それでも、培った技術を次の用途へとつなごうとする姿から、研究開発の粘り強さを感じました。

久世さんが学生に伝えたのは、強みとなる技術を深め、受け継ぎながら、柔軟に新しい可能性を探ることの大切さです。製品を社会に届けるには、誰に使ってもらうのかを考え、足りない技術や人を見つけ、ともに取り組む相手とつながっていく必要があります。長年の経験に基づくお話は、これから研究を仕事にしていく学生にとっても、具体的な手がかりとなりました。質疑では、お客様の課題をどう見つけるかという問いに、自分の研究を発信し、さまざまな人と話すことが大切だと語られました。自分では思いつかなかった使い道を、誰かが教えてくれることもあります。まず誰かに自分の研究を話してみようと、背中を押される授業でした。その会話が、まだ世の中にない製品への第一歩になるのかもしれません。