2022年9月26日(月)、北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(以下ALP)の第9期生採用式が執り行われました。ALPとは物質科学を中心に分野横断的に学び、社会人として高い能力を養い、学位取得後には学術・研究機関だけではなく民間企業など社会の広い分野で国際的に活躍する人材を育成するための教育プログラムです。2020年3月に文部科学省の補助金事業としての期間は終了しましたが、北大の事業として継続して活動しています。会場となったのは90年以上の歴史がある理学部本館大会議室です。第9期生として採用された3名の大学院生に山口淳二 理事副学長(プログラム責任者)から「プログラム生認定書」が手渡され祝辞が述べられました。
山口淳二 プログラム責任者(理事・副学長)の祝辞
9期生の皆さん、採用おめでとうございます。ALPは、2013年にそれまでの大学院博士課程の教育を大きく変革し、博士課程修了者がアカデミック分野だけではなく、民間企業をはじめとする産業界など、社会で広く活躍できることを目的としてスタートしました。ご承知のとおり、ALPは俯瞰力、フロンティア開拓力、国際的実践力、内省的知力といった、専門力+αの力を身につけるように設計された、当時としては極めて野心的なプログラムでした。その実績が評価され、56名の修了生が社会のさまざまな分野で活躍しています。
さらにALPの実績が元となって、本学では専門力プラスαの力をつける大学院横断的な教育プログラムが次々と生まれ、さらに皆さんのように意欲があり、Society 5.0の新たな時代を切り開くことのできる博士人材育成のための研究支援や経済的支援を主眼としたフェローシップ事業も充実してきました。
このような北海道大学における大学院教育改革の先頭を切ったALPで、皆さんはこれから4年6か月を過ごすことになります。コロナ禍は収束傾向にあるものの、社会は不可逆的な変容をし、世界の情勢も予測できないほど大きく動いています。これから先、何を身につけるべきか、社会における博士人材の位置づけや皆さんの将来展望を考えればそれは明らかです。是非、明確な目的意識を持ち続けてプログラムに参加し、社会の要請に応え、自らの将来展望を実現できる博士人材として成長することを願っています。
続いて、石森浩一郎 理学研究院教授/北海道大学副学長(ALPコーディネーター)が挨拶を述べました。
何事にも「熱意」を大切に
9期生の皆さん、おめでとうございます。ALPを代表して、皆さんを心より歓迎いたします。コロナ禍は収束気味とは言え、まだ不自由なこともあるかと思います。ただ、ALPのカリキュラムは、みなさんの学習を止めないよう、柔軟かつ迅速に対応してきましたので、心配することはありません。特に海外渡航についても解禁されてきましたので、一部制限されていた活動も再開すると思います。
このプログラムは皆さんが主役です。みなさんの力を充分に発揮してほしいので「こんな事をしてみたい」という希望をどんどん伝えてください。
さて、先週、ベンジャミン・リスト先生の講演会がありましたね。彼は、本学ICReDDの特任教授で、昨年度ノーベル化学賞を受賞されました。彼が講演会で残した印象深い言葉を紹介します。それは“Follow your enthusiasm.”つまり「熱意に従って研究を進めて下さい。」でした。ALPには多様なイベントが用意されているので、興味と熱意を持って進めてください。さらにリスト先生は「ノーベル賞をとったもともとの反応自体は“serendipity(偶然の産物)”でたまたま見つけたもの。ただ、それを上手く発展させたのは、自分の熱意と強い興味であり、ここまで前進できた。」とも話されていました。熱意を持って取り組まなければ、みなさんの能力は発揮できないでしょう。4年半後にALPでの学びを実感できるような、そういう期間を過ごしてほしいと思います。ぜひ、頑張って下さい。
その後、長谷川晃北海道大学名誉教授のウェルカムセミナーが続きます。長谷川名誉教授は出張先のイギリスよりZoomで「科学の秩序学」と題してレクチャーしました。
学問の自由が社会的に保障される環境で、研究者は主体的に、そして内省的知力を携えながら活動することが重要であり、そうして知識は成長し智恵となって深化し、これが学問の秩序の一つのあり方です、と「内省的知力」について解説しました。9期生のみなさんの熱心な眼差しが、モニターを通して長谷川先生に届いたようです。
北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(ALP)の活動はPh.Discoverで紹介されています。受講生のメッセージなど、随時発信しています。ぜひご覧下さい。