2020年9月22日、北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(以下、ALP)編入3期生の修了式が、執り行われました。ALPとは物質科学を中心に分野横断的に学び、社会人として高い能力を養い、学位取得後には学術・研究機関だけではなく民間企業など社会の広い分野で国際的に活躍する人材を育成するための教育プログラムです。2020年3月に文部科学省の補助金事業としての補助期間は終了しましたが、北大の事業として継続して活動することが決まっています。
修了生は、環境科学院の鄭(テイ)キンさんです。テイさんへの修了証書授与のあと、長谷川晃理事(プログラム責任者・北海道大学副学長)とプログラムコーディネーターの石森浩一郎教授より祝辞がありました。
*肩書きは修了式当時のものです。
長谷川理事の挨拶
テイ・キンさん、修了おめでとうございます。このALPは、北大を代表する大学院教育プログラムです。7年間の活動を通して実績を上げ、国内で屈指のプログラムに成長したと自負しております。2013年のスタート以来、多くの学位を取得した学生が研究機関や民間企業に巣立って行きました。テイさんも、今日からその仲間の一人になります。ALPで学んだ、圧倒的な専門力、ものごとを俯瞰する力、そしてコミュニケーション力を生かして、存分に活躍してください。
この半年、新型コロナウイルス感染症の拡大によって世界は大きく変わりました。例えば、オンラインでのコミュニケーションが急な勢いで広がりました。世界的な潮流として、そのような動きは数年前からありましたが、本学はじめ、あらゆる教育現場に普及することは予想できなかったことです。想定外の事件によって、社会や人々の価値観は大きく変化します。1990年代以来、グローバリゼーション、ICT革命、さらに3.11や北海道胆振東部地震のような自然災害、あるいは温暖化による気候変動、さらに新型コロナウィルス感染症の拡大が重なり、社会の変化の質もスピードも予測が難しくなっています。
同時に科学の進展、あるいは技術革新によって未来は開拓されていくはずです。すると、新たな課題が生まれ、それが我々に課され、社会に大きなインパクトを与える……そういった大きな知の循環が起きます。そのような変化の積み重ねがこれからも進んでいくのだと思います。そのような環境の中で生き抜く上で、ALPで養った力をベースに、地球規模の課題に立ち向かい、グローバルリーダーとして活躍することを期待しております。
石森浩一郎ALPコーディネーターの挨拶
テイさん、修了おめでとうございます。新型コロナウィルス感染症の拡大が収まらない中ですが、直接会って、修了式を迎えることができ、大変嬉しく思います。長谷川先生の言葉と重なりますが、いま世の中は大きく変化しています。そのような中で思い出す言葉があります。それは、ダーウィンが言ったと伝えられている「最後に生き残るものは最も力の強いものではない。最も知力のあるものでもない。変化に最も対応できるものである。」です。
ALPでは、高い専門力を身につけるだけではなく、俯瞰力をもって、その力の生かし方を学んだはずです。フロンティア開拓力を持って企業の方と付き合い、内省的知力を持って他者への思いやりを身につけました。そのような学びがあったからこそ、多様な変化に対応できるのです。先の見通しがつかない中、新しい世界に出て行く不安はあるかと思いますが、ALPでの学びを糧に、新しい未来を切り拓き、世界に貢献するグローバルリーダーとして活躍してください
長谷川理事、石森コーディネーターからの激励にテイさんが応えました
私がALPに在籍した3年間は、2018年9月の北海道胆振地震に始まり、本日に至るまで激動の3年間でした。日本に限らず世界中の人々が、毎日、新たな課題に直面している中で、多くのことを学びました。石森先生の言葉にもあったように、変化に対応できる社会人としてこれからも研鑽を重ねたいと思います。
ALPでの思い出を少し紹介します。新しい研究分野でレビューをまとめる作業は大変でしたが、アドバイザーの八木先生のご指導のお陰で、試験に合格することができ、自信につながりました。異分野交流の重要性を実感し、日本国内・海外の異分野交流に関するイベントに参加し、化学だけではなく、数学や生命科学の最新の知見に触れ、俯瞰力と国際的実践力を鍛えることができました。さらに、企業コンソーシアムの授業を通してフロンティア開拓力を養い、研究倫理セミナーに参加し、内省的知力を高める努力をしました。このようなALPでの経験を通して、グローバルリーダーとして世界の課題に柔軟に対処する能力を高め、未来を切り拓けるよう努めてまいります。いままでご指導、ご支援していただいた先生方、職員の皆さま、そして仲間たちに心より感謝いたします。