大学院生によるレポートシリーズ「Ph. Dreams」連載の3回を担当したのは北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(以下ALP)に2020度採用された7期生の大野優さん(北海道大学大学院理学院)です。ALPとは物質科学を中心に分野横断的に学び、社会人として高い能力を養い、学位取得後には学術・研究機関だけではなく民間企業など社会の広い分野で国際的に活躍する人材を育成するための教育プログラムです。2020年3月に文部科学省の補助金事業としての補助期間は終了しましたが、北大の事業として継続して活動しています。
理学院数学専攻修士1年の大野です。私は情報幾何学の研究をしています。情報幾何学というのはその名の通り「情報」と「幾何学」を組み合わせた分野です。具体的には(少し専門用語を使います)、「情報」で用いられる確率分布(例:正規分布、二項分布など)からなる集合を幾何学的な対象(多様体)ととらえます。つまり統計分野に幾何学的なアプローチをすることで、統一的な見方を得ようとするのです。1980年代に生まれた比較的新しい分野であり、機械学習への応用も期待される魅力的な研究です。
産業界で活躍できる総合的な力を身につけたい
大学で数学を学んでいく中で、先人たちが作り上げた広大かつ緻密な理論体系に胸を打たれることが多くありました。私もこの素晴らしい数学の世界に少しでも貢献したいと思い、博士課程へ進学することにしました。同時に、専門分野を深めるだけでなく、自分の得た知識や考えたことを社会に発信していくことが必要だと感じました。AI時代において数学的な知見は欠かせないものであり、いま研究している分野も社会に貢献できるはずです。それを実行に移すためにALPを履修しました。自らの専門的能力を生かし、さらに産業界で活躍できる総合的な力を身につけたいと考えています。実際にALPを修了した先輩たちは企業で遺憾なく実力を発揮しています。私も諸先輩方に続いていきたいです。
サークル活動からの学び
学部生の時は奇術研究会に所属し、会長を務めていました。奇術というのはマジックやジャグリングのことです。サークルには様々な考え方を持った人が集まります。全員に同じ目標に向かって取り組んでもらうことは大変で、リーダーの振る舞いの難しさを実感しました。奇術研究会の大きな目標は年二回の公演を成功させることです。そのためには演者全員が練習に励み、裏方もリハーサルを重ねることが必要不可欠です。しかし、やり遂げることは簡単ではありません。なかなか練習に足を運んでくれない人もいます。そこで、私はサークル全体の雰囲気を良くしようと徹底してコミュニケーションに気を配りました。その甲斐あってか、姿を見せる頻度を増やしてくれる仲間も増え、進捗状況を確認できたり、アドバイスをしたりしやすくなりました。地味な声がけを重ねることで、仲間たちは次第に練習に通ってくれるようになりました。非常につらい時期もありましたが、それを乗り越えて公演が成功に終わったときは何ものにも代えがたい達成感がありました。この経験も社会人として生かしたいです。
(もしよろしければYouTubeチャンネルをご覧ください。第一回北海道東北学生ジャグリング大会で優勝した時の演技です。)