2021年12月21日(水)、北海道大学博士課程DX教育プログラムに参加している大学院生8名が富良野市を訪問しました。富良野市特有の産業であるワイン事業の発展、住みよいまちづくりに向け、ゴミのリサイクル率向上を目指す同市のスマートシティ推進施策の立案が目的です。8月より日本オラクル様のクラウドを活用したワークショップを通してグループワークを続けてきました。コロナ禍により現地訪問は延期されてきましたが、移動の規制が緩和され、初のフィールドワークとなりました。(北海道大学は富良野市様と日本オラクル様と連携し、スマートシティ推進事業に教育の一環として参加しています。詳細はこちら)
富良野市到着後、市庁舎にて北猛俊 富良野市長やスマートシティ戦略室のみなさまとの意見交換の場が設けられました。その後、2つチームに分かれてフィールド調査を行いました。その様子をご紹介します。
北 猛俊 富良野市長:
みなさん、こんにちは。今回は北海道大学様、日本オラクル様と一緒に富良野市をフィールドとして「博士課程 DX教育プログラム:北海道富良野市のスマートシティ推進支援プログラム」を実施していただきありがとうございます。8月末よりコロナの影響で延期されていた富良野市でのフィールドワークが本日実現したことを大変嬉しく思います。
このプログラムにはテーマが二つあります。一つ目は富良野市が直営で活動しているワイン事業です。ご承知の通り、コロナによる観光客の減少により販売実績は厳しい状況にあります。そのような状況ではありますが、喜ばしいニュースもあります。今月(12月)15日に、アイスワインを出荷させていただきました。このアイスワインの製造にある程度のデジタル技術は利用していますが、実にアナログで生産しております。24時間、マイナス8℃以下になる冬期間に収穫することになります。これも「ふらのワイン」醸造に向けたこだわりです、デジタルではコントロールできない自然が相手の仕事です。DXを活用しながらも自然との融合、あるいは人間との融合も視野に考えていただきたいと期待しております。ワイン事業は来年2022年に50周年を迎えます。2022年は是非とも次の50年に向けた希望の年としたいと願っております。二つ目の課題は、長年にわたって富良野市のみなさまに支えられながら続けているゴミの分別、リサイクルです。当初は「埋めない」からスタートし、次に「燃やさない」、そして現在は「分別し、資源とする」というフェーズに入っております。今は14種の分別を行っております。私たちはゴミを「資源」と捉えております。このゴミを活用したゼロカーボンシティ、カーボンニュートラルの実現は市民にとって新しい目標となっております。行政側には期待感はありますが、どんな手法で実現に向けて近づけるのか、動くことができるか頭を悩ませておりました。それを北海道大学のみなさんと一緒に考えたいというのが今回の目的です。みなさんによって導き出された提案を生かして富良野市の未来に繋げていきたいと考えております。どうかよろしくお願い致します。
高橋 正行 北海道大学理学研究院特任教授:
年末のお忙しい中、富良野市を視察する機会を設けていただき感謝しております。このプログラムに参加している学生は、今年度から始まった「大学院博士課程教育:スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム」に採用された第1期生です。彼ら、彼女らはそれぞれが異なる分野の研究をしておりますが、データ科学的な手法を学びたい、また、将来社会に出てから必要になるコミュニケーション力などを身につけるためにこのプログラムに参加しました。8月にオンラインでのキックオフでプログラムがスタートし、北大で2回、ワークショップを行いました。日本オラクル様のご指導の下、富良野市様からいただいた貴重なデータを利用して「ワインチーム」と「リサイクルチーム」に分かれて課題解決法を探っている最中です。その過程で学生から実際に現地を視察したいという希望が出てきました。今回は学生たちの要望に応えていただき、現地視察が実現しました。今回の富良野市訪問によって新しい気づき、現場でしか感じとることのできない体験を得られることを期待しております。
七尾 健太郎 日本オラクル株式会社クラウドエンジニアリング統括DX推進室長:
リフレクション(振り返り)を含めて今日の目的を確認しましょう。テーマは「DX」です。「DX」は、デジタル化でもデジタライゼーションでもなく「デジタル・トランスフォーメーション」です。さらに補足します。単にデジタル技術を使うのではなく、生活や働き方など人々の日々の営みにデジタル技術またはAIが滑らかに浸透し、これまでの暮らし方がよりよく変わることが大切です。分析して課題を指摘するだけではなく、何かを変える企画を提案するのがこのワークショップの目標です。企画のタイトルやコンセプトは重要ですが、最も大切なのはコンセプトの背景を考えることかもしれません。プルーフ(証明)の方法はAIやデータ解析によって導き出せばいいのですがそれでは不完全です。現地を訪れて新鮮な目で、地元の方が気づきにくいようなファクトが見つかれば、コンセプトは自ずとクリアになっていくと思います。ぜひ、みなさんの目で実物を見て、現場の声に耳を傾けてみて下さい。大きな変化を求める必要はありません。小さな変化が大きな変革に繋がることもあります。楽しみながら小さなDXを目指して頑張って下さい。
フィールドワークの様子を紹介
フィールドワークを終えて、再び市庁舎に集まり、振り返りの報告会を実施しました。2つのチームの代表者がそれぞれ感想を述べました。
ワインチーム 川向 ほの香さん:
ワイン工場を見学させていただきました。データを見て、どういう層に買われているかとか、何処に出荷されているかとか数字だけで見てきましたが、実際に工場を見学し、富良野ワインは利益を追求するだけでなく、地元に根付いたワインとしてブランド価値を高めようとしていることがわかりました。そこが売り上げ向上を目指す際の難しさでもあり魅力でもあると思います。ワインを試飲させていただきました。とても美味しかったです。最近はコロナの影響で観光客も減り、これまで売上に貢献していたワイン工場の売店も厳しい状況が続いていることがわかりました。これらのお話をもとに、課題解決の提案をしたいと思います。
リサイクルチーム 久語 佑希さん:
事前に把握していたデータから、リサイクル回収率の低いゴミステーションを見てきました。また、リサイクル工場では実際に燃料を製造する過程をみせてもらい、不純なゴミが混ざっていると燃料の品質が落ちたり、工場の機械が壊れたりすることがあることを知りました。効率よくリサイクルを行うためには、分別をしっかりすることが重要であると強く感じました。ゴミを捨てる際の分別の工夫などについて、幅広い方々にわかりやすく伝わる施策を考えたいと思います。
学生たちは、様々な現場で積極的に質問をしながら生の声を吸収しようとしていました。市役所、ワイン工場やリサイクル工場で働いているみなさんに質問し、分析してみたいデータの提供を依頼するなど、活発な交流が行われました。2022年1月に札幌キャンパスでデータ分析をもとにした課題解決のための提案準備などが行われる予定です。2月の最終プレゼンに向けて学生のモチベーションアップに繋がる貴重な機会となりました。
学生チームの紹介
ワインチーム:川向 ほの香(総合化学院)、坂口 周弥(総合化学院)、椿 啓司(情報科学院)、棚橋 慧太(工学院)
リサイクルチーム:川口 貴大(工学院)、久語 佑希(総合化学院)、藤江 克徳(理学院)、和田 諒(総合化学院)