1.会社員として働く上でALP(北海道大学博士課程物質科学リーディングプログラム)がどのように役立っているか
昭和電工には入社1年次に、会社の利益に大きく貢献する技術課題を設定し、自身のアイディアや考えを示しながら仕事の進め方を習得する研修テーマ制度があります。研修最後には会社の技術最高責任者(CTO)に報告し、研修成果についてフィードバックを受けます。単に研究開発やその貢献度をイメージするだけではなく、実際に事業への影響について感じられることを特長の一つと考えています。この研修テーマでは、黒鉛電極の要求特性に関する調査と定量化に取り組みました。黒鉛電極は100年近い歴史があるものの、特性評価において経験に頼るところが大きいです。そこで、まずは文献や書籍を読み、材料力学や破壊力学等の専門知識を高めた上で、上司と相談したうえで測定に詳しいOBの協力を得て、パラメータの検討、評価方法、測定条件、試験片寸法、解析方法について議論しながら進めました。試験片寸法を決定する上では、最初に原理原則を理解して専門性を高めることが不可欠でした。また、在学中に光音響スペクトルの解析で実施していたように、実際の現象を反映するような解析方法に改良しました。その結果、研修テーマで検討した新規指標は現在電極評価の重要なパラメータの一つとして使われ始めています。異分野横断的・数理的に専門的な課題を解決し、主体的に研究を進めるQE等の経験が役立ったと考えています。
所属する技術部では、セントラルラボのスーパーバイザーとして働いています。ラボには新しい原料の評価や、新しい評価方法の検討等、様々な役割があり、課題解決に取り組む機会が多いです。そのため、毎朝ミーティングし、オペレーターたちと話し合い、色々な意見を出し合うようにしています。グループディスカッションで課題解決するキャリアマネジメント特別セミナーの経験が役立っています。
カーボン事業部には海外製造拠点が多く、海外拠点から来場した人へのラボ案内等、英語を使う機会が多いです。ALPでの語学研修、海外インターンシップ、サマーキャンプ等の活動を通して卒業時にはTOEICで800点取得するまで英語力が向上し、ALPのおかげで英語を使うことに壁がなくなっていたことも大きな力となりました。
2.今後生かしたいALPでの経験
アウトリーチ演習ではパイロット生とともに、自分の専門ではないゲルの内容の発表を行い、その際身近な物に例えて説明するなど、事象をイメージできるよう伝えることが大事だと気づきました。セントラルラボには原料特性や電極特性を測定するオペレーターがいますが、元々黒鉛電極とは異なる材料を評価していた人もおり、測定している特性評価がどのように役立つかわかりにくいという声が上がっています。そのため、アウトリーチ演習で経験したような、内容をイメージでき、かつ誰でもわかりやすい資料を作成して教育できる体制の構築を考えています。
私が所属している技術部では、黒鉛電極製造の各工程の収率改善に加え、品質向上やコストダウンなど品質設計も行っています。在学中に数学の考え方を使って電子トラップ密度のエネルギー分布がどの程度類似しているかを評価したように、ALPで学んだ俯瞰力を生かし、製造現場からノウハウを学んでいきたいと考えています。
3.会社員としての立場から見たALP
これまで述べたように、ALPの5つの力(圧倒的専門力、俯瞰力、フロンティア開拓力、国際的実践力、内省的知力)は入社後すぐに生かせるものであり、ALPで色々な講義やイベントを体験できたことは非常に有意義でした。QEやALP生との交流等を通して、達成指向性や対人理解力などを磨くこともできました。これらは、会社でも評価される指標であるため、入社後にALPの価値を改めて実感しました。
4.後輩たちへのアドバイス
入社後は、現状に満足せず挑戦的な目標を設定して粘り強く取り組むことや、相手の考えや心情を理解しながらわかりやすく伝えて納得してもらうことが求められます。ALPで学んできた経験を生かし、主体的に発言・行動していただければと思います。
昭和電工株式会社/カーボン事業部/新田明央ALPパイロット生(2018年3月修了)