大学院生によるレポートシリーズ「Ph. Dreams」連載の5回目を担当したのは北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(以下ALP)に2021年度に採用された8期生の田所朋樹さん(北海道大学大学院総合化学院)です。ALPとは物質科学を中心に分野横断的に学び、社会人として高い能力を養い、学位取得後には学術・研究機関だけではなく民間企業など社会の広い分野で国際的に活躍する人材を育成するための教育プログラムです。2020年3月に文部科学省の補助金事業としての期間は終了しましたが、北大の事業として継続して活動しています。
新しい夢の機能性分子の実現に向けて
私は有機化学を専攻しており、光や熱、電気などの刺激によって性質が変化する機能性分子の研究を行っています。この性質は分子の立体構造が決め手となっていることが多いため、分子の構造をどのように制御するのかがカギになります。すなわち、望みの機能を持つ分子の開発には、詳細な構造変化メカニズムの解明が不可欠です。そこで、私は実験による分子の合成、各種測定による構造変化追跡だけではなく、量子化学計算を用いたシミュレーションを行い、実験と理論の両面からアプローチすることで、詳細なメカニズムを解明しようとしています。現在までに、解明したメカニズムを基に、新しい夢の機能性分子の実現に向けて研究を展開しています。SF小説に登場するような物質がノンフィクションとなる日も近いかもしれません。
革新的な研究展開のための対話力
人類は、科学技術の発展に伴い、容易には解決できない複雑な社会問題に直面しています。これらを打開する革新的な研究展開には、1つの研究分野だけにとどまらない領域横断型の協力体制が求められます。ですから、国際的研究プロジェクトに参加し、社会問題の解決に尽力したいと考えています。円滑な協力体制を構築する際には、学問や文化に対する幅広い知識に裏打ちされた高い対話力が求められます。ALPでの異分野ラボビジットや海外インターンシップ、教育研究ユニット活動を通じて、自身の対話力に磨きをかけていきたいです。
「ひと手間」が生む感動
趣味は料理でジャンル問わず、和食からフレンチ、スイーツまで作ります。料理の味付けや調理工程には、歴史や風土などの文化が反映されています。特にヨーロッパ圏の料理には、フランス革命や大航海時代、畜産業などの影響が非常に色濃く出ています。料理を通じて、その国の歴史や文化も紐解いていく行程は非常に面白いです。また、各調理工程は味や見た目に大きく影響します。簡単な鶏肉のトマト煮込みでも、トマトの皮の湯剥きをするのか、鶏肉に焼き色はつけるのかで全くの別のものになります。これらの「ひと手間」を重ねた料理は見た目が美しく、味も非常に美味しいものに仕上がります。
ジャンル問わず様々な料理を作ります。上の写真の料理は全て自分で作ったものです。友人や家族に振る舞った際の「美味しい」の一言が非常に嬉しいです。人の心を動かすものには「微に入り細を穿つ」作業が欠かせません。研究活動をはじめ、あらゆる場面で私はこの「ひと手間」を大事にしてゆきたいです。