「未来を変えるのは、あなたの好奇心」。この力強いメッセージを掲げ、北海道大学が展開する半導体カンファレンス「半導体に夢を持てるのか、輪になって躍ろう北海道!」第4回が開催されました。それぞれの現場の経験と、幅広い半導体業界で挑戦し続けるリアルな姿を学生たちに語りました。その様子を3つのPartに分けてレポートします。
広がる半導体の世界—現場のリアルに迫る
開会にあたり、石森浩一郎教授(北海道大学副学長/大学院理学研究院)より挨拶がありました。北海道大学の半導体カンファレンスは、2023年に発表されたRapidus社が北海道に拠点を築き、工場を建設するというニュースをきっかけに始まりました(https://phdiscover.jp/phd/article/2639)。この企画を通して、半導体人材は、半導体工学を専門とする人だけでなく、より幅広い人材を含むという認識が深まりました。第2回(https://phdiscover.jp/phd/article/3196)では、半導体産業を「支える人」(化学・機械・素材メーカー)に焦点を当て、その関連する分野の広さを実感。第3回(https://phdiscover.jp/phd/article/3316)では、半導体を「つくる人」として現場で活躍している北大卒業生が登壇しました。第4回となる今回は、半導体の心臓部である論理回路設計や記憶素子に携わる現場の方々に焦点を当て、必要とされている具体的な人材像や日本の立場について聞いてみようという目的で企画されました。

モデレーターは、工学研究院教授で元日本経済新聞社論説委員の太田泰彦教授が務めました。著書『2030 半導体の地政学』はベストセラーとなっています。太田教授は、半導体産業から個性的で熱い仕事愛を持ったゲストに来てもらったので、彼らの熱気と生きざまを感じてほしいと述べ、学生と登壇者の距離を縮めました。

2兆倍の進化を支えるスーパーコンピュータ開発の現場
最初の登壇者は、富士通株式会社 コンピューティング研究所 シニアリサーチディレクターの吉川隆英氏。スーパーコンピュータ「富岳」のCPU開発、品質保証、性能保証などに携わった経験を紹介しました。
富士通は社会のありとあらゆるシステムをSIer(システムインテグレーター)として作っており、これらのシステムのソフトウェアは全て半導体の上で動いていると強調しました。
さらに、富士通が1954年に開発したリレー計算機「FACOM 100」と比較すると、スーパーコンピュータ「富岳」の性能は、実に2兆倍にも達すると説明。「もし同じ速度で自動車を進化させたら、時速は光速の20万倍になる」と解説し、半導体技術が遂げてきた「桁違いの進化」と、そのフロンティアに挑戦する醍醐味を力強く伝えました。

半導体をつくる“影の主役”——EDA企業の仕事
続いて、日本シノプシス合同会社 社長室の永井禎二氏が登壇し、半導体産業におけるEDA(Electronic Design Automation: 半導体設計ソフトウェア)業界という特異な産業構造の現状を解説しました。EDAの会社は、世界で3社しかなく、シェアの96%を米国企業が占めています。
その中でシノプシス社は、EDA、シリコンIP(半導体チップの再利用できる設計ブロック)、シミュレーション&アナリシス(2025年7月にAnsysを買収)を3本柱とし、売上約1兆4,000億円、社員数約2万8,000人の規模を誇る大規模な外資系企業です。
永井氏は「半導体に夢を持つのではなく、夢を半導体に“乗せる”のです」と語り、半導体を作るためのソフトウエアを提供している会社のビジョンを説明。半導体業界には「半導体そのものを作る仕事」だけでなく、「半導体を作るためのソフトを設計する仕事」や「作ったものを営業する仕事」など、多様な関わり方があると述べ、学生たちに自分の興味に合った入口を見つけてほしいとメッセージを送りました。

Part1以上
主催:北海道大学大学院教育推進機構/Ph.Discover
共催:北大理学研究院/北大半導体フロンティア教育研究機構/北大総合イノベーション創発機構データ駆動型融合研究創発拠点
※肩書、所属は、カンファレンス開催時のものです。