2021年3月10日、北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(以下、ALP)3期生8名の修了式が、理学部大会議室にて海外への同時配信も含めて執り行われました。ALPとは物質科学を中心に分野横断的に学び、社会人として高い能力を養い、学位取得後には学術・研究機関だけではなく民間企業など社会の広い分野で国際的に活躍する人材を育成するための博士課程大学院教育プログラムです。2020年3月に文部科学省の補助金事業としての補助期間は終了しましたが、北大の事業として継続して活動しています。修了証書授与のあと、山口淳二理事(プログラム責任者・北海道大学副学長)とプログラムコーディネーターの石森浩一郎教授(北海道大学副学長)より祝辞があり、参加した修了生全員が挨拶を述べました。
山口理事の挨拶
3期生の皆さん、コロナ禍でいろいろな活動が制限されたにもかかわらず、無事、修了の日を迎えられたことを心よりお祝い申し上げます。皆さんがALPに採用されてから4年半、多くの活動に参加し、ALPで養成すべき5つの力、圧倒的専門力、俯瞰力、フロンティア開拓力、国際的実践力、内省的知力を磨いてきました。リーディングプログラム発足以降、博士課程修了者の持つべきジェネリックスキルとしてこれらの能力が注目されています。同時に、社会、特に民間企業においても、専門性だけではなく、これらの能力を備え、社会貢献できる人材が求められるようになりました。つまり皆さんは世界最先端の研究に携わっただけではなく、我が国における今後の大学院教育のモデルとなる先進的な教育を受けてきたことになります。実際、皆さんの先輩の多くは、従来の博士課程修了者の主なキャリアパス先であった大学等のアカデミアだけではなく、多様な民間企業に就職し、周囲の大きな期待に応えて、その職務に励んでいると聞いております。
北海道大学での博士号取得とリーディングプログラム修了は、皆さんが意識している以上に輝かしい2枚の金看板です。この先、コロナ禍は容易に収束するとは思えません。また、世界情勢の先行き不透明な状況のなかでは、これまでの常識が変化するかもしれません。そのような状況の中でもALPで培った多様な力を発揮し、グローバルリーダーとして、それぞれの分野で活躍されることを願っております。
石森浩一郎ALPコーディネーターの挨拶
3期生の皆さん、修了おめでとうございます。特に、最後の1年、コロナ禍で大変な不自由をされたと思います。やりたかったことが叶わず、残念な思いをされたこともあったかもしれません。しかし、この状況は大きく変わらないでしょうし、不自由もなくならないでしょう。これは世の常でもあるのです。この場を借りて皆さんへの贐(はなむけ)の言葉を送ります。はじめに、IT業界で成功を収めた人たちの中からラリー・エリソン氏の言葉です。エリソン氏は巨大IT企業の一つであるオラクルの創始者です。
エリソン氏は1980年代の不透明なIT業界の中で生き抜き、世界規模のソフトウェアの会社へと導きました。彼の言葉の中に「この世界では、何もしないことが一番大きなリスクになる」があります。Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏も「確実に成功する方法はないが、必ず失敗する方法はリスクを取らないことだ」と言っています。皆さんは、人生の様々な場面で大きな決断をしていくことになりますが、そんな時に思い出してほしいメッセージだと思います。リスクを取るからこそイノベーションや新しい価値が生まれるのです。
もう一つ、エリソン氏の言葉を紹介します。“ I have had all of the disadvantages required for success.”普通の人なら「有利な点があるから成功した」と言うでしょう。しかし、彼は、成功のためには “disadvantages” があった、と言ったのです。皆さんが進む先で、いろいろな困難があるかもしれません。最初の言葉と合わせると、「困難を理由にして何もしないのはダメだ。困難を利用して、新しいものを産み出してください」というメッセージなのです。先行き不透明な時代です。どの分野であっても真のリーダーに問われるのは、限られた条件の中で、どのように前に進むのか。皆さんも、いずれラリー・エリソン氏のように “ I have had all of the disadvantages required for success.” と言えるようになってほしいと願っています。
北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム3期生修了式(2)へつづく